凍った息がとけるまで
めづ
第1話白狼の使い手
世界の全てが氷のように冷たかった。幼少期から親には冷たい言葉を浴びせられ、何度も暴力を振るわれた。学校でもいじめられた。もう俺には居場所はなかった。俺の性格が悪いのだと思って自己嫌悪に陥り、鬱になり、何もできなくなった。
「君、能力者?」
夜、家にいるのが辛くなって道をとぼとぼと歩いていると、1人の少女に声をかけられた。
「能力者…?」
「そうか、知らないのね。この世には夜になるとね…」
バキュンと音がして、視界から彼女が突然消えた。彼女は地面に倒れ、頭を必死に押さえている。後ろを振り向くと、1人の黒い男が立っていた。
「それ、俺のものだから触れないでもらえる?でもお宝を引き留めてくれてサンキューな。」
俺のせいでこの子が撃たれた?信じられない。この一瞬でまた俺は他人に迷惑をかけるのか?彼女もこのままだと死んでしまうし、男が何をするかわからない。かと言って武器も何も持ってないから戦えない。俺は何もできない。何も持ってない…?そう言えば彼女は能力が何とかって…
今宵は満月だった。心臓がバクバクと鳴る。目の前の標的に集中し始める。コイツを思いっきり引っ掻いて、噛みついて、殺す。
「やっぱり出たな。白狼の使い手。」
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