天上天下唯一無敗!

鈴音

第1話 VS絢爛坂金萬!

 俺の名前は天上天下唯一無敗てんじょうてんげゆいいつむはい。生まれてこの方一度も負けたことがねえ。それもそのはずだ。出会ってきた奴らはどいつもこいつも玉の小せえ願いしか持たねえぺらっぺらの阿呆共だからだ。


 今目の前にいる、長々と生まれと育ちを自慢する、「絢爛坂金萬けんらんざかきんまん」なんて女なんて、わかりやすく雑魚だ。金儲けが人間の全てじゃねえ、勝つことが全てだ。強くなり、頂点に登り詰め、たった一人唯一無二にして最強であること! それこそ、人間というものだ。


「……さて、如何かしら?私の麗しく、素晴らしく、輝かしい人生の全ては! 貴方は強き事こそ全てとのたまいましたが……なんてまぁ、愚かしく、醜く、救いようがないのでしょう! その腐った性根、この私が、金が! 是正してさしあげますわぁ!」


 うるっせえええええ!!!! べらべら御託並べやがって!! なぁにが金だ! そんなもん無くっても人間は幸せに生きて行けるんだよぉ!


「がっ、ぎぃぃぃぃやぁ!!! 殴りましたわね! 私の美しい尊顔を! その醜い拳で! 汚しましたわね!?」


 あぁそうだ。てめえのどろどろのその心、水銀で溶かした様な汚ねぇ心を殴って加熱して再加工してやんよ!


「ぐっ、ちょろちょろすばしっこい! 不意打ちの拳といい、無駄に動き回るその動きといい! 名前の割に卑怯に戦いますのね! 情けなっぐええ!」


 腹ががら空きだぞクソアマァ! てめぇが見下して! 嘲笑って踏みつけたあの人たちはなぁ、今も腹空かせて苦しんでんだ! その拳はその分! そして! この蹴りはその悪趣味な服に泥を付ける分だ!


「ぐっ……あぁんもう! この貧乏人! けだもの! いい加減やめなさい! ……次はこっちの番よ!」


 んなっ、だそりゃ!? おいおいおい形状が明らかに人間に向けていいもんじゃねえだろそのライフル!?


「ご名答、これぞ私が金に糸目をつけず作った最終兵器……ゴルドカルバーン! 特製の徹甲爆裂弾を味わって死にさらせぇ! ……ってあれ、これどうやって動かしますの? こうかしら?

あれあれ? 」


 (……どうするよどうするよ! あんなんまともに食らったら臓物が綺麗にハンバーグになっちまう! くそっ、変形機構に手間取ってる今仕留めるか? いや、暴発しただけでも、それに巻き込まれただけでも死にかねない! 何か、打つ手は……)


「まったく! これ使いにくいわ! 後で文句言いに行きましょう……さ、お待たせしま、し………た? あれ、どこ行きましたの?」


 いぃやっはぁぁー! そうじゃん! なんも突っ込まなくても上から行きゃいいんだ! 喰らえ! 必殺天上落とし!


「ぐむっ……んぐぐぐぐ……! それ、ただの踵落としじゃないですのー!!」


 ぐおおおお!? 思ったより爆発したぞあのライフル! 安全設計どうなってんだよ!


 ……ったくもー、倒したのはいいけど真っ黒焦げだぜ。この服、気に入ってたのになぁ。っと。


 さぁて、このカバンの中にはおいくら万円入ってるのかなー。


「ま、待ちなさい、唯一無敗。これで終わったと思わない事ね。これから、私を拾ってくれたあの人たちが貴方を襲うわ。そう、きっとね。その時が、貴方の終わりよ」


 ふーんあっそ。うわっ、5000兆円入ってるじゃん。ラッキー全部貧民街の仲間たちと山分けしよー

 

「えっちょ待ってそれ私の家の全財産なのだけど、私それ無くなったら行く先無くなりますのよ?」


 ふーんあっそ。じゃあな。


 ――俺は金萬の叫びを背に立ち去った。さて、こっからさらに刺激的な奴らと戦える……俺が唯一無敗になるための、新たなる一歩を刻めるんだ。


 かかってこい、全ての雑魚ども!

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