第3話 回復
その後も、定期的に皮膚の移植手術などが続き、体を固定され、動けない日々が続いたが、4ヶ月が過ぎたころ、やっと、固定バンドも外され、動けるようになった。ただ、ずっとベット生活が長くなったせいか、起き上がったり、歩いたりする筋力はなく、抱えられて、やっと動くのがせいぜいだった。
「看護師さん。僕のあれ、なくなっちゃったけど、どうして。潰れちゃったの? 切れちゃったの? なんか、割れ目があって、変な形になっている。もう元に戻らないの?」
「あれって、なんのこと? 運ばれてきた時から、傷はあったけど、なくなったとか、何言っているの?(先生から、絶対に言うなと言われているから、これはとぼけるしかないわ。ここの給料は通常の3倍だから、クビにならないようにしないと。)」
「そんなはずないよ。僕は男の子なんだよ。こんな姿じゃなかったんだ。」
「そんなことないでしょう。女の子でしょう。なんか混乱しているんじゃない。」
「混乱しているなんて。そんなはずはない。どうして。」
<看護師の守護霊再びだが、そんなこと言わずに、どうなるか楽しませてくれよ。この子だって、短かったけど男で暮らし、今後は女で暮らせるって、両方楽しめるんだから、いいじゃないか。逆に、嘘言わなければいけない看護師はかわいそうだと、思えないかな。看護師だって、長時間労働、パワハラと、毎日大変なんだし、家族を養って大変なんだよ。>
<そんなこと、この看護師の勝手じゃない。長時間労働、パラハラだって、この子もせいじゃないわ。文句ならドクターに言いなさい。それより、あなたは看護師の守護霊なんだから、本当のこと言えって、頭の中で呟きなさないよ。>
<看護師がそんなこと言ったらクビになって、美味しい物が食べられなくなっちゃうから嫌だよ。>
<自分勝手なんだから。でも、隆、やっと、気付いたの。遅いわよ。あなたのあそこ、切られて捨てられちゃったんだよ。まったく。でも、割れ目って、その部分、ごっそり入れ替わっただけだから、傷じゃなくて、女の性器よ。確かに、女の性器って見たことないだろうから、傷痕って思うのも分からないでもないし、もともとがグロテスクだから、変な形っていうのは賛成だけど。あとは、神経とか、尿道とか、しっかり体にくっつくかだね。無理して、体ひねったりするんじゃないよ。
でも、食べ物とか食べられるようになったのは、一歩、前進ね。>
事情が全くわからない中で呆然とする隆だった。そんな中でも、リハビリは続き、たどたどしく歩けるようになったのが、更に3ヶ月ぐらいかかった。
「やっと、普通の暮らしはできるようになったね。まだリハビリは続けた方がいいし、これから何が発症するかわからないから、しばらく、この部屋で過ごしてもらい、検査とか続けるね。でも、語学の先生は褒めてたよ。ギャガ語、英語、中国語の習得が早いって。もう、どの言葉も日常会話はバッチリだと言っていた。僕の話しもわかるよね。」
「ああ、わかる。でも、日本に連絡したいんだけど、どうすればいい?」
「ごめん。この国では、外国との連絡はできなくて、検査とかしなくてよくなったら、日本大使館とかに相談してみよう。(もう、お前は死んだことになっているんだから、連絡はさせないよ。)」
「え、そうなんだ。もう少しだね。」
「そうそう、早く治さないとね。」
<でも、人体実験やめられないというドクターの気持ちはわかるな。守護霊の俺も楽しませてもらっている。男を女に整形するということはよく聞くけど、体の中から女性ホルモンで体を変えて、子供もできる女にするなんて、普通じゃ、考えないもんな。本当に、面白いことをやるよな。神様を超える天才じゃね。>
<やられる人の身になって考えてよ。この子が女になっちゃうと、もうこの世の中にいない人になっちゃうんだから、この子の人生、めちゃくちゃなのよ。>
<そんなこと、俺の知ったこっちゃない。お前も興味はあるだろう。>
<とんでもない。せっかく、男性の人生を味わえるって楽しみにしていたのに、だいなしよ。でも、隆も、そろそろ、このドクターは嘘つきだって気づいてよ。日本大使館との連絡なんてさせてもらえるはずがないじゃない。本当に、人を疑うことを知らない子ね。まあ子供なんだけど。
そもそも、ここまで回復したら、大使館だって行けるし、その気があれば、大使館に連絡して、職員に来てもらえばいいんでしょ。そのぐらい、子供でも気づくもんだけど。本当に、どうしょうもない子。
そういえば、このドクター、あたなを売春宿に売り払うとか言ってたわよ。もしかしたら、薬漬けにされちゃうかもしれない。そうなったら、長生きできないかもしれないじゃない。あなたと私は一蓮托生なんだから、しっかりしてよ。
でも、この子の中にある子宮、少しづつ動き始めてきたわ。どうなるの?>
<売春宿に売った後、男のおもちゃにされて、この子の心が壊れていくのも見ものだな。売られちゃうと、俺には見えないが。>
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます