すね毛のシンデレラ

mimiyaみみや

第1話

「あら、タケルちゃん、レギンスからすね毛が出てるわよ。やぁね。」

「きゃ。ごめんなさい。」

「あなた、一年中レギンス履いてるけど、すね毛は処理してないの?」

「ごめんなさい。」

「いいのよ。面倒だものね。でも、お客様には見せないようにね。」

「はい、ママ。あの、実は私、すね毛は剃れないの。」

「うふふ。どうして?」

「すね毛を剃ると、次の日は高熱が出ちゃって。」

「あら、そんな理由が。」

「剃ったその日はいいんですけど、どんなに厚着をしても、すねから寒さが登ってきて、熱がでるの。」

「そうだったの。それは大変ね。」

「だから、レギンスで隠すしかなくて。」

「いいの、いいの。タケルちゃん、いつも綺麗にしてるから、ビックリしちゃっただけよ。ね、もしかして、この前お店休んだのも、その理由?」

「ええと、はい。」

「うふふ、前の日は前川さんとデートだったんでしょう?」

「どうしてそれを?」

「タケルちゃん、分かりやすいからみんな知っているわよ。」

「ご迷惑をおかけしました。」

「ううん、タケルちゃん真面目だから、たまにはいいのよ。前川さんには次の日面倒見てもらったの?」

「そんなことできないわ。熱が出るってわかっているから、私、一度だって彼と朝を迎えたことないの。」

「あら。ごめんなさい。でも、前川さんならわかってくれるんじゃない?」

「嫌よ。彼には楽しいまま帰って欲しいから。そういうのは諦めているの。」

「そう。まあ、オカマなんて叶わない恋をしている方が多いわ。」

「私、オカマで良かったわ。だって、失恋して当たり前でしょ?」

「寂しいこと言わないで。」

「ううん、彼とデートして、次の日熱を出して、夢うつつでデートの反芻をする時間、嫌いじゃないのよね。例え彼とは一晩しか会えなくても、私は幸せよ。」

「うふふ。まるで一夜で魔法が解けるシンデレラね。」

「やぁね。すね毛の足じゃガラスの靴は似合わないわ。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

すね毛のシンデレラ mimiyaみみや @mimiya03

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る