天使との1日
朝起きると彼女がまだ僕を抱きしめたまま寝ている。だから実質この状態から動くことができない。幸いまだ学校に行くには早すぎる時間だったため、この状況を対処するだけの猶予はあった。まぁ正直このまま抱きしめられ続けるのもアリではあるが。
一番の敵策やはり彼女を起こすことだろう。そう思い僕は彼女の背中を軽く叩いて
「おはよう。朝だよ。」
というと彼女は
「んっ…んーっ…。」
と少し声を発した後
「おはよぉ、るらぁ。」
と言った。
kawaii!!!!!!
そんなのなしだろう。昨日とは打って変わってとても甘える激カワ天使になっているじゃないか。朝起きたあとのその言葉はそれはそれは心臓に悪かった。
その後彼女はゆっくりと起きて、寝ぼけで少しふらつきながら風呂場の横にある洗面所に歩いて行った。それについていい僕も洗面所に行く。
彼女は洗面所に行くと顔を洗って歯を磨いて髪を整えている。すると彼女は
「瑠良の言ってる学校ってどんな感じなの?」
「僕が言ってるのは星乃高校だよ。割と学力的には高い方だと思うけど…。」
「私ね、実は学校で割と点数いいの。」
「何すんのさ。まさかその高校に行くなんて…。」
「行く。」
「無理だって。あそこ共学になったとはいえまだ男子の方が多いんだから。」
「むぅ…。一緒に勉強したいの。」
「僕が家に帰ったらカルラに勉強教えてあげるから。な?」
「…わかった。じゃあさぁ!学校について言っちゃダメ?」
「だーめ。家でお留守番するの。」
「んえぇ…。」
「僕が学校に行ってる間自習してて。僕の使ってたテキストたくさんあるから。わからないとこあったらまたお昼食べに戻ってくるからその時にまとめて教えるわ。」
「はーい。じゃあお昼ご飯作っとくね。」 「できるの?」
「うん。だから女子天使のご飯よく作ってた。」 「へぇ…。」 「とりあえず行ってきます。」
「いてらー。」
そして僕は制服を着て家にあったパンを口に含み行ってきますの合図で家を出た。
「ただいまー。」 そう言った途端カルラは僕に向かって猛スピードで走ってきた。 「瑠良ぁ!!!!!寂しかったんだよぉぉぉぉ!」 「まだ数時間しか経ってないじゃない。それにこっからまた三時間くらい会えないんだよ?我慢できるの?それで。」 「じゃあ私を連れてってくれるの?果たして。」 「…。」 「わかったよ。一応あの高校にも入れるかどうか聞いてみるからさ。」 「ありがとう。それと瑠良もお疲れ様。よく頑張ったね。」 そう言うと彼女は僕にハグをしてくれた。やっぱり彼女のハグが一番落ち着くし一番幸せだ。 彼女はその後勉強をしていた僕の部屋に腕を引っ張り 「ここわかんないからおしえて?」
と数学の問題を指さした。 「あー微積ね。それはね...ー」 僕はその問題を一つ一つ丁寧に解説した。すると彼女はいかにも僕が偉人かのように目を光らせて 「すごい!やっぱ頭いいんだね!すごくわかりやすかった!。」 「そーか?まぁとりあえずわかってよかったわ。」 「また帰ってくるまでにわかんないとこまとめとくね。」 「はーい。」 「あ、あと私今日お昼ご飯作ったのあるから食べて。」 「ありがとう。食べていくね。」 そして僕はリビングの机にあるラップのかかったご飯をレンジで温めた。鳥肉のピカタだった。食べると優しい味が口いっぱいに広がっていつもの自炊ご飯よりもずっと美味しく感じた。 自分は部活という部活に入っていないため16:00頃に帰ることができた。家に帰ると今日の昼のことがなかったかのように静かだった。僕は何かあったのかという心配をしながら僕の部屋をまず確認すると、僕のベッドで苦しそうに寝ているカルラの姿があった。羽も縮めているというよりは弱っているような雰囲気で、カルラの顔を触るとすごく熱かった。 熱だ。昨日夜にここにきた時のそれまでの外の気温でやられたのも一理あるんだろう。多分風邪をひいている。
僕はすぐに家にあった冷えピタを持ってきてカルラのおでこに貼った。その後ふかふかの布団を持ってきてかけてあげた。ベッドで寝ているだけということは相当気力が出なかったのだろう。彼女はその後しばらくしてから苦しそうな声で 「る、らぁ…おか…え…りぃ。」 と言った。 「大丈夫?」 「う…ん。」 「だるい?気持ち悪い?」 「だる…い…。」 「そかそか。ちょっと待っててね。」 僕は風呂場の真反対にある棚からカロナールを出して水と一緒に持っていった。 「これ、風邪薬だから飲んでみて。」 「わか…った。」
彼女は口を少し開けて錠剤を口に含み水で流し込んだ。 「薬飲んだから時間経てば少しは楽になると思う。とりあえずまだ寝てな。」 「…ん。」 そして僕が部屋から出ようとしたその時
「まっ…て…」 と言う声が微かにきこえた。 「どうした?」 「まだ…行かないで。」 「なんかあったの?」 「寂しいの。ぎゅーして。」
そう言うと彼女はベッドの上でゆっくりと腕を広げた。僕はその広げた腕に吸い込まれるようにそのままハグした。カルラの体は相変わらずの暑さではあったが、カルラの切なる僕への寂しさや愛情みたいなものを感じた。
