H!な おじさん
りるはひら
第1話 ヒーロー誕生?
(お前にヒーローの力を与えよう!)
突然謎の声が頭に響いた。
(その力を使いお前が正しいと思う事をするがいい!)
なんなんだ?この声は?ヒーローの力?
何を言ってるんだ?
か、体が何だか熱い・・・
一人暮らしをしているマンションで寝ていた俺に謎の声はそう告げた。
「ん・・・ 夢か・・・?」
大量に汗を掻き、寝苦しさで目を覚ました。
「何時だよ・・・」
枕元の携帯を確かめ時間を見ると午前3時だった。
アラームを3時にセットしておいたのでそれで目を覚ましたのか。
3時にアラームを設定しているのは起きる為じゃなく睡眠のリズムを作る為に起床2時間前に一度起きるようにしていた為だ。
疲れてる時は3時のアラームを寝ぼけて消して起きた記憶もない日なんかもある。
起床は5時、さらに寝坊防止で5時7分にもう一度アラームを鳴らす。
この7分間が曲者で5時のアラームと勘違いして寝過ごす事もしばしば・・・
今はまだ3時・・・まだ後2時間は寝れる。
そう思った時、夢の中でした声を思い出した。
お前にヒーローの力を与えよう!
夢にしてもこんな夢・・・何の願望の現れだろう・・・
夢といっても声だけしか思い出せない。
「なんだかすごく汗掻いてるな・・・」
風邪を引かないように着替える。
着替えながら夢の事を思い出していた。
ヒーローの力か~
まあ、もう37のおじさんが今更そんな能力を貰っても持て余すだろうけど・・・
だけど・・・
毎日変わらない生活の中でこんな能力あったら自分ならどうするか?
その力を使って理不尽な世界を変えるのか?
ただ自分の為だけに使うのか?
なーんて妄想をする時は良くあるが、まあそんな事はないわけで・・・
(ピッ!)
「なんだ?何かの電子音みたいのが?」
「部屋の何処かじゃない、頭の中に響く感じだった・・・」
(対象を確認・・・ これよりHIROシークエンスを開始します)
「は?何これ?」
その音声は無機質だが綺麗な女性の声で淡々と頭に響いた。
(生体プログラムインストールを確認・・・クリヤ)
(HIRO適正を確認・・・)
(ブブーッ 適正年齢を超えています)
(…え?)
「な、何だ?どうした?」
(そんなはずは… クッ… 本当に老けてる…)
綺麗な声は落胆している様だった。
「うっせえよ!まだ37だぞ、今まで世間に揉まれこれから味が出て来るんだよ!」
(さ、37…!?)
(少々お待ち下さい!)
(ブッ!…)
なんか音声が乱れバタバタする音が聞こえた。
(ちょっと!?
「老人言うなや!」
(え?!ほんと?そんなはずは…)
最初に聞こえた若いとも年寄りともわからない声が慌てている。
(ちゃんと確かめたんですか!?)
(え〜だってほら今若者に超人気のアーティスト、SAYAKAのポスターとかグッズが所狭しと置いてあるから10代かと思うでしょう?)
「ほっとけ!おっさんがファンで何が悪い!」
反応がない、どうやらこちらの声は聞こえていないようだ。
SAYAKAは半年前に突然出て来た女性アーティストで歌声以外は全て謎、しかしその歌声は若そうだが妙に大人を感じさせたり声相応の可愛いさを感じたりと不思議なボイスで歌う曲も若者が共感できる曲が多く10代の子達から熱烈な支持を受けてあっという間にトップアーティストの仲間入りになった。
世間や社会を皮肉る歌詞が多く大人からはそこまで支持されていない様だが俺はその世の中の理不尽さをバッサリと歌う彼女に魅せられていた。
何か彼女とは運命的な感じがする!
と言うと自分ながらキショいが何故か惹かれるのだ。
(バカじゃないんですか!?いくらSAYAKAが若者に人気でもおっさんのファンも居るに決まってるじゃないですか!)
お姉さん容赦ないな…
(だって部屋暗かったし…おっさんでここまでハマってる人なんて… … キモ…)
「キモ言うなや!しまいにゃ怒るぞ!」
(どうするんですか?完全に対象外ですよ!)
向こうの声がこちらに聞こえているのもわかってないなこれ。
(そう言ったってもう初期処理は済ませちゃったし今から戻すと抜け殻になっちゃうよ…)
(この前も間違えたでしょ?あれもどうやったら間違えるのか…そもそもこの星の調整を間違えてそれを正す為にやってるのに更にやらかすなんて…この禿が…)
(ウリカちゃん落ち着いて暴言出てるから…禿げてないし…)
お姉さんウリカちゃんと言うのか…可愛いな…
それにしてもどうやら俺だけじゃなく他でもやらかしていたらしい。
大丈夫かこれ?…っていうか本当に何なんだよ?
(うーん、この前の人は生い先短いとかでなんとか妥協してもらったけど37歳か…中途半端な年齢だね…)
(よし、あれだねこのままやってもらうか。年齢的にかなりキツイだろうけどその分詫び盛してあげればいいんじゃないかな?)
(詫び盛って何を盛るんです?)
(それは… これを… こうして…)
(え?それいいんですか?)
(しょうがないじゃない?これくらいないとやってられないと思うし)
(あ、これも必要じゃないですか?)
(お、いいとこ持ってくねウリカちゃん)
(それじゃサービスでこれも付けとうか)
(それやばくないですか?人間辞めちゃいますよ?)
何やら色々言われているが肝心の所が聞こえない…
・・・
(それじゃ、これで行こうか?)
しばらく相談が続いていたが話がまとまったようだ。
(本当にこれでいいんですね?責任持ってくださいね?)
(当たり前じゃ~ん、って他に誰が責任とれるのよ?)
(まあ、どっちにしても断ったらそれで終わりなんだからさ~やるしかないよね?)
おいおい?何やらされるんだ?
(ピッ!)
(対象を確認・・・ これよりHIROシークエンスを開始します)
またそこから!?
(生体プログラムインストールを確認・・・クリヤ)
何事も無かったように無機質な声で淡々と進めるウリカちゃん。
(HIRO適正を確認・・・)
(パンパカパーン!)
派手なファンファーレが鳴り響いた。
(おめでとうございます、あなたは特別なHIROとして選ばれました!)
「あ…はい」
特別って…そう来たか、確かに初めて聞けば当たりという感じで嬉しいかもしれない。
だが、俺は知っているぞ…やらかした詫び盛という事を…
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