冒険者

第58話 グエバ連邦国家


 俺達はギルドで地図を見ている。ここからは北に行くか南に行くかで口論している。

「いまから春になるから北に行ったほうがいいって!」

「いーや南でバカンスだ!」

「あれだけ寒いと言っていたのは誰だっけ?」

「夏は海だろ?イカ焼き、やきそば、BBQ!」

「くいものばっかじゃねーかよ」

 俺と千夏で口論しているが、エマと冬夜はいつものことだと思っている様だ。


「「どっちがいい?」」


「うーん、僕も暑いのは苦手だから北の方がいいかな?」

「わたしも」

「よし勝った!」

「うぇーん、たこ焼きに焼きとうもろこしがぁ」

 日本で食えばいいだろう。

ウェザイア王都から街道沿いに北に向かえばグエバ連邦国家に到着する。

 連邦国家とはアメリカ合衆国やドイツのように一つの主権のもとに結合された国家の事だ。


「んじゃ出発するか!」

「ラジャ!」

 街道をひたすら北に歩いて行く。

「どれくらいかかるの?」

「さあ?話によれば直ぐに国境らしいが」

「そうなんだ!それならよかった!」


 結局2日かけて国境にたどり着いた。

「どこが直ぐなんだよ!」

「しらねぇよ!」

 馬車と勘違いしたんじゃねぇか?

 国境を抜けると一面の雪景色だった。

「も、も、もっと寒いじゃないか!」

「ダウン着とけよ」

「う、うん」

 千夏もエマも完全防備だ。

 街道も分からないくらい雪が積もってるな。


「あっ!街がある!寄ろうよ!」

「だな!ここはどこか分からないからな」

 寄ってみるとみんな酒臭い。

「うん。水みたいに酒飲んでるな」

「酒精が強い酒みたいですね」

「チャイニーズ?」

「違うよ、日本人だよ」

「あはは。日本人か。俺はゴルジェイ、ロシア人だ」

「そうか、秋に冬夜、千夏にエマだ」

「こんな異世界を旅してんのか?」

「旅してみたくならないか?」

「あはは、ならないねぇ」

「まぁ、変わりもんって事だろ」

「違いないな」


 俺達とも砕けた会話をするゴルジェイはギルドに案内してくれた。

「よぉ!聞いてくれ!日本人だってよ!」

「まじかよ!」

「アニメ大好きね」

「クレイジーだな」

 色んな声が響き渡るが歓迎してくれてるみたいだ。

「お前のアプリはなんだ?」

「俺のは『ファイナルブレイブ』って言うRPGだな。ゴルジェイは?」

「俺か?俺はゴルフだ」

「使えねぇー!」

「春になったらゴルフ三昧だぜ」

「あははは」

 男がやってくる。

「俺はジェミヤンだ。酪農ゲームなんだが、ここの斧が切りにくくてよ!なんか斧はあるか?」

「これでいいか?」

 星1の木こりの斧を渡すと、

「おお!これだこれだ、ありがとよ」

「おっと」

 金貨を一枚投げ渡して斧を持っていった。


 伐採できなくて困ってたのか。

「アニメ化大好きよ!ハメハメハー!」

「「「あははは」」」

 それからはどんちゃん騒ぎで宿に向かい部屋を取って家に帰るのも忘れて寝てしまった。


「うー、シャワー浴びたいから家に帰るわ」

「俺らも帰るよ。女将に二週間世話になるっていってくるわ」

 先に二人を返して冬夜としたの女将に言いに行く。


「せっかくだし街ブラするか?」

「そうしましょうか」

 テキトーに冬夜とぶらついているとやっぱりでてきたゴルジェイ!

「おー、我が友よ」

「ハハッ酒臭いぞ!」

「なーに、水みたいなもんさ」

「スキル屋はあるか?」

「あん?あるぞ、あそこだけだがな」

 寂れた建物が見える。

「ありがとう、いってみるよ」

「おう!また飲もうな!」

 ゴルジェイは陽気だな。


 スキル屋に入ってみるとスキルオーブが乱雑に置かれていた。

「おいおい、足の踏み場もないじゃないか」

「客かい?なにを探してるんだい?」

「インベントリか、アイテムボックスはないか?」

「はて。あった様な気がするね」

「まじか!」

「片付けないと出てこないよ?」

「うわ。まじだな」

 俺たちはしょうがないから片付けて行く。

「ねぇじゃねぇかよ!」

「まぁ。そう怒りなさんなよ。いいものをあげるから」

 婆さんは一つの枝をくれた。

「世界樹の枝?」

「ほう。わかるかい」

「いいのかこれ?」

「片付けて貰ったからねぇ」

「ありがとう婆ちゃん!」

「あんたにババア呼ばわりされる覚えはないよ!」

「わかったよ!」

 スキル屋を出るともう昼だった。

 エマと千夏に遅いと言われウーバーをご馳走する羽目になった。


「へぇ。気になるオーブはあったの?」

「戦士のジョブオーブがあったな」

「おぉ、それはいいですね」

 冬夜が食いつく。

「あとはスキルオーブばっかりだったよ」

「風変わりなおばあさんでしたね」


「だな」

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