夕方の二人きりの教室での百合の話

畳アンダーレ

第1話

「さあ答えなさいっあんたにそのっ……恋人ができたんだって!?」


放課後。外のグラウンドから運動部の元気な声がわずかに聞こえてくる。夕焼けでオレンジ色に照らされた二人きりの教室の中で、あたしはあの子を問い詰めていた。


「ふふっ……それ、どこから聞いたの?」

「なによその余裕ぶっこいた態度はぁっ!?」


こいつは机の上に座って冷静に、目の前でキバをむいて威嚇するあたしをいなしていた。いやいや! あたしはいなされてなんかないんだからっ! 髪を指でかき上げるのはやめなさい! そんな綺麗な指先とうなじを見せつけてもあたしの方が綺麗なんだからねっ。


「そんなに大きな声を出さないで欲しいわ。あなたの大きすぎる声が校舎全体、いやグラウンド、いや街全体まで響き渡るわよ?」

「んな大声出せる訳ないでしょぉおお!」


あたしはぶんぶんと腕を振ってからビシっと目の前で冷静に足を組んでいるこいつを指さした。


「あんたとあたしはずっと勝負してきたわよね」

「ええ。どんな時もね。勉強も、部活も」

「あんたが満点を取ればあたしも満点を取って。大会で優勝すればあたしも大会で優勝して」


毎日毎日、あたしの頭にあるのはこいつとの勝負だ。それはきっとこいつも同じのはず。あたしはこいつと初めて会った時からずっと、勝負しつづけたんだ。


「それに発育だってね。私はIカップになったけど、あなたはどうなのかしら? まだH? それとも前回と一緒でG止まり?」

「ふんっ。バカにしないで欲しいわね? 私もIカップよ。」


腕を組んで胸を持ち上げる動作をして、あたしを煽ったこいつの動きが止まった。顔も硬直している。発育の勝負は引き分け。ふふんっ勝った時ほどじゃないけどこんな風に勝負の結果に悔しがるこいつの様子を見るのがやめられないのよねっ!

あたしはこいつに見せ詰めるように、自分の胸を張ってから腕を組んで胸を持ち上げた。


「……こんなに大きくなったせいで、付けられるブラの種類が少なくなったわ。誰かさんとバストサイズで勝負をしているせいで。」

「あによあたしのせいだって言うの? あたしだってもういっそのことサラシでも巻いてやろうかと思ってんのよ!?」


こいつはやれやれと言わんばかりに目を細めてふぅっとため息をつかれた。吐息があたしの顔にかかった。くぅぅぅ……なんでこんなに余裕なのよぉぉぉ!!


「そんなに真っ赤になってどうしたの? 私に聞きたいことがあったんでしょう?」

「そっそうよ!」


私はこいつの肩を掴んで机の上からおろして立たせた。忘れそうだったけど、あたしはこいつに聞きたいことがあったんだった!

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