春高の醜聞(ミニドラマ脚本)

前花しずく

春高の醜聞

春高の醜聞


○シーン1 冒頭


   廊下を歩く和登。(三つくらいのアングルから撮る。)

和登ナレ「皆さんは名探偵を見たことがあるだろうか。ドラマや漫画ではよく出てくるけれ

ど、現実にはそうそういるものじゃない。でもね、うちの学校にはいるんだ。名

探偵と呼ばれるような、そんな人間が。」

   「タイトル」

   和登が図書室前に来た時テロップで名前を出す。

   和登 図書室の戸を開ける。図書室奥に本を読む焔。

和登「よっ」

   和登 焔に近づく。

和登「今日は何読んでるんだ?」

   カメラ 焔にズーム

和登ナレ「真剣な表情で本を読んでいる彼こそが、まさしくうちの学校の名探偵。名を六郷

焔という。(テロップで名前)彼は誰がどう見てもなんてことない学校のなんてこ

とない生徒なのだが、しかし中身は全くなんてことない人間ではないのである。

ある時は生徒会を裏から操って校則を変えさせたり、またある時は機転を利せ

て不良生徒をおとなしくさせたり。校内ではいい意味でも悪い意味でも有名人

なのであった。

(ここの部分はそれぞれイラストを映像で挿入するとそれっぽくなりそう)

