第4話 白銀美桜02

「決定ね。

 ジュエルボックスは、来週の卒業ライブをもって解散します。

 みんな、長いことありがとう」

 美羽の言葉に、涙がこぼれてくる。

 佐那は下唇をかみしめて涙を耐えている。

 詩織は下を向いたままだ。

 一夏はあっさりとした顔で上を向いている。

 この子は泣くことなんてないんだろう。


 なんか、すすり泣く声、美羽の身体が揺れている。

 そう美羽がいちばんがんばってた。

 ジュエルボックスの存続のために、昔知ってる人に声をかけたり、テレビ局に売り込んだり。

 でも、全部うまくいかなかった。


「地震?」

 佐那の声に なんか部屋が揺れてるのみきづく。

 こんなときに地震。


「とりあえず、様子をみよう」


 揺れは長く続く。

 違う。揺れじゃない。

 なんか落下感、エレベーターが降りていくような。

 みんな一夏を中心にあつまる。

 こういうときは頼りになる男前だ。


「だいじょうぶ?

 なにかおかしい!」

 一夏の言葉とともに、まわりの景色が変わる。

 そう景色が真っ暗になって消えたのだ。


「みんな、手をつないで、はぐれちゃだめ」

 美羽の言葉どおり、できるだけみんな身をよせる。

 これ。なんかおかしいよ。


 落下感がいつのまにか止まっている。

 ふわふわと漂っているような感覚。

 どっちが上でどっちが下かわからない。

 そして、急に景色が戻ってくる。

 それは今までの部屋の中じゃなくて、公園のようなところ。

 石造りの道路の端にわたしたちは身をよせて石畳の上にすわっていた。


 なんか、道を通る人たちがわたしたちをじろじろと見ている。

 彼らは日本人ではなく。

 どちらかとういと西洋人って感じだ。

 そうだ、わたしたちは今日のライブのため、衣装に着替えていたんだ。

 フリルのついたメンバーカラーの衣装。

 それは、町ではすごく異質なものだったんだ。


 わたしたちは、そのまま身を隠すようにかがみこんで、この状況を話し合うのだった。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る