第6話 剛速球でキングオーク粉砕!

 サマンサが呼びかけても遅かった。ローガンはそのままキングオークの棍棒で吹っ飛ばされる。

 スネイル、ローガン、ともに木の幹にぶつかってそのまま倒れこんだ。二人とも戦闘不能だな。


「そんな……支援魔法もかけたのに」


「ぐるうううううううう!」


「剛一さん、早くあの人達を!」


「さっきも言っただろ、あいつらの自業自得だ。無理せず逃げればいいものを……」


「確かにあなたの言う通りかもしれません。でも私は、目の前で殺されそうになっている人を放っておけないんです!」


「おい、セリナ!」


 なんとセリナが前へ飛び出した。サマンサよりも前に出て、敢然とキングオークの前に姿を現した。


「ちょっと何やってんの!?」


「私があいつを引きつけます! その隙にあの二人を治療してください」


「……無茶言わないで、あなたに何ができるって言うの?」


「できます。安心してください!」


「ぐがぁあああああ!!」


 まずい。キングオークがセリナを標的に捉えたようだ。


「……私だって!」


「セリナ!」


 俺は咄嗟に彼女の後ろから肩を掴んだ。


「剛一さん?」


「全くお前という奴は。姉に似てるな……」


 さすがに彼女を危険な目にあわせるわけにはいかない。やるしかないな。


「私の姉さんを知ってるんですか?」


「ぶるああああああ!!」


「話はこいつを片づけてからな。下がっていろ」


 俺がセリナの前に飛び出した。キングオークは俺を見下ろす。間近で見ると、さらにデカいな。


「ちょっと、あなた!」


「さっさとあの二人を助けろ、今ならまだ間に合うぞ!」


「いや、あなた一人では……支援魔法を」


「必要ない。いいから、さっさと助けろ!」


「無茶よ! スネイルとローガンも一撃でやられたのよ。自殺行為だわ」


 全く心配性な魔道士だな。俺の実力も低く見られたものだ。


「サマンサさん、あの人を信じて。大丈夫ですから」


「あなたまでそんなことを!」


「ぶるああああああ!!」


 キングオークはお構いなしに突進してきた。巨大な棍棒を俺の頭上に振り下ろしてきた。


「ゴーイチ!!」


「……よっと。随分いい棍棒だな」


「ぐぅ!? ぐお……?」


 俺は左手で棍棒を支えた。触ってみた感じ、なかなかいい武器だ。重量感といい硬さといい、申し分ない。

 この手の棍棒は俺にピッタリな武器だ。だけど少しデカすぎるな。いつを片づけたらピッタリな大きさにカットしよう。


「……え? そんな……」


「ね? 言った通りでしょ?」


「お前なら的当てにちょうどいいな」


 こいつの巨大さと頑丈さなら、さっきの小石の投球がちょうどいい。無防備となったどてっ腹に、小石を全力で投じた。

 小石が腹に直撃した瞬間、大きな爆発が起き、オークはそのまま後ろへ吹き飛ばされた。


「ごわぁああああああああ!!」


 巨大な図体が地面に投げ飛ばされる。オークは倒れ込み、動かなくなった。

 ダメージの深さが気になるから、近づいてみた。


 さすがはAランク魔物だけあって、さっきのオークみたいに跡形もなく吹き飛ぶことはないな。

 しかし腹部の鎧は完全に粉々になり、内臓やら骨も外に飛び出して滅茶苦茶な光景だ。これはセリナには見せられないな。


「倒したぞ。早くあの二人を助けろ」


「あ……私がやります」


「お前、治癒魔法使えたのか?」


「はい、一応は」


 セリナが倒れていたスネイルに駆け寄り、しゃがみ込んで魔法を唱えた。本当に治癒魔法が使えるんだな、でもこれで安心だ。


「サマンサ、もう片付けたから安心しろ」


 サマンサを見ると、口を開けたまま固まっていた。


「サマンサ!」


「……あなた……今のは……一体何をしたの?」


「小石を投げただけだよ。それよりお前はローガンを治療しろ、少女にだけ負担掛けさせるなよ」


「こ、小石……?」


 サマンサは未だに何を言っているのかわかっていない様子だ。でも、ついに考えるのをやめたのか、頭を振ってローガンのもとへ駆け寄った。


「……まぁ、俺のスキル、いや俺だけのスキルだからな。理解できなくても仕方ない」


「おめでとう。あのキングオークの討伐報酬はでかいわよ」


「な、女神か!?」

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