7・シタク

 出発の前、うちらのチームはなんていう名前にしようかとナツミが言いはじめたときに、チームの名前と合わせてこの旗のマークを考えたのである。

 イクサの前には、ハタが必要なのだ、と、ナツミは強く主張したのだった。

 4人の名前にはたまたま、春夏秋冬の四季が含まれていたけど、この旗は四季の色、青春・朱夏・白秋・玄冬とか、東西南北の方位の色、青龍・朱雀・白虎・玄武とはほぼ関係ない。

 ナツミがおれは黒、と言って、いちばん下のますを黒く塗ってしまったから、ほかの3人がバランスを考えてそういう色に決めた。

 チーム名は「ミライ」。

 正確には「ミライへ」、である。


     *


 荷物としては、それからすこし重たいけれども、凍らせた水と冷やした炭酸、それに冷やしたタオル4本。

 なぜかアキラは炭酸飲料しか飲めない、あるいは飲まないから、凍らせることができないのである。

 そしてステアリングの真ん中には、表面の透明ビニールにはさみこむ形で携帯端末のロードマップが見られる小さなバッグ。

 その左右には簡易クーラーをつけた。

 これはバッテリーで2時間くらいは動くはずで、目的地までは持たないかもしれないけれど、ためしに動かしてみたらけっこう涼しくて、バッテリーがヘタると、自転車と連動して充電されるようになっている。

 つまり、それなりの速度で乗り続ければ理論上はずっと涼しい風が来るはずだった。

 もちろん、普通のヒトにはそんなことはできないから、途中で一度ぐらいは充電場所が必要だろう。

 自転車で行く道の途中にはコンビニがいくつかあるはずだし、そこで食料や水やその他必要なものは手に入るはずなんだけど、念のためにロープとか怪我をしたときの簡単な救急用品とかも、コハルの自転車には積めるようになっている。

 第二次大戦後期の、アメリカの艦載機みたいな感じみたいに、コハルの電動アシスト自転車はいろいろ余力がある。

 それに比べるとナツミのは零戦みたいなものだった。

 ミユキのは…メッサーシュミットかスピットファイアかな。


     *


 すこし離れたところの、いつもの広い公園で、しばらく待ってると、家の近くの関係か、ミユキが次にきて、さらに待ってるとナツミがやってきた。

 最後にアキラがその変な自転車、リカンベントで、さらに変な部品をつけてやってきた。

 これはえーと……震電みたいなもんかな、あまりよく知らないけど。

 アキラの自転車のステアリングは、座席の前方ではなく座席の左右にあるため充電式クーラーは前方にはつけられない。

 そしてその代わりに、頭の上から日よけになるような、日陰の幅が調整できる、ベビーカーとか人力車のホロのようなものがつけられていた。

 これをセッティングするのが大変だったんだ、とあきらは説明した。

 しかしけっこう涼しそうで、公園でためしに走らせてみると、コハルの電動アシストつき自転車よりも早いぐらいのスピードで走れたし、日よけの両サイドには空気が抜ける隙間があったので、空気抵抗もあまりなさそうに見えた。

 いいねこれ、とミユキは素直に感心していた。

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