098 昼休み。屋上手前の踊り場。ボッチな彼女はボッチな彼とずっとゲームしていたい

「(~~~♪)

(カチャカチャカチャカチャ)

…この。くそ。

あー、やばやば。

………

(~~~♪)

………っち。あそこでダメージ食らってなければ…

(スタスタスタスタ)

………ん。遅い。

ほら。君がさっさと来ないからやられちゃったじゃん。

どう責任取ってくれるの?

…ま、いいや。今日どこやる?

………あー、あの山荘のとこかー。

あたし一回しかクリアしてないんだよね。

耐性何必要だっけ?

…麻痺と毒ね。りょうかーい。

さっさと君も準備してよね。

(~~~♪)

………音?

別に、こんな校舎の隅っこ。しかも鍵かかってる屋上扉の前なんて、誰も来ないわよ。

半年以上、昼休みにここに居座ってるあたしが言うんだから、間違いないし。

………まあ、あんたは来たわけだけど。

でも、それはあんたがボッチだからでしょ?

教室で居場所がなくて、泣く泣くここに辿り着いただけだし。

…はいはい。どうせブーメランブーメラン。

あたしもあんたと同じ穴の狢ですよーだ。

………でも、別によくない?

ここでゲームしてても、誰に迷惑かけるわけでもないっていうんだし。

ボッチが一人でゲームしてても、気にする奴なんていないわよ。

………二人じゃないし。

あくまであたし達は一人と一人。

ただボッチの人間が、場所を共有しているだけ。

ただ二人プレイの方が効率がいいっていうから、お互いに利用しあってるだけ、でしょ?

…わかればよろしい。

………準備終わった?

じゃ、さっさと行きましょう。氷のドラゴン退治に」




「(~~~♪)

(カチャカチャカチャカチャ)

………

…ふんっ。ふんっ。ふんっ。

………あ、そっち攻撃いった。

って、もろに食らってないでよ。

…回復?

あー無理無理。薬もうない。

…あ、やば。

(~~~♪)

………あー。

やられたやられた。

HP半分もいかなかったー…

………あんた、最近腕鈍った?

…いや、別に謝れとは言ってないけど。

でも、あんた最近ここ来ないじゃん。

なんか新作ゲームとかにハマってんの?

そっちにはまってるんなら、別に無理してここに来なくても………

………ふーん。ゲームじゃないんだ?

じゃあ何?好きな人でもできたって言うの?

まああんたに、好きな人なんかできるわけ………

(………)

…え、何その反応?マジなの?

………

気になる人って…

いやそれって、好きな人みたいなもんじゃ…

………いや聞いてないし。

それがクラスのギャルとか、聞いてないから。

………

…別に、不機嫌になんかなってないし。

あー、それはほら。

さっきあんたのせいでボスにやられちゃったから。

…とにかく。なんでもないから。

………なんでもないんだから」




「(~~~♪)

(カチャカチャカチャカチャ)

………

………

………

………あ。

(~~~♪)

…あー、あー、あー、あー。

やっぱソロプレイきついわー。

回復もタンクも一人でやんきゃ行けないのに二刀流攻撃とか、無理ゲーじゃん。

クソゲーだ。クソゲー。

………

………

………

…あいつ、今日も来ないのかな………」




「(~~~♪)

(カチャカチャカチャカチャ)

………あ、そっち一人ザコ行った。

…ん。こっちはOK。

………あと、もうちょいで…

…え、何この攻撃………

………ちょ、ちょ、ちょ、ちょ…

………

(~~~♪)

…はあ?なんなのあの最後の攻撃?

あんな攻撃、初見で避けれるわけないっつーの!

………え、ああ。確かに。周りのザコが似たような攻撃してたけど。

でもそれをボスがやってくるとは思わないじゃん。

…はいはい。どうせもう一人じゃ無理でしょ。

やられたやられた。

(~~~♪)

えー何?不満そうな顔して。

どうせあんたが一人生き残ったって、残りのHP削るの無理でしょ絶対。

リトライした方が早いって。

…あ、でも。今ので防具壊れたし、アイテムも補充しに戻らないとか。

準備整ったらリトライするわよ。

………

…まあでも、最初の頃に比べれば、あんたもだいぶ強くなったんじゃない?

ここ最近、毎日あたしの華麗なるプレイ見てるから、見稽古のたまものってやつ?

あんたがもうちょっと強くなれば、もう少し強いマップも行けるかもね。

………

…そーいえば。

こないだ言ってた気になる人とやらどうしたの?

………いや別に?聞いただけだし?

………

…ああ、それあたしも風の噂に聞いた。

なんか、ネットで炎上しちゃったらしいね。

それがその人だったんだ。へー。SNSの闇って怖いねー。

こんなボッチのあたしの耳にもくる話なんだから、相当な炎上なんじゃない?

災難なんだったね、そのリア充様も。

………へー、一応学校には来てるんだ。

………ふーん。リア充って仲間意識強いんだね。

………

…ん、トイレ?

そんなのわざわざ言うなし。

さっさと行ってきなさいよ。

昼休み、もうあんまり時間ないんだから。

(スタスタスタスタ)

………

………

………

(シュッシュッ、タッタッ)

…あの子のSNS、擁護のコメいっぱいついてる。

なんでよ。なんでリア充はこんなに味方がいるのよ。

………ま、いっか。

10、20個のアカウントで叩いてダメっていうんなら、今度は100個のアカウントで叩いてやる。

現実じゃあリア充様が最強なんだろうけど、ネットの中だったら、あたしの方が最強なんだから。

叩いて叩いて叩きまくって、不登校になるくらいまで再起不能にしてあげる。

そうしてリア充様をボッチのボッチにしてやれば、あいつだってあたしだけを………

………

………

………

(スタスタスタスタ)

………ん。遅い。

こっちはもう準備終わってるし。

さっさと準備して。

それが終わったら、今度こそ巨大戦艦倒しに行くんだから。

あたしとあんたの、二人プレイでさ」

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