第65話 棲家
例の
ただ、危険な目に合う訳でもなくただただ時間が掛かるだけなので、今のところはあまり重要視するつもりはない。これがもし細かなミスが頻発するような程度なのであれば、少しは考えなくてはならないが。
そうして一応は納得した上で、拠点へと戻って来た。生活自体の内実はあまり変わらないものの、やはりここに来ると安心感が違う。この周囲は大方
……………胡麻に至っては完全に腹を上に向けた状態で寝てるんですが。野生を失いすぎではありませんかねぇ。
とまぁこんな感じで一旦色々と落ち着いた訳だが、少しだけ確認したいことがあって今から出かけようかと。流石に大曾根さんから目を離すのは怖いので地面から引っぺがして、散歩を悟ったのか立ち上がった柚餅子の上に乗せる。
折角帰って来て落ち着きたい所申し訳ないのですが、完全に引きずられている状況で良いんですかあなたは。
そう言えば、大曾根さんは既に鞍を使わないのでも乗れるようになったのだが、やはり何かしら掴む物がないと体勢を崩すということで、大抵は首筋の前の方に座って柚餅子の角に捕まり、そうでないときは俺の背中にしがみ付いて乗っている。どちらの状況にせよ、柚餅子が急な動きをすれば、握力があまりお強くない大曾根さんは無残にも地面に投げ出される運命にある訳だが。ただ今の所は、柚餅子が気を遣ってくれているお陰で、不幸な事故は起こっていない。幸いにも。
…………いやぁ、本当にありがたいね。大曾根さんだと、走ってる柚餅子の背中から落ちただけで命の危機だし。
ただ、一つだけ懸念事項があるとすれば、寝ぼけたこの人が急に変な動きをすること。偶に急に横に倒れそうになったりするし。急に何かに触ろうとして手を伸ばしたりするし。流石に怖いので止めて欲しかったりする。一応目は離さないようにしているけれどもが。
のそのそと柚餅子の角に掴まった大曾根さんの姿を確認して、柚餅子に走り出すように促す。今回の目的地は、この
数分も待てば、大体目的の辺りに辿り着いた。いつものように軽く柚餅子さんを撫でてから、その背を下りる。
視線の先には、数匹の魔物が
こちらに気が付いた彼らが、こちらに駆けて来る。先頭を走ってくるのは狼型の魔物で、その後ろに着いて来るのは、鹿、熊、狐と様々だ。十匹にも満たない群れなのだが、この体躯の魔物であればそれでも威圧感があった。
…………この状況で嬉しそうにしている大曾根さんは一体何者なんでしょうねぇ。
戦闘を走っていた青みがかった灰色の狼の魔物が、柚餅子と鼻の先端をぶつけあってじゃれ始める。それ以外の魔物に関しては、近寄っては来るものの、うろうろと歩き回るだけで何かしらの行動を起こす気配はなかった。
一匹一匹に近寄り、その鼻頭あたりを撫で回して行く。いやぁ「魔物と仲良くしないようにしている」なんて、どこの誰が言ったんでしょうねぇ。飼っている、とまでは行かなくても、ここまで良く見かける間柄になると、かなり愛着が湧いて来るんですが。
そう、実はこの皆様、身内の魔物さん方です。
基本的には、一定期間近くに置いた魔物は、遠くへと放して各自で
そして注目して欲しいのが、この青灰色の狼。実は柚餅子と良い感じなのです。
魔物同士が番になるなどということを聞いたことがなかったために、可能性を完全に頭から削除していたのだが、どうやら柚餅子がこの狼の下を離れたくないらしいことに気が付いてからは、遠巻きに彼らの仲を応援するようにしている。
最近では向こうさんの方が柚餅子の下へと遊びに来る機会も増えており、割と微笑ましい光景を見られることが増えていた。
そんな魔物を引き連れて、柚餅子に乗り更に数キロ進んで行く。辿り着いた先では、魔物が大量に溢れている
この
柚餅子から飛び降り、
快く迎え入れられているのか下に見られているのか。魔物達は顔を舐めたり体を摺り寄せたりと、気が付けば周囲に大量に集まってくる。
どうしても魔物を捕らえる際には乱雑になってしまうため、出会って間もない魔物達には怖がられたり嫌われたりすることも多い。ただ、ここらの魔物であれば、捕まえてからかなりの時間が経っているために、割と大丈夫そうなご様子。……………まぁ、この
一匹一匹の頭を撫でつつ、
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