外伝:機械之心
24.閑話:本来の史実…
あの空襲から一ヵ月後…
世界が膠着状態が続いていた…
あれほどの殲滅作戦を行っていたベルフェ・セィタン連合と亜種族国家の鉄血国・獣皇国の赤の枢軸達の戦地拡大は起こらず、防衛用に陣地を後退させていた。
”枢軸どもは急に臆病風に吹かれたか?”
”それとも、慎重になったのか?”
セントーラ王国を主軸にした青の同盟の国々はそんな憶測を決め付け、楽観的に再軍備を行おうとした。
しかし、枢軸側の戦略は違っていた…
戦地を拡大しない代わりに、侵略して防衛線を固めた後に道の整備等のインフラ事業を行い、徹底的に補給路線を強固させた。
彼等の祖先である異界人達が、かつて元の世界で行った大戦争を起こした時に、急激な戦地拡大を行った為に補給路線が途絶え、一度占領していた戦地内で内部抵抗を起こされ、崩壊に繋がった事への教訓として急激な戦地拡大は行わない事を誓っていた。
故に、占領地を手に入れた後は徹底的に内部の抵抗勢力となりえる住民を捕らえ、抵抗勢力の拠点や移動通路になりえる隠れ家や古い下水道などの地下空間を破壊し、監視が出来るように新しく作り直すようにした。
結果、占領された町や村では年老いた女や力のない子どものみとなり、抵抗できる全ての男や若い女は強制的に連行されていった…
無論、それは鉄血国や獣皇国に属していない亜種属の小国でも行われ、同じ様に連れて行かれ、尋問を受けたり強制労働を受けたりしていた…
そんな枢軸国の策略と同盟国の抵抗と小国の争乱による合間に、どの国にも属していない侵攻不可能な森林地帯があった…
その森林地帯の奥にある屋敷にて、高貴な衣装を着た二人の女性がテーブルを挟んで向かい合いながら座ってた…
「よもや、こんな日が差さない薄暗い森の中にあるカビ臭い屋敷にて、憎きセントーラ王家の人間と会うとは…」
「同感ですね…私も、こんな場所で憎き魔族である女王と会う事になるとは思いませんでした」
互いに皮肉を込めながら苛立つも、この場を設けた人物の為にあえて控える事にした二人…
セントーラ王国の亡き国王から生まれた娘の一人、第二王女ティアナ…
鉄血国が成立する前に、魔王を崇拝する過激派魔族を総べていた魔族国の女王エリザベス…
人間と魔族という相反する二つの種族であるが、王家に属していたという共通点を持つ二人が対面しながら、ある人物が来るのを待っていた。
「遅くなって申し訳ありません。ティアナ様、エリザベス様」
「遅いぞ!人間!」
「いえ、お気遣いお構いなく。クリス・ブラウン」
「クリスで結構です、ティアナ様。領土を見捨てた私には、既に家名を名乗ることなど出来ませんので」
簡素な男物の軍服を着たクリスは、後ろにレイアを控えさせながら部屋に入ってきた。
「さて、お二方にお呼びしました事ですが…」
「ふん。大方、あのセィタンとかいう人間の公爵家の事じゃろ?」
「私はベルフェ家を含めた西方側の人間と亜人…コホン、亜種族の話との事でしたが…」
「申し訳ありません。お二方にはそれぞれの理由でお呼びしましたが…此度のお呼びしたのは、それら全て含めてのことです」
クリスはそう言いながら、レイアにティアナとエリザベスの前に幾つかの水晶を差し出すように命じ、話を続けた。
「此度の一連の出来事、そしてこれらの全ての歴史は全て仕組まれていたのです…無論、私達を含めた偽りの聖女達が贄となる勇者に当て馬にされること…それらによる憎しみの怨嗟によって生み出される闘争…長きに隠されたまつろわれた神々による恐るべき計画…それらの全てを、あの魔法を頼らない兵器に対抗する
クリスに促されるように、ティアナとエリザベスはそれぞれの題目が書かれた水晶に目線を送り、水晶から投影される映像を見た…
その映像の中身を見るうちに、二人の顔色は徐々に青ざめていく内容であった…
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