雲隠れの

食連星

第1話

おいっ

まだ生きてる!

ここにいるから!

母さん!!!

うーうー言ってる.

きつく頭の後ろで結ばれた布は…

意味の無い言葉へと変換させた.

『新入りうるさいぞ』

『黙らせろ』

『あれだけ覚えさせたのに…』

『馬鹿だな』

『あれじゃ旨く任務が遂行できないぞ』

ひそひそうるせぇ!

母さんが来てる!

何としても知らせたい.

俺は,ここにこうして生きてると.

『おや』

『まだ動ける』

『だてに選ばれた人材では無いですね』

『無駄に体力馬鹿だ』

階段を駆け上がる.

後ろ手は役に立たない.

肩でっ肩でっ.

あまりの塞がれた感に…

八方ふさがりだ…

母さんの…

すすり泣く声が…

頭をどうしようもなくさせる.

「ねこが来てるか.」

何言ってるんだ.のんびりした声に苛立ってくる.

あれは俺の母さんだ.

しかも,こいつ…

滅茶苦茶俺を痛めつけた奴だ.

足っ足っ!!

「殺気が足りん.

の割には,とろい.

足は,こう使う.」

ぼこっとみぞおちに食らって,

息がしづらくなる.

口から何かが出そうになる…

この狭く薄暗い空間で巧く足を動かしピンポイントで中てる.

やれない訳ではなさそうだけど,それを習得するのが

一朝一夕では難しそうな事は分かった.

卑怯ぞ!

こっちは身動きできねぇんだ!

「卑怯ではない.

これしきでへばる奴とは共に仕事は出来ない.

訓練中に逝くぞ.」

何を言ってんだ…

「さて,久しぶりに見てみるか.」

植物の茎のような細長い筒を,これまた細い穴から出していく.

正体不明の男.

「泣いてる姿もいいな.

これは泣かせてるな.

仕方ないな.

見てみるか?

声を出すなよ.

声を出せば…

今度は完全に死ぬ.」

え?

「お前の命と,ここを守る事と.

天秤にかける事もない.

理解出来なければ,今ここで首を落とす.

脅しではない.」

はぁー…

何言ってんだ,こいつ.

無視して入り口を(出口か)体ごとぶつけると,

首を固められて,よく分からないうちに階段を転がり落ちる.

おっお”っいってぇ!!!

「ははっ

甘くなる.」

おいっ!全く甘くねぇぞっ!!

いってぇ…体中.

「いいのか最期に見ておかなくて.

次はいつ眺められるか分からんぞ.

自分の足で上がってこい.」

よく言うよ!

今!たった今転がり落ちたばっかりの身体なんぞ!

あぁ…

折れては無いけど…

打ち身酷い.

「もっと上手に受け身を取れ.」

よく言うよ!

お前が落としたんじゃないか!!

「声上げるな.

上げた瞬間,押し込む.

眼球に.片目でも任務を上手くやれてる奴もいるから.

その辺は努力次第.」

意味が…分からない…

分からなさ過ぎる…

覗くと…

母さんがいた.

静かに…静かに泣いてた.

ど…ど…どどど…どうしよう…

「もう代われ.

ずっと一緒にいられただろ.」

え!何で!

「もうそろそろ関節外したり何か特技を出せ.」

いやそれ普通の人出来んからなっ!

何で何にも出来ないんだって顔される方がおかしい.








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