その翼に誇りを、その瞳に覇天の輝きを 18

「ただいま~」


「お帰り、カローナ君。見事にワイバーン型を討伐したようだね」


「相当苦労したけどね……こっちに人員を振ってくれたの、ジョセフさんよね? ありがとう、助かったわ」


「何、私は君たちの配信を見て集まってきたプレイヤーをワイバーン型へと誘導しただけだよ。それで助けになったのなら何よりだ」


 ・カローナ様に笑顔でお礼言われて表情一つ変えないジョセフ先生よ

 ・まぁ先生は中身もおじさんだし

 ・年下どころか一回りも下のJKを見て鼻の下伸ばしてる俺らとは違うんだろ



「それで、ワイバーンを倒したしドラゴンを復活できないかなって。必要な魔石ってこれでしょ?」



 そう言って、インベントリから『古龍の始原核』を取り出す。

 深い紺青こんじょう色のその結晶は、まるで星空のようにキラキラと光を反射し、とても美しい。



「ふむ、どうかね? ホーエンハイムよ」


「問題ない。少し時間はかかるがね」


「じゃあお任せするわ」



 ドラゴンの石像はすでに渡してあるし、『古龍の始原核』も渡して、と……

 さて、次はウンディーネのところへ———



「まぁ待ちたまえ。いくつか質問してもいいかね?」


「え? いいけど、何かしら」


「オルトロス型が討伐されたとき、MVPとラストアタックの発表が無かったのだが、それは知っているかね?」


「え? ……確かに」


「ワイバーン型の討伐時にはあったそれが、オルトロス型の時には無かった。それはつまり、プレイヤーではない何者かが、オルトロス型を討伐したのではないか?」


 ・確かに

 ・言われるまで気づかなかった

 ・プレイヤーじゃない何者かって何!?

 ・やっぱこの人の洞察力半端ねぇ



「ワイバーン型の出現場所は【極彩色の大樹海】。そういえば、カローナ君も【極彩色の大樹海】で『女王魔蜂の刻印』を受けたのだったね? ワイバーン型を討伐した何者かに、君は心当たりがあるのでは? 女王魔蜂と何があったのかを教えてくれないかね?」


 ・あっ(察し)

 ・あっ(察し)

 ・あっ(察し)



「おっとごめんもうこんな時間だ! 早くウンディーネのところに行かなきゃ!」



 【パドル・ロール】起動!

 新たな敵が私を待ってるぜぇ!!



「あっ……まったく、忙しないプレイヤーだ。後で聞きださねばな」


 ・草

 ・逃げたww

 ・ジョセフのプレッシャーが怖いし

 ・でも逃げたってことはなんかあったってことだよね

 ・バレバレで草



        ♢♢♢♢



 堕龍タイタンとの戦場となった地点から100kmほど離れた場所で、Mr.Qとスターストライプの二人は顔を突き合わせて話をしていた。



「とりあえず、今のタイタンは?」


「あー……シャクトリムシみたいに地面を這って移動しているな」



 【千里眼】を使って遠方に目を向けたMr.Qはそう呟いた。

 ボコボコと溶岩を噴き出す【ターミナル・オロバス】を、身体を伸び縮みさせて移動している堕龍タイタンが目に映っているようだ。



「動きはそんなに速くないが、火山地帯から抜けられたら厄介だ。さっさと話をまとめようか。まずは……堕龍タイタンの最後のあの……バカみたいな火力のアビリティ、お前見覚えあるよな?」


「見覚えあるというか、使ったこともある。あの黄金の光は間違いないネ」


「やっぱそうだよなぁ」



 Mr.Qとスターストライプが至った結論。

 それは、堕龍タイタンが使ったあのアビリティは【究極の神技アルス・マグナ・ウルティムス———ティタノマキア】だということだ。


 【ティタノマキア】は、決してスターストライプだけが持つアビリティという訳ではなく、アビリティの進化を極めれば誰でも習得できるアビリティである。



「まさかとは思うが、俺らが来るまでに食われた誰かが【ティタノマキア】を持っていたか?」


「いや、あれを習得しているプレイヤーがその辺に居るとは思えないネ」



 『誰でも習得できる』というのは、あくまでも『習得できる可能性がある』というだけで、今現在【ティタノマキア】を習得しているのはほんのごく僅かである。



「つまり、アビリティを真似されたと?」


「まぁ、半分は勘だけどネ」


「なら他のアビリティも真似される可能性はあるな」


「可能性はネ。ただ、【ティタノマキア】のリキャストは一週間。もう一度使ってくる可能性が無いのがラッキーだ」


「それもそうか。はぁ……いい加減、堕龍タイタンのことが分からなくなってきたな」



 あれだけスターストライプを無視してMr.Qばかりを狙っていたのに、突然スターストライプのアビリティを模倣して使ってくる。


 その行動原理はなんだ?



 正直、もっと触手を増やして【アヴィス・アラーネア】や【マリオネット・オーダー】を使われたら終わっていた。そうしなかった理由は?



 【ティタノマキア】が一番効いた・・・からか?


 確かに、堕龍タイタン暴乱狂バーサークフォージモードになったのも、あの一撃のすぐ後だったしな。



「そもそもさ、なんであいつは俺ばっかり狙ってきたんだ? ヘイトコントロールも無視されたよな?」


「そうだネぇ……。さすがに俺もちょっとムカついたな」


「【挑発】も効かないということは、それ以上にタイタンのヘイトを集める何かがあるということだろ?」


「あれだろ? スペリオルクエストが発生した時のアナウンスで、『奪われしものを求めて、堕龍おろちがその身を分かつ』ってやつ。奪われしものって?」


「……もしかして、これか?」



 Mr.Qがインベントリから取り出したのは、『残されし希望』———ドラゴンの石像を取り出す。


 【霧隠れの霊廟】を攻略した際にこれを回収したが、その時の堕龍おろちの反応は顕著なものだった。


 そう考えれば確かに、これが『奪われしもの』だという可能性が高い。

 だとしたら……これをエサに堕龍タイタンの動きを誘えるか?



「とりあえずジョセフに連絡しよう。あの人なら今頃堕龍おろちについての解明が進んでるだろうし」


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