ゲーム開始!……の前に。
「ハヤト」
「ん? 何、お姉ちゃん?」
今日の配信を終えた後、暇そうにしていた弟のハヤト——
男なのに私より身長が低いのはアレだけど、私の目から見ても可愛い系の男の子だと思う。私のクラスの女子からも、密かに人気があるんだよねぇ。本人は気付いていないけど。
「『アネックス・ファンタジア』って?」
「ああ!」
「……そういうギャグは良いから」
「今最も有名なVRゲームだよ。名前ぐらいは知ってるんじゃない? お姉ちゃんもやるの?」
「まぁ、たまには格ゲー以外もやってみようかなって」
「珍しいね」
「でも私、基本格ゲー専門だからオープンフィールドのゲームってあんまりやったこと無いのよね。これはどんなゲーム?」
「簡単に言うと、狩猟系アクションゲームかな? プレイヤーは冒険者として世界中を旅しながら、登場するモンスターを討伐して素材を集めて武器を強化するんだ。もちろん、プレイヤーは様々な
「聞いてる聞いてる。狩猟系ゲームでしょ?」
「聞いてないよね……まぁ、説明聞くより実際にプレイした方がいいよ。僕も早く始めたいしね」
「そうね。ま、困ったらハヤトに教えてもらうわ」
「何だったら僕の友達の方が詳しいけど……」
「うーん、それはちょっと……」
バーチャル配信やってるってバレたくないしなぁ。
♢♢♢♢
それから数日、リアフレの伝手を使って『アネックス・ファンタジア』の入手に成功した。いや、まぁこれだけVRゲーム文化が発展した昨今で、品薄になって全然手に入らないってことは少ないんだけどね。それでもこのゲーム、人気すぎて供給がギリギリなんだよ……。
代わりといってはなんだけど、入手に協力してくれたリアフレに、『アネックス・ファンタジア』内でのフレンド登録を要求された。
それぐらい別にいいんだけどね。
えっと、とりあえず『カローナチャンネル』と関連付けて……これでいいかな?
早速VRヘッドギアを装着して『アネックス・ファンタジア』にログインする。一瞬の意識の暗転の後、真っ白の光に包まれる自分の姿と、日本語を表示するウインドウが現れた。
「皆さんこんにちはー! 予告通り、今日は『アネックス・ファンタジア』の配信やっていきます! ただ、たった今初めてログインしたところなので、拙いところは目を瞑ってもらって」
あっ、これまだチュートリアル終わってないからか視聴者のコメント見れないや。配信ちゃんとできてるかな……。取りあえずちゃっちゃとやっていきますか。
『初めまして、名も無き
どこからか、思わず美しい女性を想像してしまうような声が響く。
直後、マネキンのような真っ白な人形と、髪型や色などが一覧表となったウィンドウが現れる。
これでアバター作成をしろということなのだろう。
「とりあえず名前は『カローナ』っと……すごっ、性別とか髪の色とかなら良くあるけど、体格とか目の大きさや鼻の位置とか……腕や脚の長さまで弄れるのね」
キャラメイクは、さながらイラストを描き上げるかのような自由度だ。確かに、これは隼翔が『革命』と息を荒げるのも頷ける。
「まぁ、見た目はいつも使ってるアバターでいいよね。ちなみに配信で使ってるいつものアバターも、今みたいにフルスクラッチで作っています。意外と手間かかってるんよ」
しかしまぁ、アバター作成一つとってもとんでもないクオリティね、これ。
『カローナ』のアバターを作るときは専用のソフトを使って作ったものだけど……そのソフトと同等かそれ以上のクオリティで細かくアバター作成ができてしまう。ただのゲームだと言うにはオーバースペック過ぎるといってもいいだろう。
「あれ? 種族は固定なのね。最近のゲームの割には意外というかなんというか……」
これだけVR技術が発展した今の時代、ラノベとかでよくある『獣人』とか『エルフ』とか……人間ですらないアバターでプレイできるゲームなどいくらでもある。
私も伊達に『配信者』を名乗ってないから、そういったゲームもそれなりに分かっているつもりだ。
昔ちょっとかじったとあるゲームなんて、『吸血鬼』の性能が高すぎてアクティブプレイヤーの九割が『吸血鬼』になった結果、それを是正できずにサ終にまで追い込まれたVRMMOなんてのもある。
その点で言えば、『人間だけ』というのは少し物足りないけど……まぁ初期設定から差が出るよりはマシかな。
「次は
ジョブごとにメインで使える武器は異なると言うから、できる限り扱いやすい武器を使えるジョブにしたいけど……
「薙刀はリアルでも得意だから、それを使える職業が良いんだけど……薙刀って分類的には槍になる? うーん、あとは弓か刀なら何とか……お?」
百は優に越えてるのではないかと言う
「『棒術士』? こんなのもあるんだ……」
棒だったら薙刀と扱いは変わらないし、何より他の人と被らなさそう。剣や魔法が使えるのに棒を選ぶ人は少ないでしょ。
ちなみに、『棒術士』はただ棒を使った打撃で戦うのではなく、魔法によって
「よし、じゃあこれにしてみよう! で、
その後、小一時間ほど初期ステータスを弄り続け、納得のいくものができたところでようやく確定。
『ふふ……未来を担う
神ゲーと呼ばれる『アネックス・ファンタジア』へ、新たな冒険者が足を踏み入れた。
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