僕はしばらくカルラのそばにいて手を握っていた。彼女はずっと僕の左手をぎゅっと握って寝ている。僕は右手だけでもできそうな簡単なインターネット上の宿題を終わらせ、カルラが落ち着いて眠れるまでずっとそこで手を握っていた。気づけばもう六時をすぎており、お粥を作ってあげようと僕はキッチンに向かった。 キッチンはいかにもマンションのキッチンって感じの作りで、唯一コンロがIHであると言うくらいである。 1/2合の米をもみながらといで、水六百ミリリットルを小鍋に入れて中火で煮る。この時の注意点は煮るときに下に米がつかないようにすること。その後沸いてきたらすぐ弱火にし、少し隙間が開くように蓋を閉めて軽く煮っていく。と言うのが調べたら出てきたのでそれをもとに作っていく。
作り終わって部屋に持っていくと、それと同タイミングで彼女も起きた。
「お腹すいた?」
「お腹すいた。」
「お粥食べる?」
「食べる。」
そういうと彼女は一緒に持ってきたレンゲでお粥を食べて行った。すごくお腹が空いていたのか知らないが、とても早いスピードでおかゆが無くなっていく。気づけば一分もしないうちにお粥がなくなっていた。
「すごくお腹すいてたんだね。」
「お腹すいてたんだけどいう気力がなかった。作ってくれてありがと。」
「上手くできてたかな。」
「うん。すごくおいしかったよ。」
「それはよかった。体大丈夫?」
「ちょっとだけ楽になってきた。」
やっぱり薬の力ってすごいんだな。天使をも治してしまうなんて。
いつもならリビングのテレビをつけながらご飯を食べるが今日は彼女が寂しがると良くないので自分の部屋でパソコンでYouTubeを見ながら今日は彼女に作ったお粥の残りを食べた。味は我なりにも上出来で、彼女が最後に美味しいと言っていたのにも納得ができた。その後はたまに僕にハグ求めてくる彼女に対応しながら自分の宿題を進めて行った。でも僕はその後に訪れる一番の難所に気づいていない。
それを自覚したのは自分がお風呂に入る時だった。普段であれば彼女が先に入って後で僕が入る形になるはずだか、今日は彼女がお風呂に入ることができない。これが意味する先は、
彼女の体を拭いてあげなければいけない。
ということ。僕はこれに気づいた瞬間に今まででは考えられないくらい顔の温度が一気に上がった。それは僕が顔に手を当てた時にすぐわかった。割と盛っていないレベルで火傷しそうな暑さだった。どうしよう。お腹とか足とかは良いとして、胸とか股とか…あぁぁぁぁ…。
僕は覚悟を決めて、彼女にこう言った。
「今日カルラお風呂入れないから、僕が体拭くよ。」
「ありがと。じゃあ私服脱がないといけないね。」
「じゃあその間に準備してくるね。」
普通に何もなかったかのようにすんなり行ったが、僕からしたらそれが逆に疑問でしかなかった。なぜ昨日会ったばっかりの異性に自分の裸体を見せることができるのか。そんなに僕は信用ある人間なのか?タオルを濡らして彼女の元へ行くと、彼女は上半身裸体の状態で座っていた。彼女のスタイルの良さにはいつも感動させられる。やっぱり僕と一緒にいるような相手ではないなと何度も思ってしまう。
「じゃあ拭くね。」
「うん。」
そう言って僕は彼女の体にタオルを当てて拭いてゆく。昨日の背中を拭いたときも思ったがやはり女子なだけあって肌が柔らかい。そして腰を拭いて足を拭きいよいよ難所。胸。僕はしたからゆっくりと胸を拭いてゆく。男からは考えられないような柔らかい感触が手に伝わる。そして拭いているときに僕の手にすっぽり胸がはまるのが卑猥で仕方なかった。
そしてあとは股。彼女に
「下も拭きたいから脱いで。」
というと彼女はすんなり受け入れ脱いでくれた。
上半身の時の状況を生かし逆に今度は無心で下を拭いた。そして拭き終わり服を着させたあと、僕はお風呂に入ることにした。
お風呂から出ると彼女は服を全て着てさっきと同じようにベッドで布団をかけて寝ていた。病人と寝るのは良くないような気もしたが、彼女が寂しがる方が彼女も辛いと思い僕も昨日と同じようにそこに寝ることにした。ベッドに入ると彼女がこっちを向いて目を開けた。
「今日は帰ってきてから疲れてたのにありがと。」
「大丈夫だよ。僕もカルラのことが心配だったしね。」
「嬉しい。」
そういうと彼女は僕の顔を右手で掴んでキスをした。人生の中で一度も経験したことない僕からしたら、未知の感触だった。カルラの柔らかい唇の感触が自分の口に伝わる。
「大好きっ。」
僕は耐えられなくなり、衝動で
「僕も大好きだよ。」
と言ってしまった。すると彼女は
「嬉しい。ありがと。」
と言って彼女はもう一度僕にキスをした。そのあとは僕と昨日のようにハグした状態でスッと寝ていった。僕はすぐに寝れるわけがなかった。彼女の体を拭き、キスをして大好きと真っ向から言われて。絶対忘れるわけがない夜になった。
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