第61話 骨
さぁ、本日はですね。ちょっと体が鈍って来たんじゃないの疑惑が出てきましてですね。ちょっと
鈍って来た、というのは実際には体というよりも情報処理の方であって、つまりは自分の体に振り回されているのではないですかという話だ。柚餅子とじゃれてたら思ったより強く投げちゃってビックリ、っつーことですね。はい。
と、考えていたのだが。
「いやー、淳介さんが戦っている姿はあんまり見ませんからね。ちょっと楽しみです」
なぜこの人がいるんでしょう。
…………本当は気づかれない内に適当に出掛けて、一週間もしない内に戻ってこようかな、みたいな計画を立てていたのだが、朝起きた時点でこの人に気が付かれ、そして外で寝ていた魔物三兄弟にも見つかり。
一人で出掛ける旨を伝えるも、一向に聞き入れる様子のない方が約一名いましてですねぇ。結局は大曾根さんは後ろから着いて来ることになり、そして大曾根さんが来るならばその保護者の柚餅子が来ることになり、胡麻は確実に付いて来るし、餃子は他二匹がいるなら絶対に後を追って来る。最終的にはいつものメンバーで出掛けることになっていましたとさ。
ちなみに今は柚餅子さんが凄い勢いで疾走している背中の上だ。風上側にいる大曾根さん声は割と聞こえるが、俺の声は彼女には届かない。
まぁ、一言も話さないけどね。何も不自由ないね。あぁ素晴らしきかな人生。
さて、ロングドライブを経て、大体
それがこちら、骨。
これは
今まで通り金属で戦おうとすると強度が少し足りないという話は前述の通りだが、やはり素手で戦い続けるというのはあまり楽しいものではない。というより、何か武器があった方が行動しやすい。それだけでリーチが随分と変わるのもそうだが、何より格段に体重が乗せやすかった。
折角人間として生まれ、物を扱うに長けた両の腕を有しているのだ。これを死蔵させておくべきではないだろう。
後は純粋に手を怪我したくないという理由もあったりする。何せ自らの体を武器として扱うのだから、その部分を痛めやすいというのは自明のこと。指を痛めただけでも割と日常生活に支障が出たりするので、何かしらの対策を取らなければと思っていたのだった。
ということで登場した骨だが、これは「目には目を」という安直な思考の賜物だった。
魔物を攻撃するにおいて十分な硬さの物がないのであれば、魔物で魔物を殴れば良いじゃない。そう思って────流石に生きた魔物を持ち上げて振り回して戦うということはしたくはないので────適当に良さげな白骨を見繕って持ってきた訳だ。
成形しようと思ったが加工方法が何も思いつかなかったので、取り敢えずはそのままの状態で扱いやすい物を選ぶ他なかった。そのため少し形は不格好で、全体的に湾曲していて太さも一定ではない。それに加えて叩き負った時の跡が少し残っているために先端が尖っていたりもするが、それは手作り感満載だと思えば、まぁ、許容範囲。多分。何なら尖っている方が武器らしいしね。流石に自分に刺さって怪我したりはしたくないので、いつか対処しようとは思っていますが。取り敢えず今日は試運転ですので。
重量感に着いてだが、こちらは割と良い感じだ。背骨などの骨を使おうとすると、脊髄か何かの関係なのか、中が軽く空洞になっていて想像よりも軽いものが多かった。ただ大腿骨などであれば、骨が程良く詰まっていて、手に落ち着くだけの重さがある。しかし素早く振れないかと言えばそうではなく、振った際に手に若干の抵抗が残る程度の絶妙なバランス。
やはり問題は形だろう。今日の試運転が上手く行けば、何かしらの方法を探して扱いやすい形に成形しようと思っている。
まぁ、物は試しですから。百聞は一見に如かず、一見は一行に如かず。取り合えず試してみましょうか。
何となく体を伸ばしてから、
やはり入り口付近では魔物の数も少なく、魔物自体の大きさや膂力もそこまでではないので、あまりここに時間をかけたくはない。
この
骨を持ち上げると共に、そのままの流れで隣にいた魔物を殴る。鈍い音と共に頭蓋が潰れ、赤い液体を撒き散らしながら魔物は壁の方へと飛んで行った。続けざまに正面にいた魔物も叩き潰す。
やっぱり手元に得物がある安心感は凄いね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます