【けもみみランドフル回転!】どうやら俺はお狐様に魅入られてしまったようだ。

覚醒冷やしトマト

第1章 神隠しという強引なアピール

第1モフり 運命の尻尾

 晴天の空、暑苦しい気温、自転車で駆け巡るその道は流れる空気による自然の扇風機を感じながら俺はその道を進む。

 ん? 何故暑苦しい日にわざわざ外へ出たのかって?

 何簡単な事さ、新刊が発売されたからだ。そう俺の大好きな新刊がね。


 おっと! 自己紹介がまだだったな。

 俺の名は『瀧ケ崎たきがさき 時哉ときや』だ。よろしくな。

 年齢十七歳で身長百六十五センチの人権無し男だ。

 趣味はプラモデルの組み立てと塗装や絵を描いたり、アニメや漫画とか好きかな。所謂生粋の日本オタク男児さ。


 さて、今の俺が何をしているかを詳しく教えよう。今は新刊を書店にて買った後、家へと帰ってる途中さ。こんな辺鄙へんぴでつまらない生活を俺は最低十七年は送っている。

 え? それじゃあ赤ん坊の頃からじゃないかって? 細かいことは気にすんな。


 俺は所謂変わり種ってやつでな、普通の人間より、どちらかと言えば人外系のほうが興奮するんだ。ま、俺の癖だな。その中でも一番なのが狐娘だ。犬でも狼でもない、狐なのさ。


 因みに自転車のかごの中にあるこの新刊も狐娘系の作品だ。

 それほど俺は執着してるのさ……って、悪いな俺の話ばかりしちまってよ――。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


(……ってアレ? おかしいな)


 俺は何かに気づいた様子で当たりをキョロキョロと見回す。


(ここどこだ? 俺は確か住宅街の中を走っていたはずだが……。いくら変わり映えのしない住宅街とはいえ俺が道に迷うなんてありえない。自慢じゃないが方向感覚はしっかりしていてな。初めてきた場所でも迷ったことはないし……ほんとにここどこなんだ?)


 本来ならそろそろ自宅の最寄駅が見える頃合い。


(まじで記憶にない道だ。見覚えは……無くはない。でもそれはあるような気がするだけだ。……ダメだな景色に惑わされてる。こいつぁハードですなぁ……)


 その時、時哉ときやに電流が走る!


「そうだ! スマホで位置情報を確認すればええやん!」


「さーてと確認しますかぁ」


 ――ポチッ。


 …………………………。


 ………………。


「けっ圏外……だとッ!?」


 想定外の事態に体の背筋が思わず伸びる。


(嘘やろ、そこに電柱あるぞ。……ということは、これもしかして神隠し(?) とかいうやつ?)


(……スゥーーーーッ、俺なんかした??)


 と、何か自分は罪を犯してしまったのではないかと勘ぐりだす。


(いや、待て神隠しってほらこう……神様に対して……それこそ神社で粗相をするとそうなるとかいうやつじゃなかったの?)


(うーん、じゃあこれ神隠しじゃないのかなぁ? もっと怖い系のやつに俺捕まった!?)


 と、更に怖い妄想をしてパニくる俺。立ち往生も時間の無駄、もう少しだけ進んでみようと思い自転車を漕ぎ出した。


 すると、その先の景色にとある山が見えてきたのだった。


「!? なんやアレ、山!? 山だよなぁ……ここ普通に街中やし山なんて一体何駅分遠いところにあると思っとるんや」


 普通じゃない。それに見える山はたった一つ。隣接してる山なんてのはない。山が単体で見えるのだ。


「これはもしかしてあそこに行かないと進まない系かな? 所謂ゴールとかか?」


 色々と思慮をめぐらすが、もうそこへ行くしか無いと腹をくくり目指すことにした。そう……その山には一体何が待っているのか。


(こういうのって大概ホラー系だったりするからなぁ。もしガチホラーだったらどうしよう。脚本家シナリオライター次第じゃ俺助からんぞ! あと俺助かるような玉じゃないし!)


 ホラー系のゲームをすると、はじめの安全地帯から一向に進めないという俺のビビりっぷりを持ってすれば初手死は容易いのである。


 そうして対した時間をかけることもなく山の麓まで来たらそこには鳥居が立っていた。しかも神社まで無数の鳥居が階段と共に並んでいた。鳥居アーチドームである。

しかも少しその鳥居は年季が入っていて結構怖い。


(おっとぉこれは……俺今日死ぬのかな。HAHAHA!)


 そう半ば生きるのを諦めた様子で俺は階段を登り始める。自転車は……麓に置いておいた。不法投棄にはならないで欲しいと祈りながら。


 階段を登りきるとそこには大きな鳥居の奥に古びた神社があった。しかし草木が生い茂っているわけでもなく、神社によくある石畳の道の上には葉っぱ一つ落ちていない。まさしく清潔感があると言える神社だった。


(ほぉーん、なるほどこれは……あ! あそこに栗みてぇな模様がある! なるほどここは稲荷神社のようだな)


 稲荷神社に赴いたことがある人は目にしたことがあるだろう栗みたいなのと、その奥に炎の絵が描かれた模様。その模様こそがここが稲荷神社である証拠!

 赤い鳥居だけなら他の神社でもあるのだ。


(しかし、稲荷神社は俺流の解釈だとチェーン店タイプと個人経営タイプの二種類が存在する。この場所は……こんな神隠しみたいにあってんだ個人経営臭いな)


 説明しよう! 先程の神社のチェーン店タイプと個人経営タイプとは何か?

 そもそも多くの神社にいるのは神様自身ではなくその使いの神使しんしがいる。

 神使とは神社によって違う――はとからす等――稲荷神社は勿論狐である。


 ではまずチェーン店タイプについて。

 所謂大ボスたる稲荷大明神様から給料もとい自らの存在を保つエネルギーを頂くことで存在し続けることが可能。つまりどんなに参拝客が来なかろうと死にはしないから良いのだ! あと悪さとかはしない方である。


 次に個人経営タイプについてだ。

 ここの神使の狐は人間があまりにも崇めるから自らが大ボスたる稲荷大明神を差し置いて真の神と思い込む。つまり動物的な心が残った未熟者である。それゆえ自動的に大ボスから解雇通知が言い渡され、個人的に神社という店を切り盛りしなきゃいけない! だからこの場合参拝客が来なかったら餓死するのだ! だから一人でも多く参拝客を取り込もうとするし、一度来たのに来ないやつの夢に出たりとか祟ったりとかするのである。


 それ故に稲荷神社は簡単にふらりと来ていい場所ではないと言われているし、避ける人もいる。勿論個人経営タイプが全て良くないわけではない、個人経営でめちゃくちゃでっかくなった神社もあるのだ。


 さてこの説明を聞いてくれた諸君はもうお気づきだろう。

 今の俺の状況のヤバさを……。


(oh……どうしようか、もう縁とか出来てんのかねぇ。とりあえず参拝をしたら許してくれるかなぁ……俺何もしてないはずだけど)


(ていうか俺! ここ来たことねぇし! 記憶にないぞここ!)


 そう戸惑いながらも、覚えている限りの少し神社での作法マナーってヤツを活かして粗相の無いように気をつけながら参拝をする。


(ここは10円玉でいいか。5円はやめとこう……)


(あーあと、あれか挨拶でもしますか。あと許してもらおう)


 そうして俺は二礼二拍手をする。


(なんかよくわかりませんが許してください! なんかよくわかりませんが許してください! なんかよくわかりませんが許してください! あとモフモフな尻尾を生やした狐娘にどうか合わせてください! なんかよくわかりませんが許してください! なんかよくわかりませんが許してください! なんかよくわかりませんが許してください! なんかよくわかりませんが許してください!)


 少し雑念が混じったような気がするが気のせいだろう。

 そうして俺は一礼を済ませ、そこから立ち去ろうとした。


「おや、ぬしよもう帰るのかの?」


 という声が耳に届き、俺は驚きのあまり体を激しくビクつかせた。


「うわぁっっおう!」


 と、情けない声を出した。続けて様に俺は、声が聞こえたの方に顔を向けた。

 そこから人のようなものが姿を現す。


「驚かしてすまんのぉ。別に端から脅かすつもりでは……あったがのう」


(あったんだ。……いや待て待てそれよりもだ。その古風な喋り方。そして巫女服

、そしてそしてその耳と尻尾……まさか!)


「そうじゃ、ぬしが先程言っておった。狐娘というやつじゃよ」


 なんということであろうか! 俺は念願の狐娘に出会ってしまった。だがこれは本当に喜ぶべきなのだろうか? もしかしたらこれは波乱の始まりなのかもしれない……と、そう胸にトキメカせながら――。

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次回予告 美しい尻尾には毒がある

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