#07 丁寧に残酷に

 冠葉神社前。

 神社内に建物はあまりないが、一つだけ、誰でも出入りできるような建物があったはずだ。


 ということで、僕はそこに彼女がいるんだろうと思い、扉を……


 開けようとしたその瞬間、銃弾が肩を貫通し、扉を貫通した。

 瞬間、飛び散る液体。

 後ろに目を向ける。こりゃまた見たことない銃を持っている男が二人立っている。

 この前の列車の時も訳わからない銃を持った奴がいたよな??


「    」


 口を開いたのに、声が耳に届かない。

 待て。どういう状況だ??


 ああ!もう!


 肩は痛いし、声は出せないし!!

 って、あれ。肩、別に痛くない…?


 見ると肩に穴なんて空いていなく、元の肩に戻っている。

 銃を持った男は腑抜けた顔をしていた。

 それを嘲笑っている時。視界の端から白い武器が飛んできた。


 この特徴的な白い武器…!


「海斗さん!」


 声が出た!


「…界術か」

「界術?」

「説明はあとだ。今はこいつらをボコすのが先決。いけるか?学生」

「…いいっすよ、僕も昂ってる」


 数週間振りの、戦い。

 なんとなく、興に乗っている僕は、【懐かしさ】を思い出す。

 いつしかこんなふうに戦った気がするのだ。


 目の前には敵が二人。


 片方は拳銃持ち、もう片方は、【界術】というものを持っていると思う。


 だったら。


 【微細な力】を空間に作用し。そこへ、体感一秒以下で辿り着く。

 遠距離から潰したほうがいい。

 拳銃を持っていたやつの腕を掴み、足払い。

 反応できなかったそいつは見事に宙に浮き、僕は拳銃を盗むことに…

 いや。できない。


「すまんなぁ、この銃は一心同体なんだよなぁ」


 そいつの手のひらに釘でくっついていた。


「学生!」


 その声と同時に、もう一人が持っていた【界術】が発動した。


 何が起きたのか。

 【視界】が暗転した。と言えば正しいのか?

 とりあえず、暗闇に染まったのだ。


 そして。首元をかっ裂かれ、意識を失った。


 *


「なんだ、【舟橋ターゲット】じゃねえのか」

「…もっかい呼ぶか?」

「いや。無理だな…よかったな、クソガキ」


 と、蹴り。僕の腹に入る。僕が女だったら子供が産めなくなるだろ。


「クソガキで悪かったなぁ」


 その時、俺は。久しぶりに【こっち】の世界にやってきた。約2年ぶりか。

 覚醒した意識に順応しながら、辺りを見渡す。

 倒れてる警察、女、敵が二人、偵察が一人、あとは…


 周りに人は、【6人】。


「な、なんだお前…さっきとは、何かが違う…」

「…んなこといいだろ。お前らが敵だろ?違うか?」

「…だったらなんだ?」

「ふ、準備体操には良さそうだ」


 目の前の【界術】を扱う男は、俺の視界を使えないようにした。目の前が真っ暗。いや、目が使えなくなった。

 でも。それはあいつも同じだ。


 この【能力】の特徴は【共通】。自分を代償にして、相手に同じ【縛】を課す。

響縛きょうばく】。


 だから。


「止まってていいのか?」


 俺は、【刹那の速さ】で移動して、そいつの背中を蹴飛ばす。


「割と使いやすい能力…だな」


 そいつが持っていた箱が閉じると、暗転した世界に慣れない眼は明順応した。


 隣の銃のやつは、2発発砲するが。

 見えて尚、細切れの世界を移動できる俺は余裕綽々で避ける。


「なんで避けれんだよ!?当たってたじゃねぇかさっき!」


 リロード。


「当たった…?さっき…?」


 俺の体には、銃が当たったような痕跡はない。

 ふと両手を見ると。右手の薬指に指輪があった。


「……なるほどね」

「死ねや!クソガキがぁ!!」


 きっとリロードした分の銃弾を全て俺に撃ったんだろう。

 俺の体に命中はするが、貫通するんだ。

 痛みもある。


「なんで!」


 俺は、そいつの頭に頭突きを入れた。

 そいつは脳震盪を起こしたか、地に伏した。


「この指輪の力のせいか。」


 体に害があるような威力、速度があると、その部分の体が【液化】するんだ。

 痛みは水に飛び込んだ時の痛みのような。


「おもしろい」


 俺は、こいつの別人格。

 気づいているのは俺の方だけだ。

 別人格は、記憶の共有はされず、互いの存在を知らないはずだが。


 俺が出る時はいつも戦闘時。


 そして、指輪やら、敵やら、偵察が一人…

 謎は結構残っている。


「また、めんどくさいことに巻き込まれてるんだなぁ、こいつ。謎解きは任せたぜ、葵」


 と、独り言は浮かんで消え、倒れた。


 *


「あぁ、やっぱりそうなんだね…」


 さっきの葵を見て確信した。いや、もうあれは葵なんかじゃない。別の何かだ。

 あれが【もう一人】の人間……を消滅させたやつだ。


 【あの時】の踏切の音が響いて、返ってくる。


 やっぱりこいつは…【】るべきだった。


 ボクのネックレスは赤黒く、鈍色に光り輝いた。その色はきっと、【復讐】の色なんだろう。

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