長年信頼していた義理の兄貴は姉貴だった。それを知った後でも普段通りにしていたらヤンデレお姉ちゃんが誕生しました

ブラックコーヒー

第1話 僕らの日常

 僕には1つ上に信頼できる兄貴がいた。いつも僕が進むべき道を兄貴が先に歩いてくれていたので、その後ろを歩く事が日常になっていた。


「兄貴今日は何する?」

「そうだな.....ゲームでもするか」

「うん。僕の部屋から取ってくるね」

「任せた」


 僕は2階の自室からゲーム機を持って兄貴が待つリビングに急いで戻り、コントローラーを兄貴に渡して僕はゲーム機本体の電源を付けて兄貴が座っているソファーの横に飛ぶ様に座った。


「危なっかしい奴だな、涼は」

「兄貴の横に早く座りたかったから」

「そっか.....次からは普通にな」

「うん」


 僕達は最近巷で流行っているモンスター育成ゲームにハマっていて、僕は兄貴がプレイしている様子を見るのが好きだった。自分でも偶にプレイしているが、兄貴は単純に上手かったから見ていて気持ち良かった。


「兄貴そこ危ないよ」

「ここは.....抜け道を使ったらHPを削らずに行けるんだぞ」

「凄い。兄貴は天才だね」

「涼に褒められても全然嬉しくないけどな」

「兄貴照れてるの」

「別に」


 僕達は長年一緒に居るので兄貴が照れているのもすぐに分かり、その証拠に耳がピクピクしている。喜んだ時は大抵動いていた。


「でも兄貴はこのゲーム初見プレイだけど抜け道とか裏技とかよく知ってるね」

「....友人がこのゲームに詳しいからよく聞いてるんだよ。涼の為にも」

「そうなんだ。ありがとう」


 僕の「ありがとう」にまた兄貴の耳がピクピクしていたので、少し面白かった。兄貴は黒髪ボブのイケメンで、顔は全く似ていなかった。それもそのはず血は繋がっていないのだから。


「兄貴、もうすぐ父さんも帰ってくるからご飯作ろ?」

「もうそんな時間か、分かった。涼はお風呂入れてきてくれ、俺はゲーム機を部屋に戻してくるから」

「うん分かった」


 僕は兄貴の言葉通りにリビングを出て風呂場に向かった。風呂場に着くと初めにシャワーで浴槽を水洗いして、浴槽近くのボタンを押して浴槽に栓をする。僕はたまに栓をしないで沸かしていたので1番風呂の兄貴が入る時に浴槽だけ温まっているという現象が起きてよく怒られた。


「栓も閉じてるし、大丈夫」


 浴室内にあるモニターから風呂自動ボタンを押して女性のアナウンス声を聴きながらリビングに戻った。


「兄貴終わったよ」

「ありがとな、それと今鶏肉切ってるからボウルにタレを入れて揉んでくれないか」

「もしかして.....唐揚げ?」

「好きだろ、唐揚げ」

「うん。大好き」


 僕の唐揚げ大好き発言で何故か兄貴の耳がピクピクしていたので、兄貴も唐揚げを楽しみにしてると思って僕もやる気が出てきた。


「タレってこれかな?」

「それだよ。入れる量は言うから」

「うん、入れるね.......」

「ストップ」

「よし、豚肉入れて良いよ」


 ボウルに入った豚肉を揉みながらつけていたテレビを観ていると、


「あ、あれって兄貴が通ってる高校だよね」

「うん....そうだな」

「僕も来月には通う事になるからまた学校では先輩だね」

「先輩じゃなくて兄貴な」

「それじゃあ.....兄貴先輩かな」

「舎弟みたいで心苦しいな」

「僕と兄貴は兄弟だから大丈夫だよ」


 僕達はいつもの様に話していると、


 ピンポーーン


 インターホンが鳴り、兄貴は手を洗っていたので、すぐに玄関に向かった。そして戻ってくると、


「涼ただいま」

「おかえり父さん」

「夕飯はもうちょっと時間掛かるからゆっくりしていて」

「すまんな伊月も高校で疲れているのに」

「大丈夫だよ。涼も手伝ってくれてるから」

「ナイスだ」


 僕と父さんは互いに親指を立ててキメ顔をした。いつもの光景なので兄貴は笑っていた。




「父さん、兄貴ご飯できたよ」

「「はーい」」


 唐揚げは後は揚げるだけだったので兄貴はお風呂に、父さんはテレビを観ていたので、大声で言えば両方に伝えれる。



「「「いたただきます」」」


 僕達3人は黙々と唐揚げを食べて少し落ち着いた時に、


「涼も来月には高校生だな」

「そうだね」

「入学祝いは焼肉とかどうだ」

「良いの?」

「去年も伊月には.....焼肉をご馳走したから今年は涼だな」

「そうだね、美味しかったよ」

「えぇーー、その時僕居なかったよね」

「あの時は涼がクラスメイトとの食事会があったから来れなかったんだろ」

「あ.....そうでした」

「「あれは悲しかったな」」

「すいませんでした」

「「フフフフ」」


 いつも弄られるのは僕だったが、2人が笑ってくれるなら別に良かったし、悪い気もしなかった。


「ご馳走様でした。美味しかったよ、伊月も涼もいつもありがとう」

「別に良いよ。ここに居れるだけで嬉しいから」


「「......」」


 兄貴言葉には悲しみと喜びが混じっていて僕達は何も言えずにいた。


「なんかごめんね。涼も居るから料理も楽しいよ」


「うん、兄貴となら何でも楽しいから」


「そうか、なら良かった。私は風呂に入ってすぐ寝るから先におやすみ」


「「おやすみ」」


 父さんはそう言って風呂場に入って行った。僕達はまだご飯途中だったので、また唐揚げに集中した。



「「ご馳走様でした」」


 互いに感謝して食事を終えるのが当たり前になっていた。洗い物は兄貴がしてくれるので、僕はお風呂に行った。



「ふぅーーー、良い湯だな」


 3人目の利点でもある温度が丁度良く最後に入る理由がここに全て詰まっていた。


「よし出るか」


 僕は湯船に浸かる前に全て終わらしているので、今する事はお風呂から出てベットに直行だった。



「兄貴出たよ。僕はもう寝るからおやすみ」


「うん、おやすみ」


 階段を上がり右にある部屋で待っているベットに倒れてそのまま......、



「みんな寝たかな.......涼また明日」





 


 



 

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