極彩色の女王 7(決着)
まえがき
女王蜂との関係を持たせたかったのよね。
どうか良好な関係が続きますように……
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別に彼女が味方になったわけでは無い。
たまたま共通の敵が現れて利害が一致しただけだ。
しかし、今の私にとってはこれ以上なく心強い。
と言うか女王蜂さん、私と戦っていた時より火力上がってない?
もしかして、瀕死状態から復帰することでパワーアップするとかいう、某戦闘民族的な能力があったりするの?
……マジでありそう。ユニークモンスターの名は伊達ではないということだ。
いっそのこと、この女王蜂さんを強化しまくったらどうなるんだろ。
手に持っていた『ヴィクトリアン・スイーパー』を暫く見つめた後、
そんな私を一瞥した女王蜂は、モップを掴み取ると確かめるようにクルクルと振り回す。
「さぁ終わらせましょうか、
兄弟じゃなくて姉妹なんだけどね!
【パ・ドゥ・シュヴァル】発動!
【アクセルステップ】のAGI強化+【パ・ドゥ・シュヴァル】の移動効果の組み合わせによる高速移動だ。例え魂喰らう魔剣でステータスが上がっていようと、スピードだけなら誰にも……!
えっ、ちょっ、普通に女王蜂に抜かれたんだが?
後追いでぶち抜くとかどんなAGIしてんの?
てかそのエフェクト、まさか【ワイドスラッシュ】?
え、私のアビリティを見て覚えた?
視認すら難しいほどの速さで振り抜かれたモップから放たれた衝撃波が
尋常ではないダメージエフェクトが弾け、【神斬舞】にすら耐えて見せたVITを貫いたことが分かる。
……もしかして、女王蜂に武器を渡したのはやりすぎだったかも。
あまりのパワーアップに恐ろしさを覚えつつ、一先ずその考えは頭の片隅に追いやる。
アビリティ後の硬直で停まる女王蜂の横を抜け、『ヴィクトリアン・ナイフ』を構えて
「【神斬舞】っ!」
「グォォッ!」
【パ・ドゥ・シュヴァル】の勢いをそのままに飛び込んだ私は、
クリティカル発生。
ただでさえ動けない
瞬間、ゾクリと肌が泡立つ。
尋常じゃない殺気が
直後、紫電を纏う深黒のエフェクトが私の頭上を通り抜け、木にめり込む
確信した。今のは絶対【ピアースレイド】でしょ。しかも、【魔纏】で女王蜂が持つ毒らしき攻撃が乗った一撃だ。
……あわよくば私を巻き込もうとしてません?
チラリと肩越しに女王蜂に目をやると、『ほら、行けよ』と言わんばかりに顎をクイッとする。
くっ……絶対確信犯だこれ……。
まぁいいや。
確かに今がチャンス。
女王蜂の【ピアースレイド】の貫通効果によって、
私の仕事は、この傷を回復させないことだ!
「【シークエンスエッジ】!」
両手に握る『ヴィクトリアン・ナイフ』が白銀の軌跡を宙に描き、回復しつつある
おっと、流石に反撃は来るよね。十分引き寄せて……ここっ!
「【流葉】っ!」
普通なら到底拮抗出来ない程のSTRの差も、クリティカルのタイミングでのパリィであれば問題ない。拳の勢いは衰えずとも、その軌道は逸れて私の頭上を通り過ぎ———
ビキッ!
あっ、やばっ。
『ヴィクトリアン・ナイフの耐久値が0になりました』
ア――――――ッ! やらかした! 破損寸前ってわかってたのにカッコつけてパリィとか狙うんじゃなかった!
……こうなると武器をもっと大量に作っておくか、武器に頼らない攻撃アビリティが欲しくなってくるなぁ。
よしっ、なっちゃったものは仕方がない。私はもう丸腰だから……ラスト一発、頼んだわよ女王蜂さん。
破損した『ヴィクトリアン・ナイフ』をインベントリに放り込みつつ、瞬時に横へ避ける。そんな私を目で追っていた
「ガッ?」
凄まじい勢いで投擲された『ヴィクトリアン・スイーパー』が寸分違わず
続く女王蜂の攻撃を、
直後、一瞬で上下に振り抜かれたその一撃は、背後の木を引き裂き、地面を抉り、
ほんの数秒間の静けさが漂った後、パキパキと音を立てて
『———荒ぶる亡者の魂は、今一度安寧を手に入れた』
『
『討伐者
あ、
あ、でも相手はもともとPKerだったし、キルしてもこっちには関係ないか。
『
死して尚生を貪る亡者の魂は、所有者の命と引き換えに強大な力を授ける。その力に魅入られた者は数知れず、最悪の未来が見えているにも関わらずそれを求める者は後を絶たない。不浄なる魂を喰らい続けたその魔剣は、今なお生者の魂を追い求める。
うーん、要らないかな、これ……。私剣術アビリティ持ってる訳じゃないし、PKになるつもりもない。
かと言って曰く付きの武器だし、換金できるかと言えば微妙なところ……。
へい
徐に魔剣を差し出す私の意図が伝わったのか、女王蜂はしばらく私を訝し気に見つめた後、魔剣を手に取りモップを返してくれた。
「やー、ありがとう! おかげであのPkerも倒すことができたし、助かったわ。宴もたけなわってことで、そろそろお暇——あ゛っ!?」
———次の瞬間、黒紫のオーラを纏う、ナイフのように鋭い
ゲームだから痛みは無いが、身体に何かが流れ込んでくるような感覚に襲われる。
当然紙装甲の私が耐えられるはずもなく、HPが0となり身体がポリゴンとなって消えていく。徐々に薄れていく視界の中、最後に見えた
それでも、並々ならぬ何かを秘めているのだと思うのは、私が彼女に肩入れし過ぎたからだろうか――
『深緑の主は解答を得た』
『プレイヤー名: カローナ が深緑の主より
『称号: 《女王蜂候補》 を獲得!』
『プレイヤー名: カローナ に女王魔蜂の刻印が刻まれた』
『ソノ時ガ来タラ再ビ相見エヨウ――』
『―――因子と《ファンタジア》が混ざり合う―――』
『アビリティ:【
『ユニーククエスト・
♢♢♢♢
暗転……やる気が無くなり、そのままログアウトした。
現実世界の自室のベッドの上で、VRゴーグルを外した私は大きなため息を溢す。
良い感じで終われると思ったのに、結局このオチかよぉっ!!
あんの女王蜂めぇ……最後のポーション使ってまで助けてあげたって言うのに、眉間貫かれるとは思わなかったわ……。
弱ってるし、ついでに殺しておこうってか?
わたしゃゴキブリか。
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あとがき
《ファンタジア》とはいったい何なのか。
ここに詰まっている情報量がえげつない(設定の半分)ので、自由に考察していただけるとありがたいです。
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