第37話 アントの大群
「第二波がきたぞぉ!」
俺達は第二波に備えて構えていた。
すると、地面が唸っているようなそんな音が下から響いてくる。
みんなが見る第一の入口はブラックアントで埋め尽くされている。あの大群がこちらに来るのか?
腕には鳥肌がたっている。あんな量のデカい蟻は気持ち悪すぎるだろう。埋め尽くすほどだぞ?
「うわぁぁ。気持ちわりい」
声に出したのはバカラさんだ。
「バカラさん声に出さないでくださいよ!」
「僕、昆虫苦手」
「苦手そうだもんな。アルト」
アルトも昆虫苦手らしい。俺と一緒じゃないかと少し嬉しくなってしまう。
「ワタクシもちょっと近づきたくないですわ」
「シルフィも? 意外とみんなダメなんですね」
俺がそう言うとコクコクとみんなが頷いていた。
「ワイはあんないきもんはおらんくなっていいと思うねん」
「まぁ、必要ないですよね」
キンドさんが極論を言い出した。相槌をうつとこちらを見る目がキラリと光った。
「せやろ? マセラ! 排除してきてや!」
「俺一人じゃどー考えても無理でしょ!?」
「あんたならできる。あんたならできるって」
「またでた。日本を救った某アニメの武田家家臣のおばあちゃん。わかりましたけど、みんなでやりましょうよ!」
大きな声でクランメンバーに訴える。
みんな眉間に皺を寄せてこちらを見ている。
いやいや。なんでそんな顔すんだよ。
「うるせえな! こっちまでアリンコが来たらな?」
────ドッッッッ
前の方で衝突する音が聞こえた。こちらのプレイヤーとブラックアントの大群が衝突したようだ。
「魔法師! 撃ってくれ!」
前から声がかかる。
「シルフィ! デカいのいけ!」
「わかりましたわ。零度砲三連発ですわ!」
飛んで言った先を見ると黒いものが凍りついてバラバラになりダメージエフェクトが溢れていることみてとれる。
魔法がどんどん着弾していきブラックアントがやられる度にそこをまたブラックアントが埋めるという無限ループに陥っている。
そんな戦いを二時間くらいした時にキリがないとみんなが痺れを切らした。
「おい! 絶対クイーンアントいやがるって! 誰か倒してこいよ! っていうかマセラ! お前行ってこい!」
バカラさんに無茶振りをされる。
「あの中から探すんですか?」
「この大群の一番奥に居るはずだ。飛べるお前ならすぐに行けるだろ?」
たしかにすぐに行ける。なにより早くこの蟻たちにはいなくなって欲しかった。
「わかりました! 行ってきます!」
空に跳躍してそのままトップスピードでアリの上を駆け抜けていく。たまに攻撃して数を減らしながら進んでいると最奥が見えてきた。
「おっ! あそこが始まりだ!」
その先には、クイーンアントが五体もいた。
背中からゾワゾワと気持ち悪い何かが這い上がってくる感覚に襲われる。ブルリと震えると歯を食いしばって駆ける。
「みんなの為にくたばれぇぇぇぇ!」
横並びに並んでいたクイーンアントを横からズバズバと斬っていく。クイーンアント自体は大して強くもないのですぐに始末できた。
その後が問題だった。
クイーンアントを殺したところを目撃したブラックアントが後ろを振り返ってこっちに襲ってきたのだ。
「なんのこれしき!」
右に一振り、左に一振り。振る度にブラックアントが吹き飛んでいく。俺はこの程度じゃとめられない!
「うぉぉぉぉ! ネムさんのためだぁぁぁ! きさぁぁまぁぁらぁぁくだばれぇぇぇぇ!」
全力で駆け抜けながら前にいるブラックアント達をバッタバッタとなぎ払いながらみんなのいる方向へと向かっていく。
周りを囲まれるが関係ない。邪魔になるブラックアントは次々と刀によって切り裂かれていく。それからまた一時間くらいずっと切りっぱなしだった。
「おい! マセラー!」
遠くのブラックアント越しにバカラさんが居た。シルドさんが盾で抑えつけながら殴りつけている。最早作業であった。
「バカラさーん! シルドさーん! クイーンアントは倒しました! もう増えませーん!」
「よくやったーー!」
「でかしたー!」
バカラさんとシルドさんがニコニコしながらこちらにやって来た。
「いやー。あの悔しそうなツラが面白くてよう」
「誰のですか?」
「そりゃ、二位の奴らだよ。なんだっけ?」
「『嵐の夜明け』ですか?」
「そうそう。マセラを見て悔しそうにしてやがんの」
俺は疑問だった。別にみんなでこの危機を乗り越えればいいじゃないか。なんで悔しいんだろう?
「その反応を見るに、お前ちゃんとイベントについて調べてねぇな?」
「えっ? ネムさんが助かればなんでもいいです」
「それがよぉ。このイベントで貢献したら貢献ポイントっつうのが隠れポイントで付くんだってよ。それによって報酬があるらしいぞ?」
それは初耳だ。そんなの書いてたっけか?
ネムさんを助けるためにって思って気持ちだけ高ぶらせてたからなぁ。
「それで、ですか?」
「あぁ。一位を取られると思ってんじゃねぇか? ギャハハハハ!」
「まぁ、自分は街を守ることができればなんでもいいですよ」
「ギャハハハハ! それでこそマセラだ! カッコイイじゃねぇか」
バカラさんは俺の肩を叩くと鼻歌を歌いながら元の位置に戻っていった。
気がついたらブラックアントは全滅していた。
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