回覧板 (仮) 5人台本

サイ

第1話

 トイレで3人の生徒が1人の生徒を取り囲み、バケツで水を浴びせた



成田:お前さ、ほんとむかつく。なんで来てんの。


松山:てか、そろそろ先生来るよ。もう行こう。


高松:やば。こうはなりたくないわー。



 3人はゆっくりとトイレをあとにする



逢坂:(m)もう限界。


逢坂:(m)どうして、わたしだけ。


中部:逢坂さん!



 走って1人の女性がトイレに入ってくる。



逢坂:中部先生…。


中部:逢坂さん…びしょびしょじゃない…大丈夫?


逢坂:……。



 逢坂は黙って裾をしぼる。



中部:逢坂さんっ…!


逢坂:…大丈夫です。


中部:とっ…とりあえず、保健室に行こう!着替え貸してもらえるし!あと、用務員室からドライヤーも借りて…


逢坂:(かぶせるように)先生。私大丈夫なので。失礼します。


中部:ちょっと…逢坂さん!



逢坂:(m)いじめられるのは、つらい。


逢坂:(m)でも、安全な岸から手を差し伸べられるのは、


逢坂:(m)心底腹が立つ。


逢坂:(m)私の痛みを何も知らないくせに。


逢坂:(m)先生も同じ目に遭えば、痛みをわかってくれるんだろうけど。


逢坂:(m)…そうよ、先生がいじめに遭えば、私はターゲットから外れるかもしれない。


逢坂:(m)早く、楽になりたい。



 逢坂はスマホである文書を作成した。





 成田はベッドの上でしかめ面でスマホを見ている



成田:はぁ、迷惑メール多すぎ。お母さんにキャリアメールは使うから置いとけって言われたけど…面倒すぎる。


成田:なーにが「梅潤ですけど…」よ。今を輝くトップアイドルがキャリアメール使ってるはずないじゃん。


成田:とはいえ、あるわけないじゃんってツッコミながら見るの、ちょっと面白いけど。


成田:あとは…え、何このメール。



 成田は思わずメールを開いた。



 ー翌日ー



松山:あ、てか成田ぁ。昨日のあのメール、何?


成田:知らない。廻(まわ)ってきたから、廻しただけ。


松山:(へらへらと)いや、廻すなよ。きもすぎるわ。


高松:そういう松山ちゃんこそ、私に廻してたじゃん。笑うわぁ。


松山:だって「回覧板」って書いてあったらさぁ…廻したくなるじゃん。


高松:たしかにそうだけどさぁ。


成田:あれ、誰が廻し始めたんだろうね。


高松:さぁ?誰だろ。


松山:てか、あの添付ファイル、見た?


高松:見た見た…あれ本物?だとしたら相当やばくない?


成田:いや、さすがに合成でしょ。


高松:えー、合成かぁ。本物だったら面白かったのになぁ。


松山:てかさぁ…。


成田:何?


松山:本物じゃなくてもよくね?


高松:あーたしかに。合成でもあんな画像広まったら終わっちゃうね。やば。


松山:あいつむかつくもんなぁ。


成田:…終わらせちゃおっか。


松山:まじで?でも面白そう。…てか今メールどこまで廻ってんだろ。みんなに聞いてみるわ。




◯:メールはクラス内にとどまらず、クラス外、異学年にも廻った。


◯:以下はそのメールの内容である。


◯:Fwd.(フォワード)臨空学園高等部回覧板


◯:回覧板です。このメールをそのまま出席番号が次の人に転送してください。

 

 

◯:添付ファイル


◯:添付ファイルには1枚の画像データが貼られていた。



 ー数日後ー



中部:おはようございます、皆さん。

 


 中部はにこやかに教室に入る



中部:それでは、出席を取りますね。


成田:先生。ちょっと聞きたいことがあるんですけど。


中部:成田さん、どうしましたか?


成田:回覧板のあれ、ほんとなんですか。


中部:え?回覧板…?


高松:これ。



 A4サイズのコピー用紙に添付画像が印刷されたものを掲げる



中部:えっ……。


松山:てか先生…超えろいっすね。脱ぐとすごいんだぁ。


中部:そんな…ちが…


高松:先生おっきーい!やばー!



 生徒たちが口々にはやし立てる



中部:いや…!

 


 中部は教室を出ていった



中部:はぁ…はぁ…!



 中部は誰もいないはずの理科室へと逃げ込んだ

 

 しかしそこには1人の人影があった

 

 人影は歌う



逢坂:『廻して頂戴 回覧板』


逢坂:『知らせられたり 知らせたり』…


中部:お…逢坂さん…?

 


 逢坂はゆっくり振り返る



逢坂:先生、お疲れ様です。廻していただけました?回覧板。


中部:どういうことなの?!あれを廻したのは逢坂さんなの?!


逢坂:さぁ、どうでしょうね。


中部:そんな…!!


逢坂:辛いなら、先生も廻したらいいんですよ。


中部:…どういうこと?


逢坂:不幸を、標的を、他人に「まわす」んです。そうしたら、あなたの手元にはなくなる。あなたは晴れてーー


中部:(食いぎみに)そんなことできるわけないじゃない!そんなことしたら…新たな被害者が…


逢坂:…そうですか。じゃあせいぜい頑張ってください。被害者が増えないに越したことはないですから。


中部:ちょ、ちょっと待って…



 逢坂は理科室をあとにする




 ー数週間後ー



 トイレで3人の生徒が1人の教師を取り囲み、バケツで水を浴びせた



成田:先生さー、誰のおかげで「先生」続けられてるかわかってるよね?


高松:クラスの男子が言ってたよー?えーぶいの表紙みたいだって!やばー!


松山:てか、そういう女優さんはほんとに教師したりしてないから。


高松:現役教師でありながら女優とかまじでやばくない?


成田:先生の「超優秀な生徒」が、先生を終わらせたくないから、寛大な心であれを許して、他の教師にも保護者にも言ってないんだよ?


松山:別に先生がいいなら、保護者にでも誰にでも言うけどね。


中部:そ、それだけは…勘弁してください…!


成田:だったら。「超優秀な生徒」のために、何でもできるよね?


中部:……。


成田:脱げよ。ここで。


高松:先生の生下着姿、見たーい。



 中部は目に涙を溜める



松山:てか、この姿でも十分絵になるけどね。


高松:えー。脱いでよー。


成田:…生徒のため、だよね?


中部:いや…いや…っ!!



 中部は走って逃げ出す



高松:…行っちゃった。どうする?


成田:いいよ、別に。あんまり追い込んで飛び降りちゃったりして、こっちのせいにされても嫌だし。


松山:それな。ほっとけほっとけ。




中部:(m)もう…もう限界…。


中部:(m)これで私が楽になれるのなら…。


中部:(m)ごめんなさい…ごめんなさい…。



 中部はスマートフォンの画面をタップする。




 ー数日後ー



◇:とあるメールがクラス内に廻っていた。


◇:Fwd.臨空学園高等部回覧板

◇:回覧板です。このメールをそのまま出席番号が次の人に転送してください。

 

 

◇:添付ファイル


◇:添付ファイルには1枚の画像データが貼られていた。




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