交換
葉月 陸公
交換
「私と体、交換しない?」
手に持っていたカッターが、音を立てながら床に落ちる。私は、目の前の状況を把握できずにいた。
「どう? 悪い話じゃないと思うけど」
にこやかにそう言うのは、私が三歳の時に両親に買ってもらった人形だった。人形がしゃべるはずないだろ、と思うだろう。大丈夫だ、私もそう思う。しかし、現実にそれが起こっているのだから仕方がない。
「……いいけど」
正直、お察しのとおり、私は死ぬ予定だった。有効活用してくれるなら、その方が良い。痛みだって本当は好きじゃない。痛みがないなら、その方がずっと良い。大切にしてきた人形の、いや、唯一の私の心の支えだった人形のためとあらば、なおさら。
そんなこんなで私たちは体を交換することになった。
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