雪山にて

ボラギノール上人

雪山にて

 俺達三人がベースキャンプを出発してどのくらい経っただろうか。

 無事山頂に辿り着いたのは3日前の事であった。


 三人で一度抱き合い、笑顔で写真を撮って、ぐるっと一周その場で周り景色を見た後、ベースキャンプで待つ皆に連絡して感謝を述べると受話器の向こうから大きな歓声が上がるのが聞こえた。

 なぜなら、俺達は前人未踏の場所に最初に降り立った人間となったからだ。

 ここは標高10000m、最近になって見つかった新しい山であり、そのため数多くの登山隊が結成され数多くの挑戦を受けたが、この山はその全てを弾き返しており、何なら夢半ばこの山でその生涯を終えたものもたくさんいた。

 現に俺達が登っている間に何人もの遺体を通り過ぎてきた。彼らを下山させることも高度的に難しく、ずっとここに眠ることになり時には登山中の目印ともなる。それもまた、俺にとってはそれもそれで良いかなという終わり方の一つではあるのだが、今はまだその時ではない。

 また、上空に行けば行くほど気圧が下がっていく。

 この山が見つかる前まで世界最高峰であったエベレストの頂上であっても地上と比べると3分の1しかない。それが、10000mとなるとどうなっているのか、俺には分からない。

 そんな訳で、この山はそれだけ危険な場所で頂上というのは、今地球上で最も危険な場所だ。

 登山というのは、頂上に登ることが一つの目標ではあるが、一番は無事に下山し終えることだ。その為には一番高く、一番危ないこんなところに無駄に長居する必要はない。

 早いところベースキャンプに降りようと2人に声をかけると、その内の1人が難色を示した。

 体調が悪いのかと声をかけるとそうではなさそうだ。

 もう少しここで浸っていたいという気持ちも分かるが、先ほどのような説明をして何とか無理やり納得させ、下山を始めることにした。


 と、ペンを走らせていると、仲間の1人が話しかけてきた。

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