チンポコ祭の夜に

mimiyaみみや

第1話

 草木も眠る丑三つ時、八歳のあーくんも深い眠りについていました。

 あーくんは寝相が悪く、掛け布団を蹴っ飛ばして、ベッドから片足が落ちていました。にわかにあーくんの股間のあたりが持ち上がり、拳より一回り小さい塊が、太ももから足首に向かって移動し、パジャマの裾からまろびでました。


 チンポコです。


 あーくんのチンポコは、飛び出した足をベッドの上に戻そうと、押したり引いたりしてみたが、なかなかうまくいきません。結局、蹴っ飛ばされた掛け布団をかけてあげるだけにしました。そしてチンポコは、窓の錠をパチンと外し、外に出ていきました。


 あーちゃんは、頬に冷たい風を感じて目を覚ましました。あーちゃんの部屋の窓は建付けが悪く、錠を締めていないとすきま風が入ってくるのです。

「あれれ? 閉めたと思ったんだけど」

 寝ぼけまなこを擦りながら、あーちゃんは股間がちょっと変なことにきがつきました。

(しまった! おもらししちゃったぞ)

 そう思って股間に手をやりましたが、濡れてはいません。チンポコもありません。

「えーっ! 私、女の子になっちゃった!」

 あーちゃんは、(きっと私のチンポコは、家出しちゃったに違いない)と、そう考え、探しに行くことにしました。


 パジャマの上から毛糸のトックリを着て、あーちゃんはこっそり外に出ました。

「ピーチ、おいで!」

 あーちゃんは、飼っているゴールデンレトリバーを呼びました。

「私のチンポコの匂いを追って!」

 言うやいなや、ピーチは駆け出しました。あーちゃんも必死でそれを追いかけました。ひっそりと静まり返る商店街を抜けたところで、ピーチは立ち止まりました。

 あーちゃんはやっとのことで追いつくと、目を見張りました。


 チンポコ大行進です。


 大小様々なチンポコが、かもの子よろしく連なって、どうやら山に向かっているようでした。

あーちゃんはチンポコたちに見つからないよう、こっそりあとをつけていきました。

暗い山道を歩くのは怖かったのですが、チンポコが見つからないほうが怖いに決まっているので、あーちゃんは、勇気を出して前へ進みました。

「私、男の子だもん!」


 山の中腹まで進んだでしょうか。開けたところまで進むと、チンポコたちで賑わっていました。


 チンポコ祭です。


 チンポコたちが火を囲んで、伸びたり縮んだり、踊っていました。

「チンポコ祭だぁ!」

 あーちゃんが思わず叫ぶと、チンポコたちはびっくりして、その場にパタリと倒れてしまいました。

(きっと人に見られちゃ行けなかったんだ)

 さっきまで楽しそうに踊っていたチンポコたちが、今はただのチンポコになってしまって、あーちゃんは悲しくなってきました。

「ねえ、チンポコたち。ごめんね。邪魔しないから、踊っていいんだよ」

 しかし、チンポコたちはうんともすんとも言いません。

 すん、すん、とあーちゃんは泣き出してしまいました。

「ワン!ワン!ワン!」

 心配したピーチが、あーちゃんを元気づけようと、クルクル回り始めました。

それを見て、ぴょんと跳ね上がったのは、あーくんのチンポコでした。あーくんのチンポコは、あーちゃんの鼻先を跳び回りました。

「あはははは」

 あーちゃんはついに笑い始め、あーくんのチンポコと一緒に踊り始めました。トックリの首を頭まですっぽり被り涙を隠すと、チンポコみたいな格好になりました。

つられたチンポコたちが、一本、二本、ついにみんなして踊りだしました。


 チンポコ祭です。


 大きいチンポコ、小さいチンポコ。先太りチンポコ、中太りチンポコ、根太りチンポコ。長いチンポコ、短いチンポコ。動物達のチンポコ!

 形大きさいろいろなチンポコたちがあーちゃんの股ぐらに、次々とくっついては離れていきました。

 最後はあーくんのチンポコがあーちゃんにくっつきました。

 あーくんはすっかり愉快な気分になりました。


 気がつくと、空が白み始めていました。

「モモタロウ、帰ろう!」

「ワンワン!」

 道々、あーくんはチンポコを触りながら、モモタロウに言いました。

「やっぱり自分のチンポコが一番いいよね、モモタロウ!」

 モモタロウは舌を出し、チンポコポーズでチンポコをあーくんに見せつけました。

「あ! モモタロウ、チンポコが二本ある!」


 その晩帰ったあーくんは、ふたりのママに起こされるまでぐっすり眠りました。


おわり。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

チンポコ祭の夜に mimiyaみみや @mimiya03

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る