僕はそんな彼と幼馴染であり、彼は僕の数少ない本好き仲間でもある。そして何

より、僕は彼が巻き起こすドタバタ劇を見るのが好きなのだった。」

焔「今日は松本清張さ」

和登「うへぇ、社会派ミステリは嫌いなんだよなオレ」

焔「とっつきにくいのは確かだが、人間の愚かさについて深く学べるんだ」

和登「そんなこと学んでどうするのさ」

焔「今回の依頼に関係している、と言ったら和登くんも興味を持つんじゃないか?」

和登「依頼?」

和登ナレ「焔はその悪名高さゆえに、たびたび本物の探偵のような依頼を持ち込まれる。ま

あ、大抵は人探しや落とし物みたいなやつばかりなんだけど……」

焔「今回の依頼人の名前を聞いたら驚くと思うぞ」

和登「なになに?珍しい人?」

焔「今回の依頼人は、三田先生だ」

和登「ふーん、三田先生か。なるほどねえ……って三田先生!?あの三田先生!?」

焔「そうだ。あの病的なまでにひょろっとしていてメガネで、苛立った時のうっぷん晴らし

に生徒を利用している、あの三田先生だ」

和登「そこまでは言ってないよ」

和登ナレ「そもそも先生たちは焔を厄介者扱いしていて、あまり触れようとしたがらない。

だから先生から依頼というのには驚きだし、それも気難しそうな三田先生から

依頼が来るなんて、余計に驚きだ」

和登「で、どんな依頼なの?」

焔「言ったろう、この依頼のために人間の愚かさを学んでいたってね」

和登「確かにそんなこと言ってたけど、つまりどういうこと?」

焔「端的に言えば、JKと不倫した証拠を隠滅してほしいってことだな」

   和登 手に持っていた本を落とし口をあんぐりと開ける。

和登「そ、それじゃあ三田先生が教え子に手を出したことになっちゃうじゃないか!?」

焔「ああ、そうだよ」

和登「厳しい先生だと思ってたけど、そんな顔があったなんて……」

焔「不完全な人間ほど他人を下に見て優越感を得たがるものだ。何の不思議もないね」

和登「そういうもんなのかなあ」

焔「さて、肝心の依頼の詳細なんだが……まず不倫相手というのが2年9組の入野愛里だ」

和登「入野……ってあの入野愛里!?」

焔「なんだ知っているのか」

和登「知ってるも何も、学校いち美人だって評判じゃないか!なんでも事務所のスカウトを

五回も受けたらしいし。三田先生のこともショックだけど、入野愛里が相手だってい

うのもショックだなあ」

焔「まあともかく、その入野愛里が不倫相手だったんだが、三田先生が別れを切り出したと

ころ、交際していた証拠の写真をバラまくと脅されたんだそうだ」

和登「脅された?」

焔「生徒に手を出したことをバラされたくなければ金を払え、ってね。当然警察にも学校にも相談することができず、泣く泣く僕のところへ依頼を持ってきたわけだ」

和登「それもう通報した方がいいんじゃない?」

焔「探偵は依頼人のプライバシーは守るものさ。いいじゃないか。事件を捜査するのは君も

好きなんだろう」

和登「そ、それは、反論できない」

焔「というわけで依頼内容は『入野愛里のスマホに保存されている交際の証拠の写真を削除

してくれ』、というわけだ」

和登「よし、そうと決まればまずは情報収集だよな」

焔「ああ。依頼が依頼だけに、慎重にな。聞き耳を立てているだけでいい」

和登「分かってるって。何年間焔の助手やってると思ってるのさ」

焔「……それじゃあ次に図書室が開くまで、お互い探るとしよう」

和登「ラジャー!」


○シーン2 情報収集

   教室や廊下で二人が色々な人の話し声を盗み聞きしている映像。

セリフナシBGMのみ。焔はスタイリッシュに、和登はアホっぽく。


○シーン3 情報整理

   図書室で焔和登 机を挟んで向かい合う。

焔「ではお互いの情報を共有しよう」

和登「おっけー。まずオレからでいいよな。正直これと言ってめぼしい情報ではなかった気

がするんだけど……」

   ここから映像は盗み聞き時の映像に切り替わる。

和登ナレ「改めて観察すると、やっぱり男はみんな入野のことを気にしているみたいだ。大

きい声で噂話してくれるから盗み聞きはしやすかったな。それで彼女の一日の

行動なんだけど……(彼女のそれぞれの行動の映像)まず、彼女は一つ隣駅の西春

駅から通っているらしい。毎朝同じ時間帯の電車に乗っているから、乗り合わせ

ることは簡単、なんだそうだ。いつもイヤホンで音楽を聴きながら登校している

とか。そして授業を受けている時はいいとして……休み時間はよく教室からい

なくなっていたらしい。多分この時に先生と密会してたんじゃないかな。放課後

は一目散に塾に行くらしい。春中央駅の駅前んとこだ。毎日熱心に通っていて、

そのために部活もやめたんだそうだ。えらいよなあ。夜遅くに春中央駅で見たっ

てヤツもいたぜ」

和登「っていうのがオレが聞いて分かったことだ。勤勉なヤツだったってこと以外は分から

ず仕舞いってわけだ」

焔「……なるほどな。では次は僕の番だ」

焔ナレ「僕は和登くんとは違う、というよりも真逆のアプローチをしていてね。主に女子生

徒の話を聞いていたんだ。まあ、男とは違うタイプの下世話な話が多くて面白かっ

たよ。そこから知り得た情報は大きく三つある。一つは和登くんが言っていたのと

同様、塾にえらい熱心に通っていたということだ。放課後が近づくにつれてそわそ

わし、にやにやし出すんだそうだ。相当受験勉強が好きと見える。一方で、直近は

放課後トイレにこもることが多く、顔色がよくないらしい。二つ目の情報は、バレ

ンタインの日に誰かへ渡すチョコを持ってきていたということ。女子はこの手の

話が好きなのだろうな。この話題はえらく盛り上がっていたよ。そして最後の情報

だが……その直後くらいから急にお昼ご飯をチョコにするようになったというこ

とだ」

和登ナレ「昼飯がチョコ!?どれだけ甘いものが好きなんだ!?」

焔ナレ「スイーツに目がない女子の目にも、その行動は異様に映ったらしい。お腹を壊しや

すくなったのもチョコの食べ過ぎなんじゃないかと呆れて話していたよ」

焔「といった感じだ」

和登「なんだー、焔の方も大した情報ないじゃんか」

焔「……いや、そんなこともない」

和登「え?お前、もう何か分かったのか?」

焔「……今日の放課後確かめてみるか」

和登「確かめるって何を?」

焔「……(黙って出ていく)」

和登「無視をするナ!」


〇シーン4 放課後の廊下

パラパラと帰る生徒たち

女子トイレから出てくる入野

そこへ和登が声を掛ける

和登「入野さん」

入野「なんですか?急に」

和登「オレ、小難しいこと嫌いだから単刀直入に言うね。先生との写真、消してくれない?」

   入野、状況を察してにやりと不敵な笑み

入野「あー……あなた、きいたことあるわよ。あの春高のホームズのところに入り浸ってる

ワトソンくんでしょ」

和登「和登だよ。名前が似てるからって間違えないでほしいな」

入野「どっちでも同じことよ。……それにしたって、消してくれって言ったら消してくれる

と本気で思っていたのかしら」

和登「当たって砕けろってやつだ。オレにはそれしかできないからな」

入野「ドヤ顔で言うことじゃないでしょう」

和登「最悪スマホを奪って壊しちゃえばいいんだ。男と女、一対一で勝てると思うなよ」

   近づこうとする和登、入野はそれを見てため息

入野「あのねえ。他人のスマホ壊しておいてただで済むと思っているの?私が言えたこと

じゃないけど、退学間違いなしどころか捕まるわよ」

和登「そ、それはきっと、焔がどうにか……」

入野「それにスマホ自体を壊したって無駄よ。今の時代、写真は自動でクラウドに保存され

ているんだから。新しくスマホを買い直せばすぐ取り出せるわよ」

   入野の言葉に和登動揺

和登「え?でも焔が……え?」

   そこにスタスタと焔登場

焔「まあまあ、あんまりうちの和登くんをいじめないでやってくれないか」

和登「焔!?聞いてた話と違うじゃないか!?」

入野「春高のホームズさん、犬のリードは常につけておくものよ」

和登「誰が犬だ!」

焔「入野さん、君だって写真が流出すれば不利益を被るんじゃないのか?教員と恋仲にあっ

た女……だなんて不名誉極まりないだろう」

入野「そのくらい問題にならないわ。相手は私である必要がないでしょ?顔だけ隠して鍵高

の制服の女の子と先生のツーショットさえあれば事足りるはずよ」

焔「ほう。ではこちらも同じようにツーショットの写真を盾に取らせてもらおうか」

入野「あら、そんなことしたらそれこそ先生が大きな不利益を被るんじゃない?依頼人の不

利益になることを名探偵さんがしちゃってもいいのかしら」

焔「……誰が先生とのツーショットと言ったかな?『先生以外の人との』ツーショットだよ」

   入野、急に焦って目を見開く。直後に目を逸らす。

入野「な、なんのことだか……」

焔「ここにその写真があるんだ(スマホを見せながら)。せっかくだし君にも送ってあげよう」

   エアドロで入野のスマホに送り付ける。入野、慌ててスマホのパスワードを開く。

   それを和登が奪い取って焔にパス。

入野「何するのよ!」

和登「へっ、油断してたな」

   焔がスマホを操作するカット(この時点では画面を映さない)。

   途中でピタッと動きが止まる。そのすぐあと入野がスマホを奪い返す。

焔「……君は用心深い女だ。まさか画像フォルダにまでパスワードがかかっているとは」

和登「ゲッ!!まじかよ!」

入野「ふふふ……私の方が一枚上手だったってわけね。今日のところはここまでにしましょ。

これ以上やるとあなたのプライドが傷付いちゃうわよ」

焔「……」

和登「おい焔!何とか言ってやれよ!」

入野「それじゃあね。春高のホームズさん」

   入野、上機嫌でその場を後にする。

   それを二人は呆然と眺めている。


〇シーン5 真相

   図書室。焔が本を読んでいるところに和登が慌てて入ってくる。

和登「焔!入野愛里が退学したってよ!!」

焔「ああ、知っているよ」

和登「なんでそんな落ち着いていられるのさ!結局不倫がバレちゃったんじゃねえの

か!?三田先生もやべーだろ!」

   焔、本を閉じてため息

焔「和登くんはそそっかしいのがたまに傷……いや、いつも傷だ。落ち着いて考えたまえ」

和登「お、オレはいたって冷静だぞ、うん」

焔「入野愛里は退学させられたんじゃない。自主退学だ」

和登「自主退学……自分から学校をやめたっていうのか?」

焔「そうだ。彼女は自分の意志で、この学校を去った」

和登「それはそれで意味が分からないだろ。不倫のことで先生をゆすっておいて退学って。

何か計画が失敗でもしたってことか?焔に恐れをなして逃げた?」

焔「いや、最初からこれが狙いだったんだよ」

和登「退学することが狙い?それってどういう……もしかして焔、最初からこうなることが

分かって……?」

焔「最初からではないが、少なくとも放課後彼女と話した時から確信していたよ」

和登「だったらそのとき教えてくれりゃいいのに!早く教えてくれよ、今回の真相を。この

ままじゃもやもやして授業中も寝られやしない」

焔「授業中に寝るな。……まあ全部終わったあとだからな。順を追って説明してあげよう。

(少し間を空けて)結論から言って、先生とのツーショット写真なんてものは『存在して

いなかった』」

和登「……いきなり何を言い出してるんだ?ないものでどうやって脅迫するのさ」

焔「難しいことじゃない。仮に一度も撮られた記憶がなかったとしても、写真があると言わ

れればふつう動揺するものだ。それに今回に至っては生徒と教師の不倫。三田先生も相

当そういったことに気を使っていたんだろう。だから身に覚えがなくても撮られている前提で動くほかなかったんだ」

和登「それはそうかもしれないけど……だからって、なんで入野はそんなに危ない橋を渡ろ

うとしたんだ?」

焔「それがそこまで危ない橋でもなかったんだよ。なぜなら、彼女はすぐに退学して三田先

生とは関係を切るつもりだったんだからね」

和登「そこがよく分からない。なんでわざわざ退学なんてする必要があるんだよ。せっかく

入試を受けて苦労して入った高校をやめるだなんて」

焔「彼女はね、妊娠していたんだよ」

   和登が完全に固まる

和登「な、な、な!?」

焔「しかも彼女は生む覚悟をしていた。だから退学を選ぶしかなかったんだ」

和登「ちょ、ストップストップ!!なんでそんなことが分かるのさ!!エスパーなのかお前

は」

焔「なあに、これは聞き込みの段階から分かっていたことだよ」

和登「そんな前から!?……ってだからその時に教えろよ!」

焔「聞かれなかったからね。君に報告した通り、女子たちの会話から彼女が最近チョコを異

常に大量に食べていたことが分かっている。だがそれは「好きで食べている」のではな

く「それしか食べられなかった」んだ」

和登「チョコしか食べられなかった……?」

焔「君にはまだ縁がないかもしれないが、妊娠するとつわりという症状が出る」

和登「授業で聞いたことはあるような気がするけど」

焔「妊娠中は不定期に吐き気を催したり、特定の食べ物しか食べられなくなることがあるん

だ。それをつわりという」

和登「じゃあ入野がチョコばかり食べていたのもそのせいだっていうのか?」

焔「ああ。その証拠に、もう一つつわりの症状とおぼしきことがあったろう」

和登「……あ、放課後トイレに籠るってやつか……?」

焔「おおかた、トイレに籠ってえずいていたんだろうな(回想VTR)。学校で他の誰かを頼

るわけにもいかないし、放課後まで我慢して吐き出していたんだろう」

和登「……なるほど、妊娠していたかもしれないっていうのは分かった。でも、なんでこれ

から別れようとしている男の子どもを生もうとしてるんだ?そんなに三田先生のこ

とが好きだったってことか?でもだったら金じゃなくて別れないでって脅迫するよ

な」

焔「そこがそもそも間違いなんだよ、和登くん」

和登「間違い?」

焔「入野愛里が愛していた人間……それは三田先生ではなかったんだ」

和登「……はあ!?え、でも二人は付き合ってたんだよな?不倫してまで」

焔「和登くんは子供だねえ」

和登「お前も子供だろ!」

焔「彼女にとっては三田先生も遊びだった……早い話が二股をかけていたのさ」

和登「うわあ、聞けば聞くほど入野の株が地に落ちていく……三田先生も大概だけど」

焔「和登くんが聞いてきたところによれば、休み時間によく教室から抜けていたのだろう?

和登くんの推理ではそれが三田先生の密会ではないかということだったが……実際に

職員室を覗いてみればそんな時間がないのは誰の目にも明らかだ。つわりのこともあ

るだろうが、恐らくスマホで校外の人間と通話していたのだろう。この学校はスマホに

関する規制が緩いからな」

和登「でもそれだけで第三者がいると考えるのは早すぎないか?」

焔「じゃあ和登くんが三田先生を脅迫する立場だったとして」

和登「とんでもない仮定だな」

焔「自分が相手のせいで妊娠しているのにわざわざ嘘の写真の話をでっちあげて脅迫しよ

うと思うかい?」

和登「……いや、普通に考えれば「妊娠させられた」ことをネタにする……あ!」

焔「そう、それは不可能だったんだ。なぜなら三田先生とはそこまでの仲に発展していなか

った……パパ活程度の軽いものだったんだろう。まさしくお遊びだ」

和登「……つまり、入野の本来の恋人は別にいて、その人との子供を生むつもりだった。だ

から学校にとどまることはできず退学を決意した。そしてせっかくだから別れ際に

三田先生からお金を巻き上げようとした……ってことか。……あ!だからあの時(放

課後入野と話したときの画像)「先生以外の人とのツーショット」って言ってたわけ

だな!?どうも引っかかってたんだよあれ」

焔「ああ。不倫相手はおおかた塾の講師か誰かなんだろう。熱心に塾に通っていたのも、バ

レンタインにチョコを持ってきていたのも、全てはその恋人のためだったんだ」

和登「……JKに手を出したとはいえ、ここまでくると三田先生が不憫だ。……まあ事件の

あらすじは分かったけど、どうしてお前はそこまで断言できるんだよ。すべて状況証

拠ばかりだろ?スマホの写真も結局見られなかったわけだし」

焔「いや、フォルダを開くことはできたさ」

和登「は?そうなの??」

焔「黙っておいた方が彼女の為だろうと思ってね。引っかかったふりをしておいたんだ。フ

ォルダのパスワードは0314。バレンタインの日付さ」

和登「そしてその中に……何も入ってなかったってことか」

焔「ああ。ツーショットどころかブレブレのミスショットすらもなかったよ」

和登「ってことはもう三田先生には話したの?もともと写真がないんだから、依頼達成じゃ

んか」

焔「いや。三田先生には教え子に手を出した罪をたっぷり償ってもらわなければ。失敗した、と軽く伝えておいたよ」

和登「あー、確かにここんとこ三田先生が静かだったような……」

焔「入野はこれから家族すら頼れなくなるわけだからね。数十万の妊娠祝いくらいやっても

いいだろう」

和登「……ということは、結局入野は全部思い通りにことが運んだってことなのか。焔が情

けをかけてやっただけなのに……なんか悔しいなあ」

焔「いや、それが違うんだ」

和登「違う?何が?」

焔「彼女は僕がそう考えることまで、全部オミトオシだったのさ」

和登「そんな馬鹿な」

焔「フォルダを開いたとき、署名をしろという見たことのないポップアップが出てきた。そ

の時は何も考えずにサインを殴り書いたんだが……冷静になればそんなポップアップ

は存在するはずがないんだ(その時のスマホ画面を映した映像になる)。パスワード解除

時にサインを求められるなんてありえない」

和登「……ってことはわざわざ入野が焔にサインを書かせたってこと?なんのために?」

   焔は髪をかきむしって盛大にため息をつき、目の前の机に二枚の紙を放り投げる

焔「こういうことだ」

   紙の内容にズーム。紙は婚姻届けで、証人部分に焔が書いたサイン。

もう一枚は手紙の便箋に大きく「ありがとう」と書かれている。

   そのまま背の高い男と腕を組んで街中を歩く入野の映像へフェード

焔ナレ「彼女は……あのひとは、僕らの想像していた以上に『素敵』だったんだよ」

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春高の醜聞(ミニドラマ脚本) 前花しずく @shizuku_maehana

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