ずっと一緒にいよう 食

仲仁へび(旧:離久)

第1話



 ーー ーー



 僕の好きな人には、彼氏がいる。

 僕が注目しているのは、誰よりも可愛くて、清楚で、可憐でとっても美人な人。

 その人の隣にはいつも、彼女にお似合いの、非の打ちどころのない好青年がいる。


 僕はきっと、そんな人物には、逆立ちしたって敵わないだろう。

 どんなに捜してみても、一つでも彼に勝さる長所が存在しないのだから。


 僕は運動もできないし、勉強もできない。真面目な所も、誠実な所もない。

 まるまると太った体に、道化の様な不細工な顔。見た目も、良い所なんてまったくない。


 一体誰がこんな僕を好きになってくれるのだろう。


 ただの人間ですら振り向いてくれないのだから、可憐な彼女が僕に目を向けてくれるはずがなかった。


 でも、幸いな事に悪知恵だけは働くんだ。


 あの子を奪って僕の物にする。

 そして永遠にずっと一緒にいられるようにするんだ。


 だから、僕は暗闇で彼女を待ち伏せして、攫った。


 誰がイジワルしても、引き裂かれないために、完全に一つになろう。


 彼女の身を包む、余分な物は全てはいで。

 汚れも綺麗に落として、あとは下ごしらえ。


 美味しくさせるために、調味料には気を使わないと。


 メニューを考えていると、台所の鍋がふきこぼれる音がした。

 いけないいけない。

 きちんと火加減を見ておかないと。


 そうだ、食器も出しておかないとね。

 彼女にふさわしい、可愛い食器を買ってきたんだ。


 さて、準備はととのった。

 さあ、僕は彼女を台所に連れてきて、幸せな未来に酔いしれた。


 時間をかけてつくりあげて完成品を前にして、手をあわせた。


「いただきます」そして「ごちそうさま」


 ご飯を食べた後に、ぽっこりふくらんだお腹に喋りかけた。


 これで僕達はずっと一緒だよ。



 ーー ーー


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ずっと一緒にいよう 食 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