第三幕 陽魔天王 ミリシウス・エルロード
南方の地にて、静寂とは程遠い世界が広がっていた。
そう今現在人類の存亡をかけた戦いの真っ只中である!
南の国、メーデル王国の前哨基地に攻め込まんとする一人の大きな片翼の天使が舞い降りた。その手に握りしめられたハルバード。その名も神剛斧を、持ち構え横薙ぎ一線を繰り出すと神風斬撃が放たれ、前哨基地は横真っ二つに割れた。
その大技繰り出した直後に配下の魔族たちは次々と攻め込み、間もなく陥落した。
この大技を繰り出した人物こそ!大魔王軍所属四大魔天王が一角!
陽魔天王 ミリシウス・エルロード その人である。
その顔は鉄仮面にて口より上は隠され、赤い髪の持ち主であり。
そのオーバーすぎるサイズの純白の大翼を片翼だけ持つ。
金と銀の混じった鎧を着込んでいる。
彼は四大魔天王以外に別の称号を有している。その名も「太陽王」である。
これは彼が、かの神話に出てくる三つ子のデミゴットの一人であることの何よりの証明であり、彼の種族はデミゴットなのだ。
亜神とも呼ばれるデミゴット。その力はたとえ魔王軍に与することになっても衰えることはなく堕ちることもない。未だ健在、そこにこそ正義と勝利があると言われているようなものである。
彼の配下たちに太陽王がどのような人物か調査をしたところ、彼は寡黙であるがそこには信頼とカリスマ性があり、私達にとっては本来敵対するはずの存在にも関わらず尊敬と畏怖の念が尽きないとのこと。仮面の下の顔を見たことはないようだが、その下にある口元や顎の骨格からしてかなりの美青年であるとその道のプロは語った。
なぜ彼が魔王軍に与したのかは未だ誰もその真実を知らない。
そうこうしていると彼は一度前線を離れ、拠点である居城へと戻ったのだった。
その後、彼の部下達は陥落した前哨基地の後始末をしている
「いやぁー今日の我らが太陽王の斬撃見たかよ!」
と興奮混じりに話し出す鎧ゴースト
「あぁ、あの斬撃はいつ見ても痺れるねぇ。流石はデミゴット、俺たちとは住む世界がまるで違う。」
と返答する炎の精霊
「俺も生きていたときに遭遇したら、どんな顔になってたのかなぁ。がははは」
といつもの「もし生きていたら」ジョークを繰り広げる鎧ゴースト
「おいおい、お前の人間時代なんて知ったこっちゃねぇよ!」
といつもの調子で返す炎の精霊
「た、たすけてくぇ,,,誰かぁ,,,」
とどこからか声が微かに聞こえてくる。人間のようだ
「ん?おい誰かなんか言ったか?」
と反応する鎧ゴースト
「ああ確かになんか聞こえたような,,,もしかして人間でも生き残ってんのか?」
と訝しむ炎の精霊
「ナイナイ!あの斬撃だぞ!あれで運良く生き残れるもんかよ」
とその可能性を否定する鎧ゴースト
「た、たすk...ぐげぇ!!」
ととどめを刺され息絶える音が聞こえる
「お前らァア!まだ生き残りが居たじゃねぇかよ!」
と怒声が響き渡る。声の主は部隊長のナイトゴーレムだった
すぐ側に居た二人は急いで謝る
「すッすみませんでしたァ!」
「たくッさっさとまだ使えそうな物資等々収集し、生き残りは駆逐しろォ!!」
「イエス!マム!」
と元気よく返事をした二人はセコセコと働き出す
すると別の方向から彼の部下がやってくる
「隊長!先程、大魔皇王様の使者よりミリシウス様への招集状です!ミリシウス様にお届け願います!」
「アァ?なるほどなぁわかった。今すぐ届けてくッからよ。さっさと後始末すませろよ」
「ハッ!お気をつけて!」
ーーー居城にてーーー
ミリシウスは自室へ入る。そうして彼はそのままソファをへと向かい神剛斧を立てかけ、そのまま座る。
「はぁ〜...うまく喋れない....喋ろうと思っても声が出ない。このままじゃ、部下が離れていくよぉ....」
「うぅぅ〜...昔はもっと話せたんだけどなぁ...」
そう彼は元々好青年でコミニュケーション能力も高く、太陽のような輝きを常に放っていた。しかしある事件がきっかけで人間不信となり、他人を信じること会話することにストレスが掛かり、自分の心を閉ざしきった生活を送っているが魔王軍の四天王としての事務作業もこなさねばならず。日の下に照らされるのも嫌になるようになった。それ故彼の外での活動時間は非常に短いのだ。
そうして今の彼は今日の自分の発言が不適切だったのではないかと思い悩む。
という反省会を行っているのだ!
「あの前哨基地を落としたあとは....何するんだろ..メーデル王国本土決戦か?」
「大魔皇王様の指示を待たないとなぁ...一応聞いた話だと、牽制行為も兼ねてるんだっけ?...まぁいいか...それよりも」
といい彼はソファー下の隠し扉を開く
「これこれ、疲れた脳みそにはこのへそくりチョコレートがいいんだよなぁ」
そういい彼は箱を取り出して、チョコレートを食す。丁寧に味わい深く。
「そういえば、他の兄妹は何してるのかな?200年前に兄さんは荒廃した世界の攻略...もとい解決に向かったような。妹は....何してるんだろ」
デミゴットである彼らは使命や宿命を課されることが多いのだが、彼はそれを逸脱し放棄した。ちなみに彼の兄は明喰王と呼ばれ、妹は月光王と呼ばれている。
ゆったりと寛いでいる時に扉を叩く音が聞こえる
「ミリシウス様、私です。部隊長のカーデルです。大魔皇王様の使者より招集状を賜り、お届けに参りました。」
ナイトゴーレムのカーデルのようだ。
ミリシウスは少し慌て菓子の箱を机の下にそっと隠し、扉を開ける
「..............ご苦労」
と少し小さめだが聞こえないほどではないの声量で労う
「ハッ!では自分は持ち場に戻らさせていただきます!」
活気のあるとても響く大きな声ではっきりと言い去っていった。
「・・・・・」
「・・・また何も言えなかった。・・・気ぃ悪くさせたかな........」
そうして彼はまた落ち込むのだった。
「にしても招集か....あぁ報告会か...ぅうぅ...ちゃんと話せるかな」
「ボースさんあたりにキレられないかな...」
と胃に穴が開く思いで扉を閉めるミリシウスであった。
完
よろしければ感想とかレビューをくれええええ!!!!!
励むお!!!
次回予告 竜魔天王 シシルゼア・ローリンガル
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