大回転!?エアスピンガール!! ~唐廻静子は止まらない~
片銀太郎
第1回転
私、
カラカラカラ。
どれだけ回してもキミに伝えるべき言葉の一つすら見つからない。くだらない考えばかりがあふれては消えてゆく、この繰り返し。
そして今日も回り始める。
どうしよう!? どうしよう!? どうしよう!?
いつもの学校への通学路、今日に限ってキミがいるなんて!?
いや、違いますよ!? イヤなわけじゃないんですよ?
むしろ嬉しいんです。キミと会えてめちゃくちゃ嬉しいんですよ?
スキップしながらキミの背中をスパーンと一発。
「キミに会えたから今日という1日がしあわせなはじまりになりそう☆ せっかくだから今日は記念日! 学校なんてお休みにして一緒に遊びに行こうよ!」
なんて歯をキラっと輝かせて言いたいくらいなんですよ!?
いや誰、この子誰ですか。
少なくとも私じゃありません。
ひどく浮かれちゃってるこの頭。
世間的な私は名前どおりの物静かな女の子。
それもこれも思考にくらべて回らないこの口が原因。
海外出身の母ゆずりの色素の薄い髪とつり目がちな目元もあいまって、クールキャラみたいな扱いまで受けています。
だけど違うんです!
本当の私はこんなくだらないことばかり考えてる女の子なんですー! もっと軽いノリでキミに話しかけたいんですー! そしてあわよくば仲良くなりたいんですー! 一緒に登校したいんですー!
でも、今考えてることをそのまま口に出したらドン引きされるだけだとわかってます。もっと気の利いたことを言わなきゃ、と気合を入れているのが、いつもの私です。
カラカラカラ。
空回りする音が聞こえてきます。
「ヘーイ! そこのYou! 今日も笑顔が素敵だね。キミに出会えたこのオポチュニティ! 一緒にトゥギャザー! ラブラブウォーキング!」
いやいやいや、これはないない。ありません。
何か言わなきゃと余計に舞い上がってます。
不審者パワーは高まる一方。これで「は?」とか言われたら、私一生立ち直れなくなりますから、おさえて、おさえてください。もっとテンション下がることを考えなきゃ私。
そういえば今日は数学の小テストがありますね……大丈夫でしょうか。良い点取れるでしょうか? お母さんに叱られたりしないでしょうか? お小遣い減らされたらイヤですね……あー、ダウナーの波がきました、これならいけます!
「──おはよう。煩わしい太陽が今日もこの身を刺し貫く。惰眠を許されず苦役に向かう我等は同朋。この重荷を共に背負い、灰色の牢獄へ向かおうではないか」
テンション下げすぎです!
下がりすぎたら中二病になるんですか私!?
これで一緒に登校しましょうのお誘いだとわかってもらえたら逆にびっくり。謎のイタいポエム女としてキミの記憶に残るなんて、まっぴらごめんなんですから!
んもー、私の頭ったら極端から極端に走りすぎですよ。
真ん中ぐらいが丁度いいんです。中庸です。中くらいです。
中くらい、ちゅうくらい、ちゅうくらい……
「おはよう。今日はいい天気だね。昨日別れてから今日までの、キミに会えない時間は寂しかったよ。うん、だから、チュウくらい──してもいいよね?」
……うん、わかりましたよ。
よくわかりましたとも。
私の頭は現実逃避しています。キミとどんなことを話せばいいかわからないので、全力でふざけにかかっています。そうでなければこんな脳みそピンクの発想はでてこないはずなんです! 多分! きっと!
あぁ、もうどうしたらいいの。
私の思考は空回るばかり。
キミとの距離が近付いています。
考えはまとまりません。
私は何を言えばいいのでしょうか。
考えないと、考えないと。
あぁ、もう時間がありません。
キミを無視するなんて問題外です。
なんでもいいから言わないと。
ご機嫌よう本日はお日柄もよくキミと出会えた喜びに私のハートはサプライズプレジャー! アイムハッピーガール! 我等を押し潰す日々の軋轢、苦難を越え出会えたキミが奇跡。正直言えば今すぐチューしたい!チューチューしたい!
……って違います! さっきまでの空回りを全部のせしただけじゃないですか!
そ、そうです! シンプルに考えましょう。私が伝えたい思いは単純なもののはずです。キミを見た瞬間に私の中にあふれた暖かな気持ち、それをそのまま吐き出せば自然な言葉になるはずです。勇気を出して私! あたりまえの言葉を口にすればいいだけ! そう! ありのままの私の気持ちを受け取ってください!
「おはようございます」
(
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