第2話 鮭釣りの旅人

雪である。今ここゼネストポリスは冬真っ只中だった。誰も外に出る人はおらず、足跡ひとつ付いていなかった。

中心街から少し離れた所にある大きな木のドアが、震えていた。

「雪で埋もれていて…ドアが開かない!」

僕は渾身の力を込めてドアを押してるのだが、雪の力で押し戻されるのだ。

「大丈夫ですかカインさん」

弟子のピッポが一緒になって押すと、何とかドアが開いた。ただし雪が部屋の中にボロボロと落ちてはくるけど。

「こんな季節に冒険案内人が欲しい人って誰でしょうね」

「皆目見当がつかないけど、前金をもらっているから行くしかないね」

僕はドアから這い上がるように外に出た。途端に口から白い息が出る。

人間の半分の体では、歩くとすぐに埋もれてしまう。が、なんとか街の入り口にまで辿り着いた。ここが依頼人と約束していた場所だからだ。

体が凍えるように寒い。手と手をこすり合わせながらしばらく待っていると。

冬服に身を包んだひげを生やした男がこちらにやってきた。横にはクーラーボックスを持っており、釣り竿を持っている。

「あんたが冒険案内人か!」

「はい…カインと申します」

「鮭釣り!鮭釣りのサポートをしてくれ!」

「ええっこの時期にですか?」

「この時期だからこそ脂ののった良い鮭が手に入るってわけよ!ボイントを教えてくれりゃいい!」

「はぁ…じゃあ来てください」

普段は鬱蒼と茂っている葉っぱにも、雪がずっしり積もっている。お客はよっぽど釣りが好きらしい。しばらく歩いていると、開けた川が見えて来た。

「おっ!いいねぇ」

客は早速釣りの準備をした。

「雪と川の境目が危ないですから、気を付けてくださいね」

「どうってことはねぇよ!どんだけ釣りしてると思ってるんだ」

せっかくなので、僕も釣り竿を借りて鮭釣りをした。

客の餌に引っかかたようだ。

「よぉーしよしよし!!」

リールを必死に回している。と、その時だ。片足が川に入って態勢をくずしてしまった。ドボーンと威勢よく川の流れに身を任せてしまった。

僕は釣り竿を使って客の背中に針を引っかけ、

「そこの岩にくっ付いて下さい!」

客は何とか難を逃れた。しかし、川から出てくると余りの寒さに凍えそうになってるのが分かった。

「お客さん、僕と同じポーズを取って下さい」

まずしゃがむ。それから足を後ろに放り投げる、足を戻して立ち上がる。寒さから立ち直る効果的な方法だ。

「ほっほっほ」

体が温まって来た。

「何て言ったらいいか…ありがとよ」

「いいえ。でもやはり今は鮭釣りは無謀かもしれませんよ。もう少し暖かかくなってから始めましょう」

「…ああ」

客は雪に足を取られないように、帰って行った。


どんな危険が起きても何とかする、それが冒険案内人のお仕事だ。僕は手をこすりながら木に戻って行った。

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