聖女となった私と運命の勇者様

安ころもっち

神託を受けました……

私は、5才の時に先代聖女が神託を受けたということで、教会から聖女の認定を受けた。


そんな私も14才。

教会でいつものように祈りの時間。突然神託が告げられた。

頭に響く神と思しき神々しいお声……


『聖女よ……あなたの運命の相手は、3年後にこの世に降臨する勇者様です。末永くどうぞお幸せに……』


「運命の人!」


そんな神の言葉を信じ、魔法と花嫁修行を両立させた私。正直がんばった。

私の理想の相手はマッチョな筋肉を携えた野性的な男性。もちろん勇者様と聞けば、はしたなくも興奮してしまう。


そして迎えた三年後。

17となった私にいよいよ勇者が降臨されると再び神託がなされた。


「場所は召喚の間!いそげっ!」


そして身につけている清楚な純白のドレスの裾を持ち、走りだす。今生一の最速で。

「はしたないですぞ!」と怒りながらも後ろを付いてくる宰相とともに、召喚の間に到着したころには、その部屋の中央の魔方陣が光り出し、ついに勇者召喚が始まった。

こんな勝手にはじまっちゃうんだな。

謎システム。


そして10秒ほど輝き続けたその光が収まると、部屋の中央には制服であろうブレザー姿の、ゆるふわ系の女性がぺたりとすわりこんでいた……


「「えっ?」」


私の声と、その女性の声が被ってしまう。


「「どういうこと?」」


どうやら息はぴったりのようだった。さすが私の運命の人!

私は気を取り直して自己紹介をする。


「私はこの国の聖女です。あなたは勇者様としてこの国に召喚されました。御力をお借りできれば幸いです」


練習していた口上で無事伝え終えた私。

その顔をじっと見つめる勇者様。


「異世界転生!そして私が勇者様?キャーすごい!夢じゃないよね!私がラノベみたいな異世界転生しちゃうなんて!いやこれは異世界転移か!間違えちゃいけない大事なことだから!」


かなり上がったテンションのまま、勇者様は自己紹介を始めた。


「私は自分でもすごいキモイと思われるオタクでした。高2だけどレイヤー活動ばかりでほとんど行ってません。親に学校行かないと追い出すっていわれて、仕方なく制服にきがえたけと、やっぱり嫌になって手首切ったらなんか死んじゃったみたいで、今ここにいる!」


なるほどなるほど……波乱な人生だったようだ。

そして通っていた高校を聞く。知ってるんだよなーあの制服……そして聞いた高校の名前。


やっぱりね。

その高校、私の前世に住んでた隣街のだよ!


そう。実は私も転生者。

この世に生まれてきたものの、前世の記憶があったのだ。


聞くと勇者様が生まれた時ぐらいに、隣街で行方不明の女の子がいる。という話しを少し大きくなってから、周りのうわさで聞いていたらしい。

小さな町だからね。何年も噂になるんだろう。


私の場合は部屋で寝ていたら突然意識が無くなって、気づけばバブーとしゃべっていたから……


そうか、私はあのまま死んだ。のではなく消えてなくなったのか……

思いがけず知った悲しい出来事に、私は少し泣いてしまった。


勇者様はそんな私をやさしく抱きしめ慰めてくれた。頭ポンポンはずるい。もっと泣いてまうよ私。

私と同い年なのにね。さすがは勇者様……


しかし、そこで私は思い出す。


勇者様は、私の『運命の人』……同性ですが?

教えて神様……私は同性相手にどうせいと……


そんなジョークを脳内に飛ばしてみても、ちっとも笑えない。笑いたくない。


「実は男の子だったりしない?」

「えっ?なんで?……確かめてみる?」


ですよね……私もありえないことを口にしたとは思っている。でも一応、念のため、最後の望みにかけ、何かの間違いを信じて、しっかりと確かめてみた。


つるつるだった。

ちょっとときめいた。


とうやら神は、私にユリユリな人生を送らせたいようだ。


私は生涯神を呪って生きることを決めた。

そんな17の夜。


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聖女となった私と運命の勇者様 安ころもっち @an_koromochi

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