第22話 こっちの笛か!
天国の第一エリアにクランメンバーと来ていた。
光属性に強いということで俺は以前獲得した漆黒の着流しを着ている。
そして、腰には笛を引っ提げやってきた。
このエリアには天使が敵として出てくる。
早速二体飛んできた。
なんか俺の思ってる天使とイメージが違う。
天使は能面で金髪、頭の上には輪っかがあり白い衣服を纏っている。手には黄金の槍を持っていてこちらを攻撃しようという意思がしっかりと見える。
神々しいようにも見えるが、なんか量産型っぽい。何処かで製造されているのかと疑問に思ってしまうくらい同じ容姿。
「さっそく、吹いてみます!」
────ブォォォオォォォ
そのまま突っ込んでくる。
「効果はねぇみてぇだな。飛ぶ為の器官とやらがねぇんだろうな」
バカラさんがそう分析する。
この笛は役には立たないようだ。
「責任をもって俺が始末します!」
「おう。やってみろ」
迫り来る天使にトップスピードでこちらも向かい、迫り来る槍を紙一重で避けて首を斬り裂く。もう一体も空中で首を斬り裂いて終わり。
天使たちは天使の輪っかを置いて消え去った。
「ドロップって天使の輪っかですか?」
「大抵はそんなもんだな。ただ、その輪っかの使い道もわからねぇんだよなぁ」
「そう、なんですねぇ。この笛じゃダメだったか……ん?」
俺は調べた時のことを思い出した。
自分のメモのウインドウを見る。
なんだこれ?って思ってたのがあったんだよな。
「どうした?」
「これかも知れません」
そこには『天にいる者を落とす笛』と書いてあったのだ。
「なるほどな。そんな笛もあったのか。それ、取りに行けるか?」
「はい。地図までメモしてあるので。今いってきます」
もう一回エレベーターで現世ステージに降りて製造街に行く。地図の場所に行くと黒い真四角の建物があった。少し不気味に思いながらも扉をノックする。
「なんじゃ?」
黒装束を着た仙人のような人が現れた。
「あの、天にいる者を落とす笛を作成していると聞いたんですが。あなたで間違いありませんか?」
「ホッホッホッ。ワシにたどり着いたのはお主が初めてじゃよ。ワシが作る笛は天使とやり合うなら必要になるものじゃ」
長い髭を撫でながらそう答える。
「やはり、必要なんですね。貰うことはできますか?」
「そうさな。ワシは奴らを倒して欲しいからのぉあげてもいいんじゃが、お主に渡す価値があるかどうか……」
そう言われてどうすればいいのかが分からなかった。一つ何に使うか分からないものがある。
「これなんですが……」
「ほう。この笛無しで奴らを屠ったのか。ふむ。渡していいかもしれんな」
まさかのこの輪っかが笛を貰うためのキーアイテムだったなんて。これが広まったらここにプレイヤーが殺到するぞ。
「ありがとうございます!」
この笛はシンプルなホイッスルのような形をしていた。それを受け取ると俺はまた再び天使ステージに戻った。
「戻りました!」
「どうだった?」
「この輪っかがキーアイテムでした。笛がなくても天使を倒すことが条件で笛が手に入るようです。ちょっと矛盾していますが、実力を示す必要があるみたいです」
「ギャハハハ! さすがマセラだ! もってるねぇ! よっしゃ! 再度攻略だ!」
「はい!」
クラン全員で再出動だ。
お決まりのように天使がやってきた。
俺は笛を吹いた。
────ィィィィィィィィ
音が聞こえないぐらいの高音が辺りに響きわたる。
「グオオオ」
「グゲエエ」
天使は雲の上に墜落した。あとは簡単だった。バカラさんがパンチ一発で終わり。二体葬った後にこちらを向いてサムズアップする。
「やったじゃねぇか! チョー楽だぜぇ!」
「こら、凄いもん発見したんと違うか!?」
「ワレが情報を売ろうかな」
キンドさんがすごいことだと褒めてくれたのは良かったが、早速情報を売ろうとしているシルドさん。
「凄いね。僕は斥候ぐらいしか出来ないから」
「ワタクシの出番が減りますわね。でも、温存できて良いですわね」
アルトとシルフィなんか平和でいい。
情報を売るとか……。
いくらで売れるかな?
ネムさんに教えてネムさんが情報を売ったりすれば稼げるんじゃないか?
「おい。マセラ?」
沈黙して考え事をしていた俺の事を怪訝な目で見るバカラさん。
「お前さん、まさか、ネムちゃんに情報を提供して売らせてあげようとか考えてないよな?」
「ギクッ……か、考えてました。ダメですかね? 実は定食屋の娘が情報屋でしたとか。カッコイイかなと思ったんですけど。メニューを聞いた時に『マセラのオススメは?』と聞くと情報が欲しいと言う意味なんですよ。どうですか!?」
「そんなことネムちゃんにできんのか? しかも、そんなことさせたら一番先に狙われるのネムちゃんになるぞ?」
俺は最大の間違いに気づいた。そうじゃないか。なんて危険なことをさせようとしていたんだ。全くネムさんのことを考えていない。ダメな男だ。
「バカラさん! 気づかせてくれてありがとうございます! 絶対しません! この情報はバカラさんが好きに使ってください!」
「はっ! 俺なら狙われてもいいってか?」
「えぇっ!? いや、そういう意味じゃ」
「ギャハハハハ! からかっただけだ! よっしゃ! これから怒涛の如く攻略するぞ!」
ここか極一突の前線を押し上げる快進撃が始まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます