第3話 30年戦争

 ここプレンティス王国は来年には建国500年を迎える豊かで強大な国だ。豊かゆえに近隣諸国からの度重なる侵略にも晒されていたが、その度に力でねじ伏せるように解決してきた。

 しかし建国468年、記録的な天候不順による大飢饉が全土を襲った。それに乗じるように南北東側と国境を接する三方の国が一気に宣戦布告と同時に国境を侵犯。国内の情勢の悪化により十分な対応が取れず、次々と国境の都市が陥落し、1年後には中立の立場をとっていた西側の国からも宣戦布告と同時に攻め入られてしまった。そうして地獄の30年戦争が始まったのであった。

 そんな戦争が一気に終戦へ向かったのは、3人の英雄の誕生による。

 魔術師ジェレミア。魔道具師のスコット、そしてこの国の戦争の天才第一王子のレオナルド、その3人である。

 この世界では生まれてくる子どもの3割程度は魔力を持って生まれてくる。比較的貴族に多い傾向があるので遺伝の要素も考えられているが、魔術師とは全く関係のない平民の家庭からも突如強い魔力を持った子どもが生まれることも少なくないので、その法則性については未だ解明されていない。

 しかし古来からその類稀なる能力は珍重され、魔力を持って生まれた子どもは長じて国の重要役職につくことが多かった。

 ハイランダー公爵家の三男であるジェレミアはその魔力持ちの中でも歴史上最大と言われる強い魔力を有して生まれた。まだ成人前の15歳から戦場に立ち、一人で戦局を変えるほどだったという。

 魔道具師スコットはもともと孤児だったが、慰問で孤児院を訪れたレオナルドによってその才を見出された。侯爵家の養子になったのち、最年少で宮廷魔術師のなった。そして6年前にスコットが開発した魔力増強石の開発が戦局を変えたと言われる。

 魔力持ちと言っても、能力は個人個人で差があり、とても戦闘には加われないものもいる。そういった魔力の弱い者たちを魔力増強石で戦闘員にし、またすでに戦場で活躍している者たちにも能力の数十倍の力を出させることで、戦いを次々と勝利に導いていった。

 三人の英雄の残りの一人、王太子レオナルドは、魔力こそないものの、類稀なる武の才能があり、知略にも長けていて、劣勢だった戦局を次々と勝利へ導いていった。


 国民の誰もが思った。この3人があと10年早く生まれていたら。せめて5年早く生まれていたら───と。とはいえ長きにわたる戦争が終わり、元々豊かだったプレンティス王国は急速に戦前の平和と繁栄を取り戻しつつあったのだ。


 聖女として従軍した女性たちを除いて…。

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