第14話
「伸ばしたいよ」
ゆうに160は越えてそうな岡村さんには、わかるまい。
「ふーん。でも、それくらいのほうが、もてるよ」
はぁ?
「それくらいでも、もてませんが」
「……あのさ。もう、身長の話は、とりあえずやめにしてさ」
伍代君は、ずずずっと勢いよくドリンクを飲むと、どんとそれを置いた。
「でもさ、知りたくない?」
ね、知りたいよね、と共感を求めるように伍代君を見ると、「全く、これっぽっちも、一ミリたりとも知りたくない」と返ってきた。
うーん、そうか。
180を越える四条君に、160は越える岡村さん。
そして、四条君には追いつかないまでも背の高い双葉。
そのグループに対して、150をようやく越えた私と、たぶん岡村さんと同じくらいの身長の伍代君は同じグループを形成している仲間だと思ったけど、違ったか。
こりゃ、失礼。
「で、国府田君。百五十円返して、もしくは感想をちょうだい」
双葉に、手のひらを向けて差し出す。
双葉がその上に、自分の手を乗せてくる。
見つめ合う……というよりも、探り合う目と目。
「感想はさ、今度、二人になったときに、ゆっくりと話すよ」
ないな、ない。
こいつからの感想は、一生ない。
ついでに言えば、百五十円も返ってこん。
双葉に向けた手を素早く引き抜くと、奴の手の甲をぴしゃりと叩いた。
「で、伍代君。なに、なんなの、夢のお告げって」
すっと伍代君に向き直り聞くと、伍代君がむせた。
「……げ、げほっ。あ、三矢さんって容赦ないね」
「うん。それ、捨てたから」
私の言ったことがツボにはまったのか、岡村さんが笑いだした。
見ると、四条君と双葉までが笑っている。
「あー、お告げなんて言葉は、双葉が大げさに言ったのであって」
伍代君の言葉に、キレがない。
「あの、俺らさ、紙芝居を作るんだけど」
「うん、それはこの人から聞いた」
双葉を指す。
「うん。それでさ、絵を描くのは四条がいるし、話を朗読するのは以知子がいる。でも肝心の、物語を考える奴が……いない」
伍代君の言葉に、いきなりその場がお通夜のように暗くなった。
「最初はさ、双葉の知り合いがそういった創作活動をしているとかで、参加してくれる予定だったけど」
その話にアンテナがたつ。
「それが、血の雨?」
岡村さんに聞くと、「そ。迷惑な話よ」と返ってきた。
双葉が連れてきた人たちは、噂通り、当時の三年女子生徒で、二人で創作活動をしていたそうだ。
だったら文芸部に入ってくれればよかったのに、と思うが、生島のようにみんなでの活動が面倒だと思う人もいるわけで、そこらへんは仕方ない。
岡村さんは、ふぅとため息をつくと「悪い人たちじゃなかったのよ。でもさ、紙芝居にどろっどろの恋愛話は、ないっていうか」
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