魔女が剣を握ったら……

豚肉の加工品

第1話 それは運命の始まり

 空は快晴。雲ひとつない青空が広がっている。

 気温も春らしく心地が良く、風が当たると何だか少し気分が良い。

 その青空の下、年齢で言えば三歳から四歳ほどの幼子たちは公園の遊具で楽しそうに遊んでいた。それはなんとも平和な光景で、保育園の先生たちもその小さな平和を見守っているように見える。

 ただその中で一人、遊具に夢中になっている子供たちに混ざらない子供男の子がいた。

 太陽の光にあたれば、その黒い髪が輝く。

 その顔は可愛らしく、子供だから可愛いというよりも女性だったら将来モデルにでもなるのではないかと思うほど可愛らしかった。

 瞳もまた黒い宝石のような綺羅びやかさがあった。光に反射しても黒く染まった瞳、ぱっちりと開いたその瞼。

 顔のパーツのどれをとっても、少年というよりかは少女と言われた方がしっくりくるものがあった。

 そして子供は木陰に座り一冊の本を取り出した。

 その本は相当古いものなのか題名の文字が掠れて見えなく閉じていても分かるほどにページの端は擦れて黄ばんでいる。

 子供が読むような本ではないことは一目瞭然だが、その子は楽しそうに……それはもう遊具で楽しんでいる元気な子供たちと同じような表情で本にのめり込んでいる様子だ。


「今日はどこが読めるかなぁ」


 黄ばんだページをめくり続け、手を止める。


「ここなら読めそうだ」


 子供、ましてや大人でも読むのに時間がかかるような虫食いがあるページをすらすらと読み進めていく。

 

 『人類は本来、手に入れてはいけない力を手に入れた。

 作物を豊かにするために、枯れた大地に雨を降らせるために、荒れた海原をなだめるために、森林を鮮やかにするために、物を作るために、人を救うために。

 彼らは願い、乞い、祈ることで、世界に〝神〟を呼び出した。

 それは。

 田畑を恵む神であり

 天候を統べる神であり

 広大な大海原を制している神であり

 木々を生み出す神であり

 物を作る神であり

 命を司る神だ。


これは人類と神々が邂逅し、初めて契約した瞬間だった…………』


 掠れた文字、破かれたページ、焦げて見ることすらできない題名。

 だが、その子供は止まることなく

 その本の文字が読めるという何の変哲もないことが、たったそれだけのことで子供の運命と、古から伝わる御伽噺の運命を大きく変えることを、まだ誰も知らない……。




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