その翼に誇りを、その瞳に覇天の輝きを 14
「ヘイ、カマーンッ!」
わざとらしくエセ英語風にそう叫んだスターストライプは、ヘイトを集中させるアビリティ、【挑発】を発動して
はずであった。
当の
カカカカッ! と連続音を立てて6本の矢が
矢を放ったのはもちろんMr.Qだ。
「アンチクリティカルはだいたい80%ってところか? 狙うにはマゾすぎる。火はゴミ、土か光、次点で水がマストだな。打撃頼む」
「おいおい、つれない奴だな。こっちも見てくれよ! 【ジョルト・ブラスター】!」
なぜか無視されているスターストライプが、いつの間にか
まるで硬いアスファルトに超重量の鉄筋でも落としたかのような凄まじい轟音と共に、
「打撃は通りそう! だけどめっちゃ硬いって感じ!」
「だからその耐性がどれぐらいなのかを知りたかったんだが……まぁお前は最初から感覚派だったな」
【ジョルト・ブラスター】は高威力かつ装甲破壊効果、そして
しかし、それでも。
「また俺かよ!」
ガキィンッ! と音を立てて、
「いやエグい! 耐久の高い
「動きが緩慢で高火力、高耐久。殴りやすいタイプだネ!」
「んなこと言ってる場合か! 次来るぞ!」
しかも地面がひび割れて、隙間から溶岩が溢れてきた。
足場制限はキツいな。
けど、振り下ろしまでに3秒、振り下ろしてからも3秒。
隙は多いから狙い目か。
とりあえず【ペネトリースパーダ】を放り込んでおく。
ダメージは僅か。
案の定クリティカルは発生せず、斬撃系攻撃もダメだなこりゃ。
おっと、地面を砕いてできた岩を持ち上げて……?
「回避ぃっ!」
「Oooops!」
投げつけられた岩が地面にぶつかり、激しく地割れを起こしながら破片を散乱させた。弾丸のような破片が当たる度にHPが削られる。さらに岩によって地面の一部がひび割れ、その隙間から溶岩が滲み出てきたのが見て取れる。
「まずいネ、これ」
「くっそ、俺ばっか狙いやがって……俺なんかしたか?」
「殴りやすい顔だしネ」
「お前も喧嘩売ってんのか? そもそもが火山帯っていうフィールドが俺らにとっては不利だし、どうする?」
「とりあえず、あの装甲を何とかしないとマグマに落としても生きてるネきっと。もしかしなくてもあれ、この辺に住む『
「みたいだな」
どうやら
察するところ……『捕食した相手の能力を奪う』ってところか。
「ほんと、『アーカイブ』に頼んでこの辺りに他のプレイヤーが来ないようにして正解だったな」
もともと攻略難易度の高い【ターミナル・オロバス】には、訪れるプレイヤーは少ない。さらに『アーカイブ』の働きかけによってこの周辺のプレイヤーは
おかげで、他のプレイヤーが
「けど、おかげで二人で相手することになったけどな」
「素材を二人だけで山分けさせてくれるんだって? アネファンプレイヤーはみんな太っ腹じゃないか!」
「お前が敢闘精神旺盛で助かるよ、本当。次で
「
スターストライプが、声とともに足を踏み鳴らす。
ズンッ! と明らかに尋常ではない音を立てた足元には蜘蛛の巣状のヒビが広がり、凄まじい威力で足が振り下ろされたことが分かる。
グラップラー系隠し上位
使用中、AGIの大幅ダウンや防御系アビリティの使用不可など、様々なデメリットがあるが、次に放つ攻撃アビリティの威力を著しく上昇させることができるのだ。
そんなスターストライプの様子を見つつ、Mr.Qは
「Gyarararararararara」
「ほら来た。【インダクション・ディフェンス】!」
振り下ろされた
【インダクション・ディフェンス】は、誘導防御———つまり、一定範囲内の攻撃に対し、自動的に盾へ攻撃を誘導して受け止めることができるアビリティだ。
これにより、本来身体を狙ったはずの触手は軌道を変え、Mr.Qの盾へと吸い込まれる。そして、パリィ成功。
しかし、二人の攻撃は終わっていない。何しろ、
「Good job! 【グラウンド・ゼロ】!」
「Gyararara!?」
その名の通り、スターストライプを爆心地として炸裂したその攻撃は、【震脚】のバフと相まって
その爆発に巻き込まれたMr.Qはと言うと———爆風を盾で受けつつブースター替わりに使い、【アクセルダイブ】発動。
【アクセルダイブ】は、移動+単体攻撃のアビリティだ。
移動効果にはAGIバフが付与されるうえ、スターストライプの【グラウンド・ゼロ】の爆風に後押しされたスピードは尋常ではない。
一瞬で
続いて
足元にいるMr.Qはともかく、硬直中のスターストライプに避ける術はない。
が、
Mr.Qはスターストライプに括りつけられた糸を引っ張り、硬直中のスターストライプを無理やり引き寄せる。本人の意思では動くことができなくても、外からの力なら動かすことはできるのだ。
轟音とともに砂煙が舞うが、すでにそこにスターストライプの姿はなかった。
「Gyararararararararara!」
「ヒューッ! 九死に一生ってネ!」
「楽観的だな!? 次だ、
「
再び、地面を振るわせてスターストライプが一歩を踏み出す。
一歩、二歩と歩みを進めるたびに彼を包むアビリティエフェクトが強まり、次の攻撃を待ちわびていた。
【震脚】は何度でも発動することができ、その効果は重複する。
一度の【震脚】バフで装甲にヒビを入れたのだ。何度もバフを重ねた次の攻撃がどれほどのものか、想像に難くない。
問題は、それをどうやって当てるかということだ。
「ほら、こっちだデカブツ!」
「Gyarara?」
Mr.Qが投げた
そして地面を砕いた岩を持ち上げ———
「それを待ってた。【アヴィス・アラーネア】!」
通り過ぎたはずの
さらに、
「Gyara!?」
「人間もそうだけど……重い物を持ち上げているときに、重心が後ろに傾いたらどうなると思う? ほんの少しでいいんだよ、人型の相手を転ばすのなんて」
岩を掴む腕を後ろに引っ張られた
その先に待っていたのは、【震脚】を6歩分溜め、眩いばかりのエフェクトを纏うスターストライプだ。
ここまで全て、二人の掌の上。
「【
スターストライプの拳に神が宿る。
まるで後光が差しているかのように、黄金の光を放つその一撃は、天地に轟く究極の一撃。
すでに倒れ始めている
アビリティリキャスト
「———ティタノマキア】!」
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