元カノと、帰りの車中で

::左側 隣の席


//車の走る音 ここから


「ふぅ……お金に余裕がないって言いながら予算オーバーする程買い物しちゃった……後悔はしてないけど、夏休み中のバイト増やさないと……教習所もあるからスケジュールの調整難しいなぁ」


「買ったモノ? 後輩くんも一緒に居たんだからわかってると思うけど。チーズケーキとかジャムでしょ? 友達用にお菓子も色々と。漬物なんかもあるよ?」


「漬物?」


「もちろん、茄・子♪」

□ギャグっぽい感じで


「うん、なんとも言えない反応をありがとう。1回はやっておいた方が良いかなって」


「大丈夫だよ。このギャグの為だけに買ったとかじゃないから。ウチの家族みんな漬物好きだからちゃんとしたお土産」


「たぶん今日の夕御飯に並ぶだろうね、この茄子の漬物。そして話題は確実に私の旅行なんだろうな……それだけは嫌だけど、逃げ場もないんだよねぇ……憂鬱だわぁ」


「あとは、昨日のビールも自分用に2パック♪ きっと夕御飯のあとにヤケ飲みしてるだろうね……あっという間に無くなりそう」


「後輩くんも結構色々と買ってたみたいだけど、ご両親に? それにしては多いよね?」


「あ、なるほど。会社の同僚とか上司にか……そういうの聞くと社会人なんだなぁって感じするなぁ」


「というか、明日から仕事だよね? こんな暗くなるまで付き合わせちゃってごめんね。私としてはチェックしてたお店に全部行けたから最高だし感謝しかないんだけど……」


「2日間、運転も任せっきりだし……今日なんて荷物持ちまでしてもらっちゃったもんね……大丈夫? 疲れ溜まってない?」


「そう? 本当に?」


「本人が言うなら信じるけど……後輩くん、イイトコロ見せようとする癖あるからなぁ」


「いやね……元カノにそんな姿を見せる必要ないって言われたらそれまでだけど……」


「……ねえ、今フリーって言ってたよね? 候補も居ないのかな? それこそ会社の同僚とか……先輩とか」


「うん? 深い意味はないよ? ただ高校で私にちょっかいかけて来たみたいに、もしかして会社で気になるお姉さんとか居たりするのかなって」


「へぇ……居ないんだ……そうなんだ」

□ちょっと嬉しそうに


「いやいや、元カレが独り身なことを喜ぶほど性格悪くないからね、私。後輩くんはよく知ってるでしょ?」


「昨日今日でイメージ変わったって……お互い様だよね」


「そうだ……後輩くんってスキーとかスノボーってやるの? アウトドア派になったみたいだから手を出してるのかなって……ふと思っちゃって」


「あっ、やってるんだ。年が明けたら大学の友達グループで行こうって話になってるんだけど……私スキーとかの経験ないんだよね」


「小中学校でスキー教室あったけど……仮病でサボってたから……高校時代の私を思い出して察してください……」


「だから……その……ね?」


「可能なら、貴方に教えてもらえたらなって思って」


「私の運動音痴具合も知られてる訳だし……」


「えぇ……昨日は認めてなかったのにって……この流れで茶化すんだ……むー……」


「くすっ」

□つい漏れちゃった感じで


「ごめん、面白くてつい笑っちゃった」

□笑いを含んだ感じで


「ううん、今ので怒るくらいなら今回の旅行中、とっくに喧嘩してるから」


「まぁ……本気でイラッときたことも何回かあったけど……」


「……隠さないよ? 今更隠すような関係でもないでしょ?」


「……隠してすれ違って、そのまま距離が出来ちゃったのが去年でしょ? もうそういうのは勘弁願いたいかなって」


「それで話を戻すけどさ……」


「――っ」

□意を決した感じで


「……もしも、だよ? 次は冬辺りに旅行どう? とか私が言ったら……どういう反応になるのかな?」

□不安げに


「……拒否る?」

□更に不安げに


「交換条件? へ、へぇ……何を求めるのかな?」

□拒否られずに安堵しつつ興味津々


「休日にストレス発散のドライブに付き合えば良いんだ……ふーん」

□喜びを隠しきれない


「しょうがないなぁ。授業もバイトも無い日だったら良いよ?」

□ニヤニヤしながら


「ニヤけてないから変なこと言わないでくれるかな? ちょ、ちょっとっ、危ないから私の方見ないでよ」


「……貴方だってニヤけてるじゃん」


「ふふっ、そうだ良いこと思いついた」

□小声で


//ペチペチと太ももを叩く音


「あれ? どうしたのかな? まるで元カノの太ももに手を挟まれたときの感触を思い出したみたいな表情してるけど」


「うぐっ……元カレのベッドに潜り込んで匂いを嗅いでる元カノとかドン引きなんだけど、どこの誰の話をしてるのかな?」


「ちなみにその元カレって、元カノに腕に抱きつかれた時に肘とかで胸をグイグイ押して感触を楽しんでそうだけど?」


「そうだね……元カレを旅行に誘って、お風呂まで一緒に入ってそうな元カノだね……元カノの方がヤバいかも……」


「……やめよっか、この話」


「うん、ありがと……」


「それで――ストレス発散のドライブに付き合えば良いんだっけ?」


「問題ないよ。予定もどっちかが合わせるんじゃなくて、2人で調整すれば拗れないと思うから」


「お酒? 貴方と2人でお酒かぁ……気分次第ではアリかもね? 旅行の時はもちろん……ドライブの時も、ね?」


end

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元カノに誘われた那須旅行 綾乃姫音真 @ayanohime

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