モフモフ怪談「ドッペルゲンガーの噂」(前編)

 朱色に塗られた三基さんき鳥居とりい

 三本鳥居と呼ばれるそれは、過去、現在、未来をそれぞれ表している。正位置――やしろに向かって正面からくぐっていけば、現在まで続く良縁をより強固なものにできるとされ、また反対に、逆位置からたどっていけば、悪縁を断ち切ることができるとされている。


 市街地から少しはずれた、人気のなくなった寂れた場所にひっそりと佇む神社。名を肆津ノ刻よつのとき神社という。小さな神社だ。境内けいだいにはこじんまりとした社と、さして大きくもない鳥居が三基並ぶだけ。森の中に隠れるようにして立つ境内は、太陽の光が遮られて薄暗い。少し不気味な場所だった。


 肆津ノ刻神社の話はクロから聞いた。七海との縁をより深めることができる。そう考えたムー太は、早朝からえっさほいさと遠出して、三本鳥居の元までやってきていた。ここまでの道のりは、決して楽なものではなかった。けれども、どうしてもムー太は、七海とずっと一緒にいられるようにお参りをしたかったのだ。


 一の鳥居――過去を司る――の真下からムー太は鳥居全体を見上げた。それほど大きな鳥居ではない。二メートルの半ばぐらいだろうか。鳥居と鳥居の幅は一メートルほどしか空いていない。真正面に立って真っすぐ見ると、折り重なっているようにも見えた。


「むきゅう」


 一歩、踏み出す。

 鮮やかな朱色が頭上を過ぎる。

 ぴょんぴょんと跳ねて、過去から未来へとムー太は進む。

 一の鳥居を過ぎ、二の鳥居を跨ぐ。


 少し強い風が吹いた。木々がざわめく。緑の葉っぱがヒラヒラと舞って、ムー太の額にぴたりとくっつく。


「むきゅう?」


 足を止め、額にくっついた葉っぱをボンボンでける。

 匂いを嗅ぐと自然の香りがした。

 なんとなしにふり返る。と、そこには何千という鳥居が地平線の彼方まで続いていた。


「むきゅう!?」


 森の中にあった神社だ。地平線の先が見えるはずがない。それにそもそも鳥居は三基しかなかったはずで、まだ二の鳥居までしかくぐっていない。どうしてあんなにもたくさんの鳥居が、延々と続いているのだろう。


 ムー太はとっても気になった。貪欲な好奇心がむくむくと起き上がる。

 異空間に迷い込んだのだろうか?

 無限に続く鳥居の先には何があるのだろう。どうなっているのだろう。

 実際に行って確かめてみたい。

 腰が浮きかける。

 しかし、ムー太はぎりぎりのところで踏みとどまった。


「一度、歩を進めたら引き返すことは許されないにゃ」


 そうだ。クロが言っていたではないか。

 途中で引き返すことは許されない。もし引き返せば、良縁は悪縁へと変わり、一生付きまとうことになるだろう、と。

 七海とのえにしを深めにきたのに、反対に壊されては堪らない。好奇心を満足させることも大事だけれど、彼女と一緒にいられることが一番大事なのだ。


 ――迷うべくもない。


「むきゅう!」


 ムー太は勇ましく鳴いて、前方へ向き直った。力強い歩みで前進を再開。

 三の鳥居まではすぐだった。

 やしろの前に賽銭箱さいせんばこが置いてある。ムー太の目線からは賽銭箱の上部――賽銭を投げ入れる部分――は見えないけれど、あの中に持ってきた硬貨を投げ入れれば良いことは知っている。

 ボンボンに張り付けておいたそれを目の前に持ってくる。穴の開いた硬貨だ。なんでもこの硬貨には「ご縁ができる」という意味合いが含まれるそうで、参拝の目的とも合致する。


 ムー太はボンボンを大きく振りかぶった。触角が鞭のようにしなり、勢いよく、ご縁玉えんだまが射出される。放物線を描こうとした矢先。


 ――カツン。


 高さが足りず、跳ね返って戻ってきた。

 ムー太の脇をコロコロと転がっていく。

 しまった。失くしてしまったら予備はない。


「むきゅううう」


 待て待てーと追いかけて、鳥居の手前でなんとか確保。ことなきをる。


 ムー太は学習した。

 ご縁玉は十分な高さへ達する前に賽銭箱にぶつかってしまった。距離が近すぎたのだ。

 ムー太は先ほどよりも二歩後ろに下がって、もう一度えいやっと遠投した。放物線を描いたご縁玉は、今度こそ賽銭箱のふちを超えたようだった。カツーン、カツーンと木に跳ね返る音が何回か響き、そして静寂が訪れる。


 きっとうまくいったに違いない。ムー太は満足げに頷くと、ボンボンをぽふぽふと叩き合わせた。そしてボンボンをぽふっと合掌して目を瞑る。


 ――七海とずっと一緒にいられますように。


 何度も何度も熱心にお願いする。

 彼女はムー太の無知を正し、知識を与えてくれる。彼女はムー太の非力を憂い、力を貸してくれる。彼女はムー太の孤独を癒し、愛情を注いでくれる。彼女はムー太にとってなくてはならない存在だ。ムー太が彼女にしてやれることは余りないのかもしれない。それでも彼女が一緒にいたいと望んでくれるなら、ムー太はいつまでも一緒にいたい。離れるなんて嫌だ。ずっとずっと一緒にいたい。彼女と一緒に笑っていたい。彼女と一緒に幸せを共有したい。抱き枕にされて一緒に眠りたい。抱かれる喜びをいつまでも感じていたい。


 ――この関係が。

 ――崩れることなく。

 ――未来永劫。

 ――続きますように。


 不意に石畳に金属を叩きつけたような硬質な音が響いた。次いで、金属がぶつかり合うような音。

 途端、天地が逆転したかのような錯覚を感じ、ムー太は眩暈めまいを覚えた。

 体が斜めに傾く。

 いつの間にか、空が紫色に変わっている。境内を囲む木々の様子もどこかおかしい。と、その違和感の正体にムー太は気づいた。


 ――無音。

 木々が揺れているのにそのざわめきが聴こえないのだ。

 虫の音も、鳥たちのさえずりも何もかもが消えていた。


 その中にあって唯一の音。

 もう一度、金属音が叩きつけられ、連動してシャラシャラと鈴の音よりも重たい音が響いた。空が緑色に変わっている。


「その願い、聞き届けてやろう」


 社の方から声がした。子供の声だ。

 視線を賽銭箱へ戻すと、小さな女の子が錫杖しゃくじょうを片手に立っていた。三角帽子におかっぱ頭、漆黒の着物を着ている。


「むきゅう?」


 願いを叶えてくれると言っていた。神様だろうか?

 ムー太は期待に膨らんだ。


「ただし、その願いを叶えるにはわしの力だけでは足りん。おまえの努力が必要不可欠だ」


「むきゅう!」


 もちろん。ムー太にできることなら何だってやる所存だ!

 ムー太のやる気に、少女は歳不相応な神妙な顔つきで頷いて見せ、


「おまえにはこれから試練を受けてもらう。その覚悟はあるか?」


「むきゅう!」


 一度決めたら一直線。ムー太はどんな困難にも立ち向かってきた。

 今までの人生そのものが試練だったと言っても過言ではない。それを今更、試練と聞いただけで尻込みするはずもない!


「よかろう。試練を見事げた時、おまえの願いは成就するだろう」


 シャラーン。

 錫杖が石畳に打ち付けられた。

 再び天地が逆転し、力んでいたムー太はバランスを崩してひっくり返った。

 起き上がると、女の子はもういなかった。

 空は青空へと戻り、無限鳥居は元の三本鳥居へと戻っている。


「むきゅう?」


 消えてしまった。試練とは一体、何だったのだろう?

 会話の中にそのヒントらしきものは見当たらなかった。

 ボンボンをぽふぽふぽふと木魚を叩くみたいにして考えてみたけれど、特に何も思い浮かばない。

 元来、熟考するよりも先に行動に移すムー太のことである。

 すぐに知恵熱で頭が火照りだし、思考を中断するはめに。まぁいいか、と気楽に考え、帰ることにした。


「むきゅう」


 と、その前に。

 熟考しすぎて頭が熱い。余熱を冷ましたいところだ。

 道すがら、ちょうどよい木陰を見つけ、草むらにころん。

 ムー太は小休止に入った。




 ◇◇◇◇◇


 近所の商店街へ到着する頃には、辺りはすっかり暗くなっていた。

 遅くなってしまった。七海が心配しているかもしれない。

 帰路を急いで跳ねていると、路地へと続く細い小道に馴染みの顔を発見した。


「むきゅう」


 挨拶代わりにボンボンをふりふり。

 黄色い目が夜の暗がりにギラリと光った。

 危ない! ムー太はハッとしてボンボンを引っ込める。

 路地の薄闇から這い出てきたクロが、おいしそうに揺れるボンボンを狙うこともなく首を傾げる。


「にゃ? どうして同じ方向からやってくるにゃ?」


「むきゅう?」


 意味がわからず、ムー太のボンボンはクエッションマークみたいに折れ曲がった。


「何っておみゃー、今しがた別れたばかりにゃろ? なんで反対の方向からまた同じようにやってくるにゃ?」


 今日は朝から遠出していて、誰とも会っていない。何か記憶違いをしているのだろうか。ムー太は身振り手振りでそのことを伝えた。


「にゃにゃ? どういうことにゃ? オイラが会ったのはおまえでないということかにゃ」


「むきゅう!」


 その通りだ! 人違いをしたのだろう。


「いいや、確かにおまえだったにゃ。随分とご機嫌だったようにゃが」


「むきゅう!」


 違う! ムー太はここにいる。

 憤慨するムー太をしげしげと眺め、クロは腰を下ろして背を伸ばした。


「ドッペルゲンガーって知ってるかにゃ」


 聞きなれない単語にムー太は体をフルフルと振った。


「自分と同じ姿をしたもう一人の自分。それがドッペルゲンガーにゃ。そして自分のドッペルゲンガーを見た者は死ぬと言われているにゃ」


「むきゅう!?」


 大変だ。ムー太はまだ死にたくない。死んでしまったら七海と一緒にいられないではないか。ボンボンでぽふっと目元を隠し、防御の構えを取る。


「また一説によれば、もう一人の自分は、隙あらば本物オリジナルと入れ替わろうとするらしいにゃ。本物を秘密裏に抹殺し、まったく同じ見た目の偽物が、その立場を奪い入れ替わる。恐ろしいのは、周りの人間がまったく気づかないこと。いつの間にか、身近な誰かがドッペルゲンガーに成り代わられているのかもしれないにゃ」


 今日一番の驚きがムー太を襲った。

 抹殺されること、そのショッキングな単語に驚いたわけではない。

 立場を奪って入れ替わる。その残酷すぎる内容に戦慄したのだ。


 ムー太の立場ポジションを奪うということは、七海の腕の中に納まるということだ。その特権を奪われた上に、彼女からの愛情をその偽物が一身に受けることになる。しかも、その事実に七海が気づかないことが、一番悲しい。


「むきゅうううっ」


 それだけは許せない。絶対に許せない。

 温厚なムー太でも怒ることがある。侵すことが許されない領域というものがある。七海との絆。それはムー太にとって、聖域そのものだった。

 ――絶対に守らなければならない。


「もっとも、それはおみゃーがオイラをからかっていなければの話にゃが」


 もはやクロの軽口は耳に届かなかった。

 一刻も早く、帰らなければならない。

 体を縮ませスタートダッシュの構えを取ると、間髪入かんぱついれず、弾丸のように飛び出した。その疾走はかつてないスピードが出ていた。転がることもなく最高スピードを維持できたのは、ひとえに、想いの強さゆえだったのだろう。




 ◇◇◇◇◇


 マンションへ帰りついたムー太は茫然ぼうぜんと立ち尽くしていた。

 コオロギが鳴いている。いつもは心地よい眠りへと誘う大合唱のはずが、今はなぜだかムー太のことをあざ笑っているように聴こえた。

 ショックだった。目の前の現実にムー太は戸惑う。


 扉は固く閉ざされている。


 ムー太は扉を開けることができない。なぜなら、取っ手にボンボンが届かないためだ。だからムー太の帰りが遅いときは、玄関ドアにはつっかえ石が置いてあって、ムー太が一人でも開けられるようになっている。それは泥棒が入ることよりも、ムー太に不自由させないことを優先した、七海らしい配慮だった。


 それなのに!

 扉は固く閉ざされている。


 ――七海がつっかえ石を置くのを忘れたのか?

 それはありえない。今まで一度だってそんなことはなかった。彼女がムー太のことを忘れるはずがない!


 ――彼女が帰宅していない可能性は?

 マンションを見上げた時、彼女の部屋には明かりがついていた!


 ――ならば、つっかえ石が置かれていないのはなぜ?

 何かしらの理由で、つっかえ石を置く必要がなくなったから。


 ――つっかえ石が不要となるのはどんな時?

 ムー太が一人で扉を開けられるようになったなら、そのときはつっかえ石は不要となるだろう。しかし、そうではない。現にムー太は扉を開けられずに立ち尽くしている。


 ――ならば考えられる理由は一つしかない。

 そう。それはムー太が帰宅し、その役目を終えた時。


 ――でも、ムー太はまだ帰宅していない。それなのに、帰宅したかのようにつっかえ石が取り除かれた。それはなぜ?

 何者かがムー太を装って帰宅した。だからつっかえ石は不要となった。ムー太が帰宅したと思ったから不要となった。


 ――ムー太を装ったそいつは何者?

 決まっている。ドッペルゲンガー!


「むきゅううう!」


 こつんッ☆

 ムー太は体当たりを敢行かんこう。額からぶつかっていった。

 扉はビクともしない。


 こつんッ☆

 こつんッ☆

 控えめなノックのような音が通路に響く。


「むきゅううう!」


 ここを開けてよ。ムー太はまだ帰宅してないんだよ。


 こつんッ☆

 こつんッ☆

 こつんッ☆

 次第に頭が痛くなってきた。ムー太は泣きそうだった。

 痛みで泣きそうなのではない。七海に気づいてもらえないことがとても寂しかったのだ。


「むきゅううう!」


 偽物なんかに騙されないで。ムー太はここにいる。

 あなたの愛するムー太はここにいる!

 気づいて! 気づいて! 気づいて!


 今まさに、七海との絆が引き裂かれようとしている。

 遠路はるばる縁結びに行ってきたというのに、この仕打ちはあんまりだ。神様は願いを叶えてくれると言ったのに、実際は真逆の結果となっている。そうだ。あの神様は嘘つきだ。こんなことをムー太は望んでいない。

 そういえば、神様は試練を与えると言っていた。ムー太の分身を寄越し、その座を奪うことが試練だとでもいうのだろうか。もしそうだとすれば、なんて意地悪な神様なんだろう。


 冷たい廊下にムー太は力なくしゃがみ込んだ。

 七海にどうしようもなく逢いたかった。

 ポジティブ思考のムー太も、今回ばかりはネガティブにならざるを得ない。偽物と七海が仲良くたわむれる姿を想像しては、フルフルと頭を振ってその悪夢を振り払う。このままじっとしていたら、頭がおかしくなってしまいそうだ。

 地面に沈み込んでいた体をむくりと起こし、ムー太は次なる行動に移ることにした。非常階段からベランダへ飛び移れないかと考えたのだ。きっと窓ガラスを叩いていれば気づいてもらえるに違いない。


 ぴょんぴょんと力のない足取りで廊下を進む。

 ふと、頭上に光が差した気がした。

 見上げると月が出ていた。満月だ。

 風に押された黒雲が右から左へと流れていく。

 ムー太のようにまんまるのお月様は、波間に揺れるブイのように黒雲の影にプカプカと浮いている。その姿は、荒れ狂う波に立ち向かい、沈まないよう懸命に泳いでいるように見えた。


 その不屈の姿に自分を重ね、ムー太はちょっぴり元気を取り戻した。

 エレベーターホールの脇を抜け、非常階段の入り口まで一気に駆け抜ける。

 まずは非常階段の手すりに飛び乗らなければならない。結構な高さがある。助走をつけてジャンプするか、階段の中腹から飛び移るかの二択といったところ。

 ムー太は助走をつけてジャンプする方を選択。しかし、気をつけねばならない。飛び乗ることに成功したとしても、勢いがつきすぎていては手すりの上で止まれない。地面へ真っ逆さまに落ちる。

 曲芸師のようにピタリと止まる必要がある。力加減が重要だ。


「むきゅう!」


 ムー太は勇ましく鳴いて、陸上選手がそうするようにスタートの姿勢をとった。そして怯むことなく溜め込んでいた力を解放。身体が空気抵抗を伴って前方へと弾き出される。

 まんまるの体はみるみるうちに加速――しなかった。そしてなぜか、上昇へと転じた。ふわっと空中に浮きあがる。


「むきゅう?」


 何が起きたのだろう?

 ジタバタと体を捻ってみても上昇は止まらなかった。まるで無重力空間にいるかのように体の制御コントロールが利かない。視線が少しずつ上がっていく。そして、完全オート状態でゆっくりと上昇した体は、何か柔らかいものに触れて停止した。

 その感触にムー太は心当たりがある。


「どうしたの? こんなところで」


 見上げると、今、一番逢いたい人がいた。


「むきゅううう」


 馴染みの胸に顔を押し付けて、ムー太は力一杯に鳴いた。

 安堵感が津波のように押し寄せてくる。

 彼女は一人のようで、偽物の姿はどこにもない。こうして最高の安全地帯である彼女の胸に抱かれていると、すべては取り越し苦労だったように思えてくる。ドッペルゲンガーなんてものは最初からいなくて、ムー太を怖がらせようとしてついたクロの嘘――作り話なのではないか。怪談話をするときのクロは、いつだってムー太を怖がらせようとするのだ。

 ともあれ、どちらにせよ七海に抱かれてしまえばこっちのものだ。安堵から涙が込み上げてくる。


「よしよし。寂しかったのかな」


「むきゅううう!」


 寂しかった! すごく寂しかった!

 ぐりぐりぐり。暴れるように動くと何かガサコソと音がした。疑問に思って辺りを見回すと、七海の手から下げられたビニール袋が目に入る。


「ああ、これ? カップ麺の買い置きが切れちゃってたから買ってきたのよ」


 なにもこんな時に、買いに出かけなくてもいいではないか。ムー太はちょっぴりナーバスだったので、抗議の意味を込めて、ぽふぽふぽふと彼女の頬を叩いた。

 七海はくすぐったそうに眼を細め、申し訳なさそうに言った。


「急いで行ってきたんだけど、待ちきれなかったのね」


「むきゅうっ」


 待ちきれなかった。ムー太はとっても不安だった!

 ムー太の頭の中は七海に甘えたい気持ちでいっぱいで、そのため、いつにも増してぽふぽふの乱れうちが飛んだ。マシンガンのように激しく繰り出される猛攻。その感情が伝わったのか、七海は困惑しているようだった。ぽふぽふの合間に息継ぎするように、


「待って、待って。そんなに寂しがるとは思わなかったの」


 そして彼女はに落ちない感じでこう付け足した。


「だってムー太に食べたいってせがまれたら、買いに行くしかないじゃない」

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