第27話 レミエル
リハビリ帰りにインした俺は早速チュウメイに連絡してみたのであった。
『おう! どうした?』
ボイスチャットの呼び出しにすぐ出た。
「いや、しばらく連絡してないなと思ってよ。そっちはどんな感じだ?」
『あぁ。まだ天国の第三で止まってるよ』
「そっか。なぁ、このゲームに誘ってくれてありがとうな」
ちょっとしおらしく言ってみた。
『なんだよ! どうかしたのか?』
「いや、このゲームのおかげで人脈が広がって、私生活もいい方にいってるからさ。チュウメイのおかげだなと思ってよぉ」
『はっ! そうか? なら良かったよ。誘ったかいがあったってもんさ。極一突はマセラにとっては、いい出会いだったんだな』
「あぁ。ありがとう」
『良いってことよ。そうだ、どこまで行った?』
「今第二に進むところだ」
『はぁ!? まさか、天国のか?』
「そうだ」
『いやいや、速すぎだろうよ!?』
かなり慌てた様子でまくし立てるチュウメイ。
「すぐに追い越すぞ。じゃあな」
『ちょっ────』
何か言いたげだったが、ボイスチャットを切ってしまった。
まぁ大したことじゃないだろうから良いだろう。
天国の『極』に行ってみんなと合流した。
「よっしゃ! 今日は第二の攻略するぜぇ!」
「行こうや!」
「ここをクリアすれば、最前線であるな」
「僕、役に立てるかな?」
「大丈夫ですわ。斥候頼みますわよ?」
「行きましょう!」
それぞれが第二に向けて意気込んでいく。
第二は天国でも蜃気楼のような幻覚が見えるエリアだ。
気にしないようにすればいいのだが、この幻覚は触れる幻覚なのだ。
幻覚が実体化していて架空の生き物とかが出てきたりするのだ。結構厄介。ただ、攻撃すると霧散するので強くはないのだが、うっとおしいものなのだ。
「うおっ! なんか馬が飛んできた! マセラ!」
「はい!」
跳躍して切り捨てる。
こんな幻覚には笛が効果があるわけはなく。
天使は笛で落として一撃なんだが。
だから、スピードの速い俺に白羽の矢がたったのだ。一撃入れるだけということなら俺が適任だろう。
来るもの全て俺が叩き落としている。
たまに出てくる天使は笛で落としてバカラさん。
突進してくるものはシルドさんが盾で受け止めて消滅させている。
ここもそんなに難しいエリアではない。
少し時間は掛かったが、第二のエリアボスに到達した。
「我はレミエル。幻を魅せる者」
「おぉっと! また神々しい天使様のおなーりー!」
「笛を試してみます!」
────ィィィィィィィ
レミエルは少しふらりとしたが、体がブレたかと思うとレミエルが二人になった。
「ギャハハハハ! 分身しやがった!」
────ィィィィィィィ
笛を吹き続けると片方には効いている。
俺は狙いを定めて駆けた。
左だ!
刀を振るが当たる直前に分身されて躱された。
返す刀で再び切りかかるが後ろにいた分身が光った気がした。
咄嗟に転がる。
すぐ横をレーザーが通り過ぎていき、肝を冷やした。
「マジかよ。分身も魔法撃つの?」
一旦離脱してみんなの元に戻る。
「なんやあれ? 分身も魔法を撃つやん!」
「そうなんですよ。どうしましょう?」
二体は空を飛びながらこちらの様子を伺っている。
「僕が思うに、さっきの咄嗟に使った分身を含めた二体しか分身を出せないんじゃないかな?」
「なるほど。緊急用と常時出しておく用と二体までということであるな」
「そうそう」
アルトの考察は合っているのかもしれない。もしあっているのなら、同時に攻撃すればどうにかなりそうだな。
「シルフィ、魔法をあの分身に撃って! 俺が同時に本体を仕留める!」
「分かりましたわ!」
シルフィが狙いを定めて魔力を練る。
「行きますわよ! 零度砲!」
水色のレーザーが分身に向かって放たれた。
俺はそれと同時に駆け出す。
レーザーよりはスピードが劣るがいい勝負だ。
もう少しというところで分身が軌道を変えて避けようとしている。それに気づいた俺は咄嗟に射線に入った。
そして、刀の面でレーザーを受けて受け流し、分身のいる方向に軌道を修正した。
当たるとふんだ俺はそのまま本体を叩く。
────ィィィィィィィ
笛の力も使いながら襲いかかる。
これを使うと動きが鈍くなるのだ。
狙いやすくなる。
肉薄すると緊急用の分身を盾に出した。
「ここだ!」
俺はさらに踏み込んで分身には当身で対応する。それと同時に抜刀。天使を真っ二つにした。
ダメージエフェクトが溢れ出して消えていった。
残ったのはコアのようなもの。
「これもなんかに使うんですかね?」
俺がそれを見ながら言うと。
「知らねぇよ。持ってろ。よーっし。今日は引き上げ!」
そのまま天使エリアから引き上げて俺は現世エリアに下りる。みんなはなんだか遠慮していた。何故だろう?
「ちわー。ネムさん、今日も生姜焼き貰っていいですか?」
定食屋『膳』の引き戸を開けるといつも通り居てくれたネムさんにお願いしてみた。
「ふふふっ。マセラさんのお願いだから仕方がないなぁ。ちょっと待っててね?」
ニコッといつもの可愛らしい笑顔で俺をときめかせて奥に消えた。
少しすると湯気の上がっている生姜焼き定食がやってきた。
ご飯は大盛りである。
「いただきます!」
「召し上がれっ!」
その生姜焼きはまた美味しく、俺に対する愛を感じたのだった。
「美味しいです!」
「よかった。おかわりあるよ?」
こんな新婚みたいな会話ができるなんて幸せだ。
やはり俺の嫁はネムさんしか居ない。
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