第二の闇魔法
ドラゴンを覆っていた光が消え、その姿があらわになる。
「黒い…ドラゴン」
「かなり小さくなったようです」
「あぁ、赤いドラゴンよりも小さいくらいだな」
黒光りする鱗に覆われ、体が引き締まったのか先ほどよりニ回り小さくなっている。
「魔王様、これは先程のドラゴンよりかなり強いとして、何か打つ手はおありですか?」
「正直言って今倒すのは無理だと思う」
「では、撤退を?」
「いや、姫にああ言った手前それは嫌だ」
シャゼルと話していると黒竜が閉じていた目を開き咆哮を上げる。
「ゴアアアアアアアア!!」
手始めと言わんばかりに尻尾を振り回す黒竜。
「ぐああ!」
すさまじい衝撃と速さの攻撃だ。避けることが叶わず喰らってしまう。
ドラゴンの攻撃を右腕で受ける。俺がまだ弱いってのもあるだろうがそれにしても攻撃力が強い。
とことん右腕はついてないみたいだ。簡単に折れてしまった。
「魔王様!今回復を!」
すぐさまシャゼルが駆けつけ、右腕に回復魔法をかける。
「魔王様!回復魔法は当分使えません!致命傷だけは避けてください!」
そう言って上空へ飛びたつ。
「これは使いたくなかったんだけどな」
シャゼルを召喚してから使える魔法がもう一つ増えた。
闇魔法ダークタイム。簡単に言うと封印魔法である。込めた魔力の分だけ対象の時を奪う、時空魔法にも似た魔法だ。
問題は魔力の残量だが、先ほど目眩しに使ったデスファイアで4分の1ほど魔力を消費した。
主従契約をした配下と俺の間で魔力の受け渡しが可能である。なので少しでも封印時間を長くするために魔力が欲しいところだがシャゼルは最後の一絞りも俺に使い果たした。
となると姫だが、無いよりはまし、か。
「シャゼル!1分もたせろ!」
「では、一吸いだけ許可を!」
「許可する!」
シャゼルがドラゴンの攻撃の間を縫い俺の元へ、俺は顔を倒し首元を晒す。
「失礼します。」
俺の首に犬歯を立て血を啜るシャゼル。
吸血鬼であるシャゼルは血を吸うことで体力が回復する。俺に血を求めるくらい限界だったみたいだ。
「魔王様、本当に1分ですよ!」
「わかってる!」
シャゼルが黒竜の方へ飛び立つ。俺は姫の元へ急ぐ。
「姫!手をつないでくれ!」
「手、ですか?そ、そんなの今じゃなくてもいつでも繋ぎますから!」
キョトンとした顔から少し顔を赤らめる姫。
「そうじゃなくて!いいから!」
「え、あ、うぅ」
埒が開かないので無理やり手を繋ぐ。うん、少し照れるな。
「魔力を手のひらに集めてくれ」
「魔力を、ですか?」
「ああ、そうすれば姫の魔力を受け取ることができる、頼む!急いでくれ!」
「は、はい!」
姫の手から魔力が俺に流れてくる。
魔力を受け取りながらシャゼルの方を見る。
「まずい、攻撃を避けきれなくなってきている!」
「リドウ!もう魔力切れですぅ!」
「よし!行ってくる!」
自分の魔力残量を確認する。まあ姫は能力値200ぐらいだったからな。主従契約で能力が倍近くになっていたとして400ほど。あまり期待はできないだろう。
と思っていたが、なんと魔力が先程までの倍近く感じる。
姫の能力値からしてそんなに魔力があるわけないんだが、何かあるのだろうか?
