教えてウォーケン先生!

Y.T

 収斂進化。

「やあ、ウォーケン先生だよ」

「ウォーケンさん、誰に言ってるの?」

「ウォルフくん、此処ではウォーケン先生と呼びなさい」

「……はい」

「宜しい」

「ではウォーケン先生、ここはどこ? これはナニ? 私はだぁれ?」

「キミはウォルフくんだろう? くだらない事はヌキにして話を進めよう」

「……」


「ここはYTくんの作品、モラハラノワールアドベンチャー『タルミノス』の設定資料集だねぇ」


「設定資料集? でもなー。なんだかなー」

「なんだい?」

「ありもしない世界の設定資料なんて、需要あるのか?」

「ないねぇ」

「おい!」


「ウォルフくん、『しゅうれんしん』って言葉、わかるかな?」

「ああ、後々物語にも登場するアレ?」

「そういうメタ発言は嫌われるよ?」

「……あんた、本気で言ってる?」


「冗談だねぇ。読者の皆さんにもわかるように説明すると、収斂進化とは全然違う生き物が似たような進化をする事を指すんだねぇ」

「例えば?」

「タコやイカには脊椎動物みたいな二つの眼がついているだろう? 元々は貝みたいな生き物なのに」

「例が地味すぎじゃね?」

「じゃあ代表的なモノを——オーストラリアやタスマニアなどに居る有袋類、アレは全然違う生き物なのに、それ以外の場所に居る生き物達と生態が似ているよねぇ? なんでだと思う?」

「なんで?」

「ふぅ、いつも言ってるだろう? 疑問を持つのは良い事だが、一瞬だけでも自分で考えろって」

「良いじゃん。コラム内なんだし」


「……世界には草や木があり、それを食べる草食の生き物、草食を食べる肉食の生き物、なんでも食べる雑食性のやつも居る。そういう生き方に、縛られてるんだ」

「うんうん」


「似通ったルールの中では、生き残る為のニーズも自然と似通ってくるし、行動も、その裏のかき方なんかも似通ってくる。その結果が見た目に表れるんだよ」

「へー」


「他者を狩る生き物には武器が必要だ。だから牙や爪が発達する。それから逃げる生き物には広い視野と持久力が必要。一番強いヤツは堂々とその辺をうろつけば良いが、弱い奴は身を隠さなきゃならない。強いヤツも弱ったりするから群れたり、一匹の奴はやはり高い所なんかに身を隠さなきゃならない——などなど」

「話長えな」


「……コホン。そういう様々な生き物達の立ち位置を『生態的地位ニッチ』と呼ぶ。我々人間も同じだ」

「同じ?」


「国や組織、もっと小さな集団でも良い。そこにはリーダーと、それに群がるヤツらが居るだろう?」

「言い方」

「リーダー不在の場所でも、仕切り屋と、そうじゃないヤツらが居る」

「だから言い方」


「だから全然違う別の国々でも似たような文化が生まれる、というわけさ。人間の進化は文化の発展さ。そう考えるなら、人間の文化も収斂進化の枠組みからは外れない。そう思わないかい?」

「そう思うって、言って欲しいの?」

「うん」

「……」


「異世界ファンタジーにも人間が居る。それは現実の地球と似通ったルールやニーズに適応した結果だ。当然、環境も似た様なモノでなくてはならないし、似た様な文化も生まれるだろう」


「というか、そもそもフィクションは人間が描いてるんだから、似通ってくるのは当然でしょ?」

「だからそういう——」

「良いから話を進めてよ」


「コホン。要するにだねぇ。物語の世界観や設定なんかは、現実の地球上に存在するモノを見てゆけば誰にでも感じとる事ができる。例え

「それがこの場所?」


「その通り。我々は現実を共有してるんだ。現実とはある意味、シェアワールドなんだねぇ」

「またぶっ飛んだ事を」


「どんな夢や希望、そして、現実なくしては語れない。この場所は、そんな現実の資料を皆んなで共有して作品創りに役立てよう、という場所なのさ」


「需要はあるの?」

「ない」

「おい」


「需要があってもなくても語る。それが人間という生き物だよ。目や耳や口を独自に使う進化をした、その日からねぇ」


「と、いうわけで!」


「ここは現実世界の資料を不定期に放出する、作者の身勝手なコラムさ。興味がある人は参考にすると良いかもねぇ」


「記念すべき第一回の『収斂進化』はこんな感じになりましたが、次からもこんな感じで進みます!」


「お楽しみにねぇ」


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