花魁道中
またも、女は男を試すかのように条件を提示する。
「───ッチ。分かった、買ってやるから俺を助けろ!」
あの言葉は何だったのだろうか、それともそれだけ切羽詰まった状態だったのだろうか。
「まいどありぃ。お支払をお願い致しますぅ?」
「はぁ?!今か?」
「当たり前どす~」
通常、遊女を買う時は署名をし、前金等て先に払い、後からまた別で払うのが定例だ。
ましてや、男はそんな気もなく、ただ少ない金で遊びに来ていたのだ。まず、払えないだろう。
「くそぉ!つきあってらんねぇ!」
凄い形相で怒鳴った男は再び遊女屋を飛び出した。
すると、何ということだろうか。
目の前には、提灯も灯籠もないのに辺りが明るかった。まるで昼のようだ。
─シャンシャン、シャンシャン…
目の前を、美しく色鮮やかな衣で着飾った遊女達が歩いていく。
花魁道中だ。
「……なんだ、花魁道中かよ」
男は、先程まで自分の恐怖心を煽っていた音は花魁道中が原因だったことに、そっと息をついた。
しかし、男は直ぐにその考え方は間違っていた事に気づく。
目の前から通ってくる遊女達が自分を囲むのだ。
はぁ?!と男は内心絶叫を上げていたが、驚きと恐怖心の為声が出ない。
そうこうしている内に、遊女達は何重にも男を囲んでいく。
とにかくかくまって貰おう、そんな浅はかな考えで男はまた、遊女屋に戻ろうとした。
しかし、それは叶わなかった。
「旦那はん、買ってくれないんどすか?」
何故なら、白銀の女が道を塞いでいたからである。
「……いや、その………」
その、男のしどろもどろとした反応に満足したのか、女は他の遊女達に問いかける。
『皆、この男が欲しいか?』
その瞬間──────。
「「「「▪▶▫▫▷!!」」」」
男には、理解できない不可解な音を遊女達が発した。
「ッ?!」
男は、まるでこの世の終わりのような顔をしている。
『それじゃあ────。』
その女は、これまでになく心底嬉しそうな表情を浮かべて、こう続けた。
────〖相談しましょ。〗と。
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