どちらにせよ今はそんなこと考えてる場合ではない。
「シャゼル!!待たせたな!」
「まおっ、さま!」
満身創痍といった具合だ。飛んでるのも辛そうだ。
「俺の後ろに!」
シャゼルが黒竜から離れる。
「ゴアアアアアアアア!!」
次はお前かとでも言いたそうな目だ。うん、今は勝てそうにないからな、戦うのはまた今度にしようじゃないか。
「ダーク・タイム!」
両の手のひらを黒竜に向けて闇の封印魔法を放つ。
黒い波動が螺旋を描き黒竜へ向かう
黒竜は咆哮を上げたまま青白く凍ったように動かなくなった。
「成功だ!」
「魔王、様。ダークタイムは、どのくらい持つのですか?」
息を整えながらシャゼルが問いかけてくる。
「50日くらいってとこかな」
「そうですか、その間になんとしても次の配下を召喚しないと、ですね」
「あぁ、そうだな。よし、姫のところへ行こう」
「はい」
その後、姫へ封印魔法について説明して先程の広場を封鎖してもらった。
そして現在は王城にいるのだが。
「姫様!またしても危険な場所へ行くとは!」
「そうです!何事もなかったからよいものを!」
「そこの失敗勇者!何かあったらどうしてくれる!」
臣下達が口々に姫に叱咤し、俺を責め立てる。
うん、臣下達の中では俺はリーダー兵クラスで止まっているんだもんな。そりゃ怒る。
「リドウは失敗なんかではありません!事情があって実力が出せなかっただけで!」
「ですが、こやつは能力値600!リーダー兵クラスが実力を隠したところで」
「測定魔道具をこちらへ!」
姫と臣下が言い合っている。失敗勇者の俺は黙っているとしよう。
「いいでしょう!姫様!もしもこやつが勇者の最低ラインである能力値2000を超えるのであれば私はもう文句を言いません!」
「私もそれで構いませんぞ!」
臣下達が賛同し始める。うん、2000なら大丈夫だろう。
使用人らしき男が測定魔道具を持ってくる。
「リドウ、皆さんをギャフンと言わせてください!」
「あぁ、2000は超えてると思うからな」
「ふん、召喚時600だったのは周知だぞ!」
そうだ、そうだと周りの声。よし、姫の言うとおりギャフンと言わせてやるぞ!
皆が見守る中魔道具に手をかざす。
「測定結果、1980…です」
姫が測定結果を読み上げる。
「…」
「…」
全員がシーンとしている。恥ずかしいんだが。
「あー、この結果で俺が言うのもなんだが、俺がいなければあの黒竜は止められていない」
「そ、そうです!能力値もほぼ2000です!そう、もはや2000です!」
姫がフォローを入れてくれる。…2000超えてなくて本当に申し訳ない。
「わかりました。そちらの男を勇者と認めます」
「ただし、あの黒竜を倒したらば必要な支援を行います」
「そんな!あの黒竜を倒すためにも支援が必要なのです!」
「すみません、姫様。他国も勇者召喚を行ったみたいでして。そちらからも支援要請があり…」
「自国の勇者より他国の勇者ですか!?」
「ですから、黒竜を倒した暁には勇者としての支援を行います」
「もういいです!行きますよ、リドウ!」
「あ、あぁ」
憤慨している姫に連れられシャゼルの待つ客室へ。
「ごめんなさい、リドウ」
「いや、謝るのは俺のほうだ。1980 …」
「そ、それはともかく、体力が回復次第すぐ出発しないと」
「ということは魔石について心当たりがあるのですね」
シャゼルがお茶を持ってきながら口を開く。
「はい、我が国、西国と東国の境にある火山の頂上に魔石持ちの魔物がいると臣下の1人がおしえてくれました」
「あの感じだと教えてくれもしないと思ってたが」
「臣下達も黒竜を倒してほしい筈ですから、情報くらいはということでしょう」
つまり、目指すは国境の火山だな。
色々と考えなきゃいけないな。
ダーク・タイムを発動している間は一切の魔法を使うことができない。つまり、魔法なしで魔石を集め黒竜の封印が解けたと同時に召喚魔法を行わなければならない。
とりあえず魔法が使えないから最低限の武器がいるな。
意識が遠のいていく。目をつむり身体を休めるとしよう。
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