第19話 女騎士
遂に、この時がやってきたか……。
よし、頑張るぞー!
俺は気合いを入れて準備に取り掛かったのだ。
とは言っても大したことをするわけじゃないんだけどね。
荷物をまとめるくらいのものだし簡単な作業さ。
ただ、量がかなり多いせいか時間が掛かってしまったけど無事に終わったので良しとするべきだろう。
あとは、移動用の馬を用意して出発するだけだ。
目指す場所は決まっているので迷うことはないはずだしな。
それじゃあ早速行くとしようかね〜。
待ってろよ王都、必ず辿り着いてやるから覚悟しておけよな……!
そんなことを考えながら意気揚々と歩き出した俺だったのだが、そんな時に不意に声をかけられた気がして
振り返るとそこには見覚えのある姿があったんだ。
そこにいたのはなんとシルフィー達だったのである。
「どこへ行くつもりなのかしら?」
と言われた瞬間、背筋がゾクッとなった気がしたけれど平静を装って答えたよ。
そうすると、彼女らは俺の言葉を無視するかのように次々と質問をしてきたんだ。
それに対して一つずつ答えていたらキリがないと思い始めたところで、突然腕を掴まれて引き寄せられてしまったんだ。
突然のことで驚いて抵抗しようとしたんだけど無理だったみたいだな。
そのまま強引に連れて行かれそうになったところ、なんとか踏ん張って耐えようとしたんだがどうにもならなかったせいで結局、連れていかれてしまったんだ。
ああ、もうダメだと思ったその時、誰かが割って入ってきて助けてくれたんだよ。
誰だろうと思って見てみると、それは例の処刑場で会ったあの女騎士の姿だったんだよな。
(助かった……)
「ありがとう、助けてくれて感謝してるよ!」
俺は素直にお礼を言うと、彼女は何も言わずにそっぽを向いたままだったんだが、何となく頬が赤くなっているような気がしたんだよね。
もしかしたら照れているのかもしれないと思ったが、あえて口に出さずにいたよ。
そうすると、その様子を見守っていたエルナさんが話しかけてきたんだ。
それで、こう言ったんだ。
「あなたはこれからどうするつもりなのかしら?」
その言葉にどう答えるべきか迷った挙句、正直に自分の気持ちを伝えることにしたんだけど、
それを聞いた彼女が急に笑い出したかと思うと俺にこんなことを言ってきたんだ。
「なるほど、あなたらしいわね」
そう言って笑う彼女を呆然と見つめているうちに次第に冷静になってきたこともあって、ようやく状況を理解することができたような気がするよ。
それにしても、まさかここまでうまくいくとは思わなかったけどな。
正直言って驚いているくらいだし、このまま上手くいけば良いんだけどなと思いつつも油断しないように気を付けることにする。
さて、それじゃそろそろ始めるとしますか! ということで、俺はおもむろに服を脱ぎだしたんだが、
それを見たエルナさん達が一斉に騒ぎ出して俺のことを止めようとし始めたので仕方なくやめることにしたんだ。
すると、それを見てホッとした様子を見せたのでチャンスだと思い、すかさず追撃することにしたんだ。
そして、再び素肌になったところで見せつけるようにしながら挑発してやると案の定、
食いついてきたので予定通りの展開に持ち込むことに成功したってわけだよ。
というわけで、その後はいつも通りの流れになってしまったわけだが、今回の目的はあくまでも時間稼ぎだからな。
なるべく長引かせるようにしないとまずいだろうから慎重にやることにしようじゃないかね。
そんなことを考えている間にどんどん時間が過ぎていき、気付けば夜が明けようとしていた頃になってようやく終わりを迎えることになったわけなんだが、
正直なところ疲れ切ってしまったせいで今すぐにでも眠りたい気分になっているんだ。
しかし、ここで倒れるわけにはいかないからな。
まだまだ頑張らないと駄目だろうな……と思いながら頑張って立ち上がるとふらつきながらも歩き出すことにしたわけだよ。
そしたら、シルフィー達が慌てて駆け寄ってきたと思ったら支えてくれるようにして寄り添ってくれたおかげでなんとか歩くことができそうだった。
そうして、歩いているうちにいつの間にか眠ってしまっていたみたいで目が覚めた時にはベッドの上だったみたいなんだが、
その時にはもう既に朝になっていたらしく窓の外には眩しい朝日が見えていて思わず目を細めるほどだった。
(ふわぁ〜っ)
それから大きく伸びをして起き上がった後、部屋を出て洗面所へ向かったのだがそこでふと気がついたことがあったんだよ。
それは、鏡に映った自分の姿なんだけどどこかおかしいような気がしなかったかい?
(あれ……?)
いや、違うそうじゃない、そうじゃなくてだな、何かが違う気がするっていうかなんというか、どう見ても男にしか見えないはずなんだよ。
でも何故か違和感があるというか変な感じがするというか、まるで自分じゃないみたいな感じがして仕方ないんだよなぁ……なんてことを
考えながら自分の顔を見つめてみたものの特に変わった様子はないように思えるんだけど、やっぱり何かが変だと思うんだよね。
例えばほら、髪の長さとか全然違うような気がするし、それに肌の色だって明らかに白すぎると思うんだよな。
まあ気のせいかもしれないし別に気にする必要もないと思うんだけど、どうしても気になってしまうのは何でなんだろうかと考えていた時だった。
(ドンッ! という衝撃と共に意識が遠のいていくのを感じた直後、目の前が真っ暗になり何も見えなくなってしまった)
そして、次に目を覚ました時、最初に目に入ったものは見知らぬ天井であったことは言うまでもないことだろう。
しかもその周囲には見慣れない機械のようなものがたくさん並んでおり、それらが発する電子音のようなもので
満たされていたこともあり非常にうるさく感じられた為、すぐにでも耳を塞ぎたくなるほどであったが、
なぜか身体が思うように動かないためにそれすらも出来ずにいると、そこに誰か入ってきた気配がありそちらへ目を
向けてみるとそこには白衣を着た女性の姿があったのである。
その女性は俺の姿を見るなり慌てた様子で近寄ってくると声をかけてきたのだった。
その声はどこかで聞いたことのある声だと思った瞬間、ふと頭に浮かんだ言葉を口にした俺だったが、
その言葉を聞いた相手は驚きのあまり固まってしまったように見えたものの、しばらくして我に帰ったのかハッとした表情を
浮かべた後で慌てて部屋を出て行ったかと思えば、数分後に戻ってきたその手には小さな箱のような物を持っていたようだが、
それを俺に手渡してきたので受け取ると、彼女はそれの使い方について説明してくれた後に部屋から出て行く際に
一言だけ残していった言葉が妙に印象的であったことを思い出したがそれ以上はよくわからなかったため、
気にしないことにして箱の中身を確認することにしたのである。
中には透明な液体の入った小瓶が入っていたが、それ以外には特に何もなかったようだし、
どうしたものかと考えているうちに頭が痛くなってきたため考えることをやめて寝ることにしたのであった。
そして翌朝、目が覚めると同時にベッドから起き上がるとともに、枕元にあった小瓶を手に取ろうとしたのだが、
手が滑ったことで床に落としてしまい割れてしまったことにより中身が飛び散ってしまったようで慌てて拾い集めようとしたが、
全て回収することはできなかったようである。
その後、朝食を済ませた後で改めて調べてみようと思い立ち部屋を漁ってみたところ、
アイテムボックスの中に隠すようにして置いてあったカバンを見つけたことで、
その中に入っていた衣服を身につけてから外に出ることにしたんだ。
だが、その際に自分の格好を確認してみると、服装が変わっていることに気がついた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます