第20話 雨の中

どうやら寝ている間に着替えさせてくれた人がいるみたいだが、一体誰がやったんだろうか?

まあいいか、とりあえず今は気にしないでおこう。

それよりも、まずは現状を把握することが先決だろうからね。

そんなわけで、周囲を見回してみることにしたんだが、そこは森の中にある小屋のようで近くには川が流れているのが見えたんだが、

それ以外のことはよく分からなかったな。

ただ、ここがどこなのかということについては大体予想がついたので、おそらくここは俺が元いた世界とは別の世界なんだろうということはわかったんだが、

そうなると元の世界に戻る方法を探す必要があるわけで、その為にも色々と情報を集める必要があると思うんだがどうだろうか?

そう考えた俺は、まず手始めとして近くにある街に向かうことにしたんだが、

その前に持ち物の確認をしておくことにしたんだ。

といっても、ほとんど何もない状態だったから確認できたものといえば、ポケットに入っていたハンカチくらいなものだったんだが、

それでも何も無いよりはマシだろうと思い、持っていくことにしたんだ。

それからしばらく歩いたところで、ようやく森を抜けることができたんだが、その先にあった光景を見て思わず息を呑んでしまったよ。

なぜなら、目の前に広がっていた景色というのがあまりにも美しかったからだ。

その光景はまるで絵画のように美しく、それでいて幻想的な雰囲気を漂わせており、見ているだけで心が洗われるような気分になったんだ。

そして、それと同時に自分が今どこにいるのかということも理解できたんだ。

何故なら、目の前にある大きな湖の中心に浮かぶ島の上に立っていることがわかったからである。

つまり、この湖こそがこの世界における最大の都市であり、

王都と呼ばれている場所であるというわけだな。

そこまで確認したところで、俺はこれからどうするかを考えることにしたんだが、ひとまず情報収集が必要だと思ったので、街の中に入ることにしたんだ。

幸い、門番らしき人物が立っていたので話しかけてみることにすると、最初は警戒されてしまったものの、事情を説明したところ快く中に入れてくれた上に

地図まで書いてくれたおかげで迷うことなく目的地へ向かうことができたんだ。

ちなみに、この世界の通貨を持っていないことを伝えると、代わりに冒険者ギルドの場所を教えてもらえたので、

そこで冒険者登録をするといいと言われたので行ってみることにしたんだ。

「ようこそ、冒険者ギルドへ!」

受付嬢と思われる女性が笑顔で出迎えてくれたんだが、その様子を見る限りでは悪い人ではないように思えたよ。

なので、安心して話を聞くことができそうだと思って安心したよ。

早速、用件を伝えることにしたんだが、どう切り出せば良いのか迷った挙句、単刀直入に聞いてみることにしたんだ。

すると、それを聞いた彼女は一瞬驚いた様子を見せたものの、すぐに笑顔に戻ると丁寧に対応してくれたおかげで助かったよ。

それから、無事に手続きを終えることが出来たので、これで晴れて俺も冒険者の仲間入りを果たすことが出来たってわけさ。

それからというもの、毎日のように依頼を受けて達成することで少しずつではあるが着実に実績を重ねていくことに成功していった結果、

今ではすっかり有名人になってしまったわけだが、それもこれも全てはエルナさんのおかげだと言えるだろうな。

彼女との出会いがなければ今頃どうなっていたことか……想像するだけでも恐ろしいぜ。

そんなことを考えているうちに、いつの間にか日が暮れようとしていたことに気づいた俺は、そろそろ帰ろうかと思って立ち上がったその時、

突然声をかけられたような気がしたので振り返ってみると、そこにいたのはなんとエルナさんだったのです。

まさかこんなところで会えるとは思ってもいなかったので驚いてしまいましたが、それ以上に嬉しかったですね。

だって、憧れの女性とこうして直接話すことができる機会なんて滅多にないですから、だから、緊張しつつもなんとか挨拶を交わすことに成功したんですが、

その後はお互いに黙り込んでしまって気まずい空気が流れる中、先に口を開いたのは彼女の方でした。

「あの、実はあなたにお願いしたいことがあるのですが、聞いてもらえますか?」

と言われてしまったので、断るわけにもいかずに承諾することにしたんです。

そうして連れてこられたのは、とある建物の一室でしたが、そこで待っていた人物が誰なのかを理解した瞬間、驚きのあまり声が出なくなってしまいました。

何故なら、そこに立っていた人物は、かつて俺を追放した張本人である勇者パーティーの一員だったからです。

どうしてこいつがここにいるのかと疑問に思っていると、それを察したかのように彼女が説明してくれました。

なんでも、彼は俺の後を追ってきたらしく、どうしても謝りたいと言って聞かなかったらしいのだそうですが、

正直言って今更謝られても困るというか、むしろ迷惑でしかないんですよね。

それに、

「今さら謝って済む問題じゃないことくらいはわかってるつもりだが、それでも言わずにはいられなくてね……本当にすまなかったと思っている」

などと謝罪の言葉を口にする彼に対して、俺は何も言えませんでした。

というのも、彼の目が真剣そのものだったからだということもあるのですが、何よりも彼が本気で反省しているように見えたからなんです。

だからこそ、余計にどうしたらいいのかわからなくなってしまったんですよ。

これがまた困ったものでして、結局その日は解散することになったんですけど、帰り際に彼からこんなことを言われてしまいました。

「もしよかったら、今度一緒に食事でもどうかな?もちろん、僕の奢りで構わないからさ……」

そう言われて断れるはずもなく、渋々了承してしまったわけですが、

「ありがとう!それじゃあ、また明日ここで待ち合わせしようじゃないか!」

そう言って嬉しそうに去って行く彼を見送ることしかできなかった俺だったが、正直なところあまり乗り気ではなかったんだよな。

だってそうだろう?

かつての仲間とはいえ、一度は裏切った相手なんだから信用できるはずがないだろう。

それなのに、あいつはそんなことお構いなしとばかりに誘ってくるんだぜ。

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