第七話「今後の身の振り方」

 王宮・客室――


「やっぱり断れなかったよ」


「でしょうね」

【だろうな】


「努力はしたよ!」


「実らず残念でしたね」

【これも運命か】


 エトナはフラッドが着ていた礼服の上着を脱がしてハンガーにかけ、ディーはマスコット状態のまま器用に両手で持ったおしぼりをフラッドに渡した。


「ありがとう……二人の優しさが染みるな……っ!」


 フラッドは顔を拭いながらソファーに腰かけて、デーブルに置かれていた果実水をあおった。


「それで、どうなったんです?」


「ぷはー。とりあえずベルクラント行きは確定だ。しかも明日昼に特使と一緒に立つことになった。領地に帰る暇もない」


【予知夢のとおりだな……】


「いや、予知夢とは違うこともあるぞ! ちゃんと神託の内容を聞いてきた!」


【それはよくやった主。どんな内容だったんだ?】


「よく聞け、ふらっど、べるくらんと、たすける! だ!」


「…………」


 特使のマネをして幼児口調で神託の内容を話したフラッドの額に、無言でエトナが手を当てた。


「いや、エトナ。ホント、マジだからこれ、熱があるワケじゃないから」


【そうか……安心した。主がとうとう手遅れになってしまったと思ったぞ……】


「とうとう……?」


「神託の内容ってそんなんだったんですね。つまり、予知夢ではフラッド様がベルクラントを助けなかったから、こちらが滅ぼされたんですかね?」


「どうだろう、そもそも予知夢のときの神託の内容知らないから、今と内容が同じとも限らんしなぁ?」


【教皇を助けることがベルクラントを助けることになるなら、分かりやすいな】


「確かに、教皇を暗殺されないよう助ければいいワケだからな」


「そんな簡単に出来たら苦労しないと思いますけど……」


 フラッドの対面のソファーに腰かけたエトナが息を吐く。


【が、何をするか決まらない分からないよりはずっといいだろう】


 ディーがカシューナッツをかじりながら応えた。


「そうだなぁ。あとは、とりあえず敬虔けいけんなサク=シャ教徒のフリしておけば、最悪の事態になっても味方ができてくれるんじゃない?」



「そんな単純な話じゃないと思いますけど……。でも、いい考えだとは思います。前回はほとんど客室にこもりっぱなしでしたからね。ベルクラント内部で積極的に味方をつけるように行動するのは、とてもいいかと」



「つまりあれだな……。ベルクラントでも保身のためにこびを売りまくろう作戦だ!」


「予知夢というアドバンテージもありますしね。全部が全部予知夢どおりになるとは限りませんが」


 エトナが黙々とピスタチオの殻を割り、フラッドの手前にある皿に置く。


「ポリポリ……。保身に走って悪いことにはならないと前世の経験から確認済みだからな!」


 ピスタチオを食べながらフラッドが断言する。


【教皇の暗殺を防ぐのは大前提だが、他にも野盗問題や災害と、色々あったからな】


「とにかく片端から解決していこう! ひきこもっていても好転しないなら動くしかない!」


「そうですね。とりあえず行動方針はそんな感じで行きましょうか」

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