せっかくTSしたのに王子様役を押し付けられた僕は、女としての幸せをつかめますか?
金賀早紀
第一章 TSの王子様
第一節 『朝おん』で『TS』
第一話
僕が通っている高校には、都市伝説というか、奇妙な噂があった。
――ある男子生徒が突然女に性転換してしまい、そのまま女子として卒業していった――
「……つまりそいつは、何の前触れもなく、朝起きたら女になってたわけ?」
マンガみたいな話だと僕は思った。噂を教えてくれたクラスメイトが意味ありげにうなずく。
「そういうことらしい。だから、そういうのを『朝おん』と言って、それで女になった人を『
「うちは共学だから、女子の制服を着せられたのかな?」
「だろうな。女の体じゃ詰め襟なんて着られないし」
「実は女になったんじゃなくて、男の
「それじゃ性転換じゃないだろ。まあ、この噂だって十何年以上も前の話みたいだし、事実かどうか確かめようもないけど」
「そんな昔じゃ、誰も覚えてないよな」
話半分に聞いていたから、それは全くの他人事であるとしか、当時の僕はとらえられなかった。
それから一年後、ある晴れ渡った日の夕方近く。
ここは大学病院にある産婦人科の診察室、女性の医師は僕と付添の母に対し、落ち着いた口調で説明を始める。
「
「……もしかしてこれは、『朝おん』なんですか?」
「世間一般的にはそう呼ばれていますが、正式な名称は『
「やっぱりそうなんだ……」
自分の声から力が抜けていくのを自覚せざるをえない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます