第67話 おはよぅ…ござぃ、え?
朝の教室で
「お、おはようございます。折川さん」
「おはようせんり」
「おはよぅ…ござぃ、え?」
俺は首をかしげるが、
「なんでも、ありませんわ」
素直に
土日にランチがあると言われても土日は日中にバイトだ。どうにも
唯彩さんが来てもその勢いは止まらないので、唯彩さんはどうしたの? と心配しつつも、不思議そうな顔をしていた。
昼休みになれば三人で集まりお弁当を広げる。今日は
俺としても母親が弁当作り疲れをするよりは時短してもらっても構わなかった。
そういう点で、俵おむすびがあると
「ひさ君のお弁当ってたまに手が込んでるよね」
「家族のきまぐれでグレードアップするみたいだ」
「ガチャってやつだ。ガチャ!」
「あーゲームの? 俺のお金は出てないから単にお得なだけだなー」
「うーん、すごいなぁ。あたしは毎日作るの考えると大変だから時短考えちゃう」
「唯彩さんは主婦だね。でも、それで良いと思う。うちもいつもは昨日の夕食を活用とか時短と手軽さ重視だから」
俺がにっこり笑って素直にそう言うと、唯彩さんが嬉しそうにはにかんだ。
「そうかな! ありがと! でも、まだ主婦じゃないから」
「あの、尚順さん、私のお弁当とよろしければおかず交換いたしませんか?」
「うん?」
おずおずと提案してきた
「今日はまあ、手間暇かけてくれたわけだし、俺が食べようかなって」
「そ、そうですか。で、でしたら、おかず、こちら、どうぞ」
「良いよ、大丈夫。気にしないで」
俺は笑顔で
「ひさ君、なんだか今日は美味しそうに食べてるね」
「そう、かな? ああ、茄子が入ってるからかも。なんだか知らないけど、茄子を使った料理が好きなんだよね。味噌汁にもたまに入れてもらってるし」
「茄子、夏野菜ですからそろそろ旬ですものね! どんな料理が好きなんでしょうか?」
「あ、あたしも気になる気になるー。茄子って焼いた時の匂いが苦手だけど、好きな人多かったりするよね」
「えぇ、そんな気になることかな? 天ぷらは鉄板かなぁ」
そんな事を話しながら、穏やかに昼休みを過ごした。ちらっとせんりを見たが、一人で食べていた。昨日は友達と食べていたが、タイミングが合わなかったのかな? 俺はそんな事を思ったが、偶然せんりと目があった。
バッとせんりの顔が勢いよく別の方向を見てしまう。
食事中の女子を見たのは失礼だったなと反省した。
「どうかした?」
「いや、何でも無い。唯彩さんはお弁当一人で食べるときってどんな時?」
「えー、時間がない時!」
「お、お友達が居ない時」
「え、
取り巻きとかいう女子がきっと居ただろうと考えた俺の言葉に、しょぼんとするように
「え、遠足、ふふ、
「あーちゃんごめんね? 一緒に食べてるからね? おかず! そう、私のおかずと交換しよ?」
「唯彩さん、あ、ありがとうございますの。これ、自信作、ですの」
後でまたお礼を言って、時間がある時に頭を撫でよう。
きっとお願いされるだろうなと思って、俺は自然とそう考えていた。
昼を食べ終わって、廊下で教室から出たせんりが声をかけてきた。
「あの、折川君」
「せんり、どうかした?」
「あう、その、昨日、本当にあり、がとう」
「こちらこそせんりは可愛いから選ばせてもらうの嬉しかったよ、ありがとう」
「かわ、いい……」
「あと、大丈夫だった?」
「何が、でしょう?」
長い黒髪の少女がこくりと不思議そうに首をかしげる様は、可愛い。俺にとって、
「昨日、帰り道、なんだからふらふらしてたから」
「あ、あれは! だ、大丈夫でしゅ」
「そっか。良かった」
「はい! あの、メッセージって、送っても、だい、じょうぶ? 迷惑じゃなかった」
「うん? せんりは友達なんだし全然構わないよ」
パァと明るい笑顔になるのは
「良かったです! それじゃあ」
「うん」
満足そうなせんりを見送って、俺はトイレに行こうと廊下を歩いた途中で、また人気の少ない場所に向かって
……いつになったら先輩は俺に相談してくれるんだろう。また怒らせたからしばらく教えてくれない期間が伸びただろうか。
そんな気持ちを抱きながら、
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