第31話 申請
新学期を終えて、遂に高校三年になった。四月も後半で、もう既に五月になろうとしているとうのに、気温は未だに上がらず、今でも寒い日が続いている。学校の制服の衣替えが六月に有って、その時には冬服を脱いで夏服にならなければならないわけだが、その時までには暖かくなっているだろうか。
暑さと寒さでは、個人的には寒さに耐える方がマシな気がしているが、結局どちらも辛いは辛かった。特に今の時期は三寒四温で、温かくなったと思ったら次の瞬間にはまた寒い日常に戻っているのだから、辟易とせざるを得ない。これで学校が無ければ、家で無限に布団の中に籠もり続けられるので、それはそれで幸せな日々にはなるのだろうが。
既に暗くなった家の外を眺める。普通、休み明けの月曜日の夜というのは精神的負担になるらしいが、休日が主な活動時間である自分にとっては、今こそが
煌々とブルーライトを発するパソコンの画面の前で、背もたれ付きの椅子へと大きく体重を掛けた。中学生の頃から使用しているこの椅子は、節約のために父親手作りのもので、形は悪くはないのだが、如何せん硬すぎるせいで少し居心地が悪い。ただ、父親に作って貰った当初にかなり嬉しかった記憶が根強く残っているせいで、何となく作り直して貰うような気にもなれず、痛む腰を我慢して使い続けていた。
さて、話は変わるが、学年が上がった今、そろそろ始めなければと思っていたことがある。
件の補助金申請だ。
高校を出て社会へと放り出される時期が、もう既に来年へと迫っている。その間に、どうにかして生きて行く術を見つけたいというのが紛れもない本音。であれば、この一年の内に今自分が計画していることが実際に上手く行くかどうを確認しておきたかった。
自分が仕事出来る出来ないの以前に、日本崩壊などという出来事になったら困るんだけどね。そうなったらそうなったで頑張ってどうにかするしかないだろうとは思うものの。…………今の日本崩壊の兆しが見えている状況も困るが、良く考えれば荒廃を良しとして法律やら社会規範やらが働かなくなることも困る。特にこの田舎、命の危機が迫り続けている状況で、隣人が法律を破ったか破ってないかなど誰も気にできないというのが現状だった。
ただ、今の自分に出来ることと言えば、この社会体制が存続されることを前提として、その上で自らが生きながらえられる術を身に着けることだ。
その他の不安材料は、その後での対処でも良いだろうからね。社会が崩壊する前提でサバイバル技術を死ぬ気で身に着けて、気が付いたら無職などということがあったら取り返しつかないし。その逆だったら何とかなるかもしれないけど。
ということで、
飛んだ先のページは、永らく手を加えられていなかったのだろう様子で、いかにも旧世代的な様相を醸し出していた。そもそもホームページの時点で古臭さはあるので、ネット活動にまで手が回っていないというのが現状なのだろうが。噂によれば
そしてその人命救助活動、最早世論がどうのこうのとは言えなくなって来た。何せ一々国民にお伺いを立てているようでは間に合うものも間に合わない。そんな民意ガン無視体制に対して、それこそ最初の頃は反対する元気な者達もいたのだが、やはりと言った様子で段々と勢いを失い、今では誰も反応すらしなくなっていた。我々市民を守ってくれている限りは、口に出すことは何もない、というのが国民のスタンス。こうして危機に瀕することで国として政治的な一体感を見せ始めるというのは非常に皮肉な話だが。積極的な一体感ではないにしろ。
やっとこさで到着したフォームに、氏名やら住所やら付近の市役所やらを入力して行く。名前の部分には父親の名前、そして銀行口座には父親の口座。上から下まで全体を眺めて、問題がなさそうなので完了ボタンを押した。
送信されました、という無機質な文言がポップアップでパソコンの画面に浮かぶ。
ちなみに、補助金が振り込まれる流れについてだが。勿論、適当に「
まず初めに
この制度が作られた初めの頃は職員を連れて実際の
ということで、実際にお金が入ってくるのは、
ただ、実際に入ってくれば人生で初の収入だ。今まで自分の労働に対価が付いたことがないので、少し不安ではあるが、同様に楽しみだった。